好天に恵まれた“さいたまダービー”。独特な雰囲気に包まれた一戦で、江坂は少し球離れが悪いように映ったが……。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ9節]大宮 1-0 浦和/4月30日(日)/NACK
 
 大宮のサポーターは上昇気流を掴むために気勢を上げ、浦和のサポーターは首位の誇りを声に乗せる。天候、晴。弱風。気温26.8度。湿度21パーセント。好天に恵まれた4月最終日。キックオフ前から会場となったNACK5スタジアム大宮のボルテージは異様なほどに高かった。
 
 直接対決の戦績も、8節終了時点の順位(大宮が0勝1分7敗の勝点1で18位、浦和が6勝1分1敗の勝点19で1位)も関係ない。どちらがどんな状況であろうと、両者には単純に勝利のみが求められる。
 
 それが、“さいたまダービー”なのだ。勝点1を分け合うのは敗北と同義。ただただ相手を打ちのめすのみ。チャントに、ブーイングに、高揚感が煽られる。何度足を運ぼうが、その度に特別な一戦から発せられる熱量には気圧されてしまう。
 
 ピッチに立つ選手は、何倍にも増幅された頼もしい後押しとともに、ある種のプレッシャーを感じるのではないだろうか。独特な雰囲気に飲まれる、または普段よりも気負っても不思議はない。
 
 江坂任のパフォーマンスも、そう見えた。「判断がいつもより遅い」。そんな言葉が記者席の後方から聞こえてくる。同感だった。攻撃に人数を掛けられないなかで、ある程度は独力での突破が必要なのは仕方がないが、得点への意識があまりに強く、球離れが悪いように思えた。
 
 11分、相手のパスミスをハーフウェイライン左で拾った。追ってきた浦和の武藤雄樹をいなして内に切り込む。前方にはダイアゴナルに右のスペースへ抜けようとする瀬川祐輔、左のスペースへ縦に走る長谷川アーリアジャスール。サポートに茨田陽生も寄ってきた。
 
 だが、どのパスコースも選択しない。まだペナルティエリアまで距離は残っているが、自ら仕掛ける。しかし、すぐに3人の浦和DFに囲まれてボールロスト。カウンターは失敗に終わった。
 
 あるいは後半開始立ち上がり、47分のシーン。自陣からのクリアボールを起点に、ハーフウェイライン右寄りで前向きのボールを持った。後ろから4人のDFが追ってくるが、眼前には浦和の遠藤航のみ。左を見れば、瀬川が並走している。
 
 ここでも江坂はドリブルを選んだ。全力で戻ってきた相手守備陣に囲まれる。そして再び、ボールを失った。パスも出せず、シュートも打てずにチャンス逸。結果的にプレー判断を誤った。
 
 江坂の仕掛けは続く。59分には相手に競り勝った大山からのパスを左サイドで受けた。対峙するのは青木拓矢。縦へ。切り返すような仕草を入れて抜き切ろうとしたが、スライディングによって阻まれてしまった。
 江坂は2017年シーズン、ある使命感に燃えていた。それは“攻撃陣の牽引車”となること。実際に、「攻撃を引っ張る役目が求められている」という言葉をよく口にするようになった。大前元紀という目玉選手が加入してきたものの、その意識は揺るがない。
 
 大宮は今オフ、16年シーズンのクラブの躍進を支えた家長昭博と泉澤仁を失った(前者が川崎、後者がG大阪へと移籍)。攻撃の核、キーマンがふたりも一気に流出したのだ。
 
 江坂自身は昨季、リーグ戦で31試合・8得点、ルヴァンカップで8試合・2得点と公式戦通算でふた桁ゴールを記録している。「家長と泉澤の代わりは自分が」――。背番号7に圧し掛かるのは、得点やアシストといった数字上のものだけではなくなった。
 
 そんななかでの、公式戦未勝利という苦境。責任を感じていた。だからこそ、「浮上のきっかけにしなければいけない」、「自分にとっても大きなチャンス」と話していたゲームで、ネットを揺らすべく、がむしゃらに前へ進んだ。