「キレ」る寸前か!?(金正恩) AP/AFLO

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 北朝鮮の金正恩・労働党委員長の動静を把握することは難しい。とくに、彼がどんな発言をしているのかをつかむのは困難を極める。昨年12月に金正恩氏が発した「肉声」の内容を、ジャーナリストの城内康伸氏がつかんだ。

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 北朝鮮の東海岸、江原道元山の海辺に位置する、金正恩朝鮮労働党委員長の専用別荘「特閣」。すぐそばには軽飛行機用の滑走路やヘリポートも整備されており、全国に14カ所あるとされる特閣の中で、彼の一番のお気に入りだ。

 北朝鮮の内部事情に精通する消息筋によれば、正恩氏は昨年12月2日、この特閣で、最高幹部を集めた党中央政治局拡大会議を秘密裏に開いた。

 会議の議題は「対外情勢の急変に能動的に対応するために」。米国では年明け1月20日に、ドナルド・トランプ新政権の誕生を控えていた。韓国では、朴槿恵大統領が親友の国政介入疑惑で、国民の激しい怒りを買い、支持率は史上最低の4%にまで低下。任期最大の窮地に立たされていた。

 トランプ氏は正恩氏との首脳会談に応じる用意があるとの発言をしたこともあったが、予測不可能な異端児でもある。正恩氏は「トランプ就任前には、米国をあまり刺激するな」と述べ、新政権の出方を見極めるよう指示した。

 韓国では、国会で朴氏の弾劾訴追案が可決されるのは時間の問題だった。北朝鮮に厳しい姿勢で臨んできた朴氏の政治的危機は、正恩氏には吉報だ。大統領任期を満了せずに、朴氏が退任する事態をにらんだ動きも既に始まっていた。

 北朝鮮は自国に融和的な政策を取る新大統領の登場が待ち遠しい。「次期大統領候補者とその側近に関する情報を、急いで収集しろ。心理戦を積極的に展開し、南朝鮮(韓国)世論に北南和解ムードを拡散せよ」。

 消息筋によると、正恩氏は最高幹部を前に、そのように檄を飛ばしたとされる。

●しろうち・やすのぶ/北朝鮮事情に精通するジャーナリスト。主な著書に『猛牛(ファンソ)と呼ばれた男』『昭和二十五年 最後の戦死者』『朝鮮半島で迎えた敗戦』など。

※SAPIO2017年6月号