気候変動の影響で、遠い未来の食卓は今とは似ても似つかぬものとなるかもしれません。

2050年までには、世界の人口は100億人に達すると予測されています。そして、そのわずか30年あまりで、世界中の人々のお腹を満たすほどの食糧は足りなくなるかもしれないのです。危機感に駆られた科学者は、食用虫やら人工肉、大型養魚場のような劇的な選択肢を探していますが、普段当たり前のように食べているごはんが食べられなくなるかもしれないなんて、何人の人が想像しているでしょう?

米国のグルメ雑誌Saveur Magazineのアソシエイト・アートディレクターを務めるアーティストAllie Wist氏は、写真家や食品スタイリストとコラボし、海面上昇時代のディストピア的な食卓を描くフォトシリーズ「Flooded(水浸し)」を発表しました。NPRがとりあげたこの作品は、地球の変化に適応せざるを得ない食糧システムが私たちに突きつける、食の厳しい未来を描いています。

Wist氏は、米Gizmodoに語っています。

気候変動は、多くの人々にとっては抽象的な現象で、日常生活に実際に関連付けることはありません。食べ物は、私たちが遭遇する最も親密な物質のひとつだと思います。人々が抽象的な科学的概念に対しては持たない強い感情や関係性を、食べ物は与えてくれるのです。


気候変動 食べ物 1

写真:Heami Lee、フードスタイリング:C.C. Buckely、小道具スタイリング:Rebecca Bartoshesky、アートディレクション:Allie Wist


Wist氏は、山ほどの論文を掘り起こして勉強し、食品スタイリストC.C Buckley氏とともに、海面上昇で浸水したニューヨークやニューイングランド地域を想定し、レシピと食材を開発しました。 「作業は面白いものでした。ねえ、このオイルは使える? 未来にはどうなってる? ああ、バターは使えないわね、なんて言いながら」とWist氏は制作の過程を振り返ります。

Buckley氏とWist氏は、文化は食べるものを大幅に変えることはなく、むしろ極端な食糧の保存に向かうと考えました。そこで提示するのは、人間がみずから気候変動を引き起こしてしまった事実を受け入れて、その最悪の影響に対処せざるを得ない沿岸の世界。海面上昇、海洋の温暖化と酸性化、脱酸素化などの悪影響に対処するため、膨大な保存技術を採用しなくてはならないでしょう。

つまり、材料は地元の農産物、赤身肉なし、寒天(藻類をベースにしたゼラチン)で作られたデザート、たくさんの水産養殖物、海洋水のろ過に重要な役割を果たす貝類の増殖、そして缶詰や保存食用の作物の転作が必要となってきます。


気候変動 食べ物 2

写真:Heami Lee、フードスタイリング:C.C. Buckely、小道具スタイリング:Rebecca Bartoshesky、アートディレクション:Allie Wist


「アジア文化にみられる、卵黄を保存する方法のように、多くの文化の食糧保存法を調べました」とBuckley氏は語ります。作品では、配置された食べ物に照明を施し、水浸しの環境を表しています。

Wist氏は、この企画がディストピア的でありながらも、魅力的な食卓となることを期待していました。たしかに食べ物は美しく見えます。「私たちがやるべきことや、適応する方法を提示することが自分の仕事だと思いました」と彼女は述べています。

他にも多くの企画があり、 Wist氏は干ばつの未来を描く食卓を構想したいと考えています。海面上昇以外では、例えば人間の活動が、アメリカ西部をさらに乾燥させると科学者は推測しています。


気候変動 食べ物 3

写真:Heami Lee、フードスタイリング:C.C. Buckely、小道具スタイリング:Rebecca Bartoshesky、アートディレクション:Allie Wist


実際に食べられるディストピア料理を探しているなら、人間の活動がもたらす影響を料理に反映させるシェフたちがいます。ミシュランの星付きシェフAlexandre Couillon氏は、自分のレストランLa Marineで、フランスの海岸で石油タンカーERIKA号が沈没し大量の重油が流出した環境汚染に触発された料理を提供しています。大きな白いプレートの真ん中にたったひとつのカキ、その上にイカスミがたっぷりかかっています。こちらが実際の料理の写真です。




Wist氏とBuckley氏は作品を通し、人々が生活のなかで少しでも気候変動に思いを馳せ、食糧がいかに地球と密接に結びついているか考えてくれることを期待します。

自分が食べているものを、ただ見るだけじゃなく、環境に密接に関連しているということを考えてほしい。

チームは作品の食べ物を試食してみましたが、それを提供する予定はないそうです。実際にディストピア食を味わって、もっと切実に環境問題をかみしめてみたいですね。

もっと読む:
・誰が何を言おうと地球温暖化は進んでいて、原因はやっぱり人間

image: Heami Lee(フードスタイリング:C.C. Buckely、小道具スタイリング:Rebecca Bartoshesky、アートディレクション:Allie Wist) via Allie Wist
source: Allie Wist via NPR, Hungryphil - YouTube
reference: 日本船主協会

Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文]
(Glycine)