「失点した後に自分たちの精神的な脆さが出るところを、今日はすごく感じました」とキャプテンの鄭は悔しさをにじませた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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「過信があったのか、ボールを持つことで勝てるぐらいに思っているのか……(細かい大事なところが)いい加減になってしまって、修正ができなくなる、戦えなくなるというゲームだったと思います」
 
 清水の小林伸二監督は、0-3で敗れた9節の仙台戦をこのように振り返り、「ものすごく残念なゲームにしてしまった」と表情を歪ませた。
 
 確かに前半は、清水が自分たちの形で戦えていた。前回のホームゲーム・大宮戦で課題になった「入りの悪さ」を修正して早めにエンジンをフル回転させ、受ける側の選手もよく動いてパスをつないでいく。
 
 途中に少し膠着する時間帯もあったが、前半はおおむね清水がポゼッションで優位に立ち、サイド攻撃を中心に仙台ゴールに迫る場面も多く作った。
 
 唯一足りなかったのは、「ひとつのパスがどっちにいくかという精度」(小林監督)で、クロスがあと50センチ低ければ……そのパスが引っかからなければ……という場面が多かった。本当に決定的と言えたのは、42分に金子翔太のパスから枝村匠馬がシュートした場面ぐらい。
 
「相手が引いた状態での崩し方というのは、まだまだでした。もっと流動性とか、追い越すとか、ワンタッチプレーとか、大きなサイドチェンジとか、バリエーションを増やしていかないといけません。あと僕自身は個人の質のところも上げていかないと」(金子)という振り返りは、外から見ていた印象とも一致する。
 
 それでも「自分たちのペースだったので、後半にワンチャンスを決めて勝つという自信をみんなが持っていました」(鄭大世)という感触は、小林監督も含めてチーム全体で共有していた。
 
 それが「過信」だったのかどうか、本当のところは誰にもわからない。ただ、思わぬ形で先制点を奪われた後、清水が攻守ともに崩れてしまったことは、まぎれもない事実だ。
 
 57分にPKで先制された場面は判定で不運な面もあったが、2失点目、3失点目は驚くほどあっさりと奪われてしまった。
 
 イージーミスでボールを失うシーンが増え、守備陣にも対応やマークの甘さ、肝心のところで足が動かないなど、組織というより個人レベルの問題が続出した。
「精神論で片づけたくはないけど、(全体的に)足が止まったし、絶対に点を取らなければという勢いもなかった。失点した後に自分たちの精神的な脆さが出るところを、今日はすごく感じました」とキャプテンの鄭も悔しさを滲ませる。
 
 攻撃でも、チアゴ・アウベス(62分)、ミッチェル・デューク(72分)、村田和哉(79分)と、それぞれ強力な武器を持つ攻撃のカードを投入したが、逆に個人プレーが多くなって攻めが単発になり、恐さを増すことはできなかった。
 
 最後は仙台に余裕を持ったまま守り切られ、開幕戦以来の無得点で完敗。ゴールデンウィーク中の1万5千人を越える観客の前で、清水は結果的に今季最悪のゲームを見せてしまった。
 
 前節までは3勝2分3敗という成績ながら、J1復帰1年目のスタートとしては手応えのある戦いを見せていた。選手たちの中に「J1でもやれる」という自信が少しずつ高まっていた。
 
 そんな中での今回の負け方。「なめてるなというところが早いうちに来たのは良かった。良い教訓になればと思っています」(小林監督)という部分が、唯一次につながる要素だった。
 
 だが、ここで自信を失ってしまうのも良くない。自分たちができることと足りないことの両方を冷静に認識し、過信でも過小評価でもない“本物の自信”をつかむことは本当に難しい。リーグ戦の4分の1を過ぎたところで、それをあらためて痛感させられた。
 
取材・文:前島芳雄(フリーライター)