フィギュアスケート界の絶対的女王に君臨するエフゲニア・メドベージェワ【写真:Getty Images】

写真拡大

もしK-POPで滑りたいと言ったら? 「私より私を熟知する」コーチの答えとは…

 フィギュアスケート界の絶対的女王に君臨するエフゲニア・メドベージェワ。2016-17年は世界選手権連覇を達成、世界国別対抗戦ではSP、フリー、総合すべてで世界歴代最高得点と圧倒的な強さを見せつけた一方、エキシビションでアニメ「セーラームーン」のヒロインになりきり、ファンを魅了した。そんな強く、自由な発想を持った17歳の成長を支えたのが、ロシア人コーチ、エテリ・トゥトベリーゼ氏だ。

 同氏は教え子の指導理念について「私は嘘はつかない、たとえ傷つけるとしても。苦言を伝える、それこそが私がしなければいけないことです。こういったことが信頼の積み重ねになる」などと語っている。米スケート専門メディア「アイスネットワーク」が特集した。

 記事によると、トゥトベリーゼ氏はイベント前のインタビューが好きではなく、特に最も有名な教え子であるメドベージェワがスポットライトを浴びているここ数年は特に、だという。

「人々が『大会でのプランは?』といつも尋ねてくるからね。私にプランはない。神のみぞ知るところよ。祈ることはできる、ただ計画は立てられない」

 こう語ったという同氏は「私は教え子たちの体型が変わったとして、変わりなく跳べるジャンプのやり方を教えています。思春期を経て体型が変わったとしても、活かせるようにすること、それが技術となっていきます」と自身の指導手腕についても明かした。

「私は嘘はつかない、傷つけるとしても」…メドベージェワ「ただただ信頼」

 しかし、記事では技術がすべてではなく、メドベージェワはスター街道を歩み出した直後から、自身の成功がコーチ陣の助けなしではあり得ないと語っていたと記述。世界女王のコメントを紹介している。

「コーチたちは、私よりも私のことを熟知しています。様々な角度から私を見て、そして、とても理解してくれているのです。ただただ信頼しています」

 メドベージェワにとって自分のすべてを理解してくれるコーチ陣の存在が支えになっているようだ。一方、トゥトベリーゼ氏にとっても「信頼」は重要だという。

「私は嘘はつかない、たとえ傷つけるとしても。教え子たちには、他の誰でもなく、まずは私に聞くことが大事だと伝えています。選手は周囲の人々から良い話だけ聞かされるものです。苦言を伝える、それこそが私がしなければいけないことです。こういったことが信頼の積み重ねになる。選手は私にとって人生であり、実の子供のような存在でもあるのです」

 自分の子供のように考え、接するからこそ、選手にとって正面から厳しい指摘もする。それこそが、選手との「信頼」に結びつき、メドベージェワが世界女王にまで成長できた要因の一つとなったのだろう。

 そして、もう一つ、トゥトベリーゼ氏には大事な指導理念があるという。それが、選手の自主性だ。

もしK-POPで滑りたいと言ったら「もちろんいいわよ!」…その理由とは?

「いつも選手たちにやりたい事を決めさせるようにしています。コーチとしての仕事は、選手の背中を押してあげることです」

 記事では、もしメドベージェワが大好きなK-POPにあわせて滑りたいと伝えてきたら、という質問を投げかけると、トゥトベリーゼ氏はこう語ったという。

「もちろんいいわよ! いつも教え子たちには、好きな音楽があったら私のところに持ってきてちょうだい、と伝えているの。子どもたちのことを理解するのに、とても役に立つわ」

 世界国別対抗戦のエキシビションでは、大好きだという「セーラームーン」のヒロインになり切って演じ、話題を呼んだが、自由な発想を許容するコーチの考えも後押ししていたのかもしれない。こんな恩師に対し、メドベージェワも揺るぎなき信頼を寄せている。

「彼女は私の内面に秘められた世界観や個性、可能性といったものの扉を開くための方法を見つけ出そうとしてくれるのです」

 すでに今季は終了し、来季は2月に自身初のオリンピックの舞台となる平昌五輪が2月に控える。恩師との間に結ばれた「自主性」と「信頼」によって、来季もメドベージェワは女王の座に君臨し続ける。