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 フランス大統領選挙を波乱なく通過したヨーロッパ。「ユーロ上昇が近いのは、この図を見てもらえれば明々白々」と語るのは、メルマガ「西原宏一のシンプルFX」で金利を軸とした分析を披露してくれる竹内典弘氏だ。その図とは?

◆金融政策サイクル末期に起こる「逆行現象」

 ECB(欧州中央銀行)は2014年から金融緩和を行なってきましたが、足元ではインフレ率はターゲットとする2%弱へ迫り、4月の景況感指数も10年ぶりの高水準を記録するなど、景気の改善が続いています。

 とくに強いのはドイツなどヨーロッパ北部です。ECB同様、金融緩和を行なっていたスウェーデン中銀では、すでに昨年末からテーパリング(金融緩和の縮小)を開始しています。それだけ北欧の景気は強い、ということです。

 テーパリングが始まると何が起こるのでしょうか。参考になるのはアメリカの事例です。アメリカではQE1、QE2と大規模な金融緩和を行ない、それにともなって通貨安が進んでいましたが、QE3(金融緩和第三弾)を開始したとたん、ドル高へと進んだのです。

 金融政策サイクルの末期では、アメリカで起きたような金融政策と為替レートの「ダイバージェンス」(逆行現象)が頻繁に発生します。サイクルの末期になると、現在の政策ではなく近い将来の政策変更を織り込む動きが強まるためでしょう。ちなみに金融緩和だけでなく利上げ、利下げでもこの理論は当てはまります。

◆0.5%の金利差拡大でもユーロ/円は10円の上昇

 4月27日に開催されたECB理事会後の記者会見で、ドラギ総裁はテーパリングを強く否定しました。足もとのユーロ高を嫌って強引にテーパリング論議の封じ込めを図った印象です。いずれにせよ、6月のECB理事会では資産買入れ終了を予めアナウンスする「フォワードガイダンス」を修正、秋口までにはテーパリングの開始を表明するのではないでしょうか。

 テーパリングが近づいていることを、市場参加者も意識し始めています。それを示すのが金利差と為替レートの相関です。これまでの数か月、ドイツと日本の金利差とユーロ/円との間に有意な相関性は見られませんでした。ユーロ/円は金利差以外の要因を見て動いていたということです。

 ところが3月に入って、下記の図からも明らかなように相関性が急激に高まっているのです。これが何を示唆しているのか。市場参加者がテーパリングを意識し、金利に着目し始めている証拠です。

 テーパリングとなればドイツの金利は急上昇し、独日金利差も急拡大します。それもかなりのハイペースで拡大するでしょう。現在の近似曲線で計算すると、独日金利差が0.5%拡大しただけでユーロ/円は約10円の上昇となります。ユーロの上昇トレンド本格化のときは近いと見ていますが、果たして。<取材・文・HBO取材班>

【竹内典弘氏】
HSBC銀行ではチーフトレーダーとしてディーリングチームの責任者を務めるなど活躍。専門はG7通貨および金利のトレーディング。2010年に独立し、自身でもトレードを手がけるほか、FPネットのメルマガ「西原宏一のシンプルFXトレード」で毎朝、旬の為替情報を配信する