U-20W杯メンバーに選出された15歳の久保。内山監督は「より高いレベルでプレーさせたほうが(久保にとっても)効果的だと判断した」と語っている。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 1997、98年生まれの選手たちを軸に構成されるU-20代表において、2001年生まれの久保建英が選出されるのはまさに異例だ。内山篤監督は、本来U-17年代でプレーするはずのアタッカーのどこを評価して、U-20ワールドカップメンバーへ飛び級招集したのか。

 5月2日のメンバー発表会見で、指揮官は招集理由をこう述べている。

「このグループ(代表チーム)に入って時間がないなかでも判断の能力は高い。そういう事実を基に招集しました」

 久保と言えば、名門・バルセロナの下部組織で磨き上げたテクニックが真っ先に思い浮かぶ。もちろんそこを評価したうえで、指揮官が着目してきたのは適応力だ。

 適応力と聞いて思い浮かぶのが、3月上旬に行なわれた国内キャンプでのある出来事だ。
 初日の紅白戦で、2トップの一角を務めた久保だったが、上手くボールを呼び込めずインパクトを欠いてしまった。練習後、「正直思ったよりできなかった。もうちょっと早くボールを受けに行く動きが欲しかった」と自らの出来に「失格」の烙印を押したが、翌日に行なわれたFC東京との練習試合では一転して好プレーを連発する。その試合では、U-20代表として初ゴールを奪っただけでなく、最前線から中盤までを降りてパスを要求し、チャンスメイクまでこなした。

 劇的にパフォーマンスが向上した背景には「昨日終わった時点で、チームメイトに『こういう動きをしたい』と伝えていた」ことがある。つまりひとつの失敗から課題を見出し、適応するための道筋を自ら切り拓いたのだ。

 こうした久保の行動を見て「フィットしてくれるだろう」と確信した内山監督は、3度の招集機会(アルゼンチン遠征/16年12月、国内合宿/17年3月上旬、ドイツ遠征/3月下旬)を経て、こうも感じたという。

「成長スピードが非常に早く感じた。より高いレベルでプレーさせたほうが(久保にとっても)効果的だと判断しました」

 内山監督が言うように、久保は招集するたびにインパクトを残した。なかでも圧巻だったのは、ドイツ遠征だ。4試合で2ゴール・2アシストという十分な成績を残し、チーム内での信頼は確実に増した。アルゼンチン遠征での初招集から半年足らずで見せたこの著しい成長ぶりが、今回の飛び級招集を後押したのは間違いない。

 4つ年上の選手たちとプレーさせても埋もれない、むしろ、能力を際立たせてさえいる状況を目の当たりにして、よりハイレベルなステージへと引き上げたくなるのは当然とも言える。内山監督の目には、15歳のアタッカーが持つ無限の可能性が眩く見えているはずだ。

取材・文:橋本 啓(サッカーダイジェスト編集部)