NBAプレーオフ2017 カンファレンス・セミファイナル展望@ウェスタン編

 ウェスタン・カンファレンスのベスト4が出揃った。強豪チームの多くが生き残ったが、NBAファイナルに進めるのは、たった1チームしかいない。ウェスタンの頂上決戦に駒を進めるのはどこか?

「カンファレンス・セミファイナル展望@イースタン編」はこちら>>>


抜群の身体能力で驚異的なオフェンス力を発揮するジェームズ・ハーデンサンアントニオ・スパーズ(2位/61勝21敗)
vs.
ヒューストン・ロケッツ(3位/55勝27敗)

 この両チームの対戦を待ち望んだバスケファンも多いだろう。言うなれば「革新vs.伝統」。相反するスタイルを持つチームの戦い――最強の矛(ほこ)vs.最強の盾の激突である。

 今季のロケッツは、まさに革新的なチームだ。それは競技こそ違うが、ビリー・ビーンGMが打率よりも出塁率を重視し、黄金期を築いた2000年代初頭のMLBオークランド・アスレチックスのように。

 ヒューストン・ロケッツはとにかくスリーポイント(3P)シュートとフリースローを重視し、効率よく得点を重ねることに特化したチームだ。3Pシュートとフリースローの試投数は、どちらもレギュラーシーズンでリーグ1位。ロケッツはレギュラーシーズン1試合平均で40.3本の3Pを放ち、それは全フィールドゴール(FG)のうち46.2%にも及ぶ。

 一方のサンアントニオ・スパーズは、1試合平均で放つ3Pはリーグ25位の23.5本(全FGの28.1%)。このスタイルは、名将グレッグ・ポポビッチHCの「私が3Pシュートを喜んで受け入れることは決してない。あれはバスケットボールじゃない。サーカスか何かだと思っている」という信念に基づいている。

 それでいてスパーズは、20シーズン連続でプレーオフ進出を果たした。その根幹を支えるのは、規律と秩序だ。スパーズは毎年、チームオフェンスとチームディフェンスを繰り返し徹底する。なかでも「エクストラパス」と呼ばれる、自分のシュートよりもチームメイトがよりよい状態でシュートを打てるようにもうひとつ余計にパスを回すスタイルは不変だ。

 伝統のスタイルか、もしくは革新のスタイルか? このシリーズの行方がバスケットボールの本質とは何かを物語ってくれるような気がしてならない。

 ロケッツの革新的なスタイルを可能にしているのは、ジェームズ・ハーデン(PG)の存在だろう。レギュラーシーズンで1試合平均10.9本(リーグ1位)ものフリースローを打つハーデンだが、特にビッグマンとのピック&ロールから3Pシュート時にファウルをもらうテクニックはずば抜けている。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 マークマンからすれば、これほどやっかいな選手はいない。離せば打たれ、近づけば抜かれるかファウルを誘われる。ファーストラウンド5試合でもハーデンは、その武器を駆使して平均33.2得点と絶好調。現在リーグでもっともストップしにくいプレーヤーだ。ハーデンを「最強の矛」と呼んでも差し支えないだろう。

 一方、ユタ・ジャズに次ぐリーグ2位のディフェンス力を持つスパーズの「最強の盾」がカワイ・レナード(SF)だ。2年連続でディフェンシブプレーヤー・オブ・ザ・イヤーを獲得中で、今季も随所でその守備力の高さを発揮し、チームのピンチを何度も救っている。

 スパーズは基本的に、ハーデンに対してダニー・グリーン(SG)をマッチアップさせるだろうが、ここぞというタイミングではレナードをぶつけてくるはず。3月の両チームの対戦では試合残り20秒、スパーズ1点リードの場面でハーデンのシュートをレナードがブロックし、チームを勝利に導いている。

 果たして、今シリーズではどちらに軍配が上がるのか。最強の矛と最強の盾の対決の勝者が、チームをカンファレンス・ファイナルに導くことになりそうだ。

ゴールデンステート・ウォリアーズ(1位/67勝15敗)
vs.
ユタ・ジャズ(5位/51勝31敗)

 カンファレンス・セミファイナルのもうひとつの対戦カードは、リーグ最高の得点力を持つウォリアーズと、リーグ最高の守備力を誇るジャズの顔合わせとなった。

 ファーストラウンドでのウォリアーズは、ポートランド・トレイルブレイザーズをあっさりとスウィープ(4連勝)。しかも、ケビン・デュラント(SF)が左ふくらはぎのケガで2試合欠場していたにもかかわらず1試合平均119.5得点をマークしており、オフェンス力に陰りは見えなかった。

 4連勝のおかげでカンファレンス・セミファイナルに向けて十分な休息も取れ、デュラントのケガも順調に回復と伝えられている。復帰したファーストラウンド第4戦では出場時間20分に制限されていたが、どうやら今シリーズはフル出場できそうだ。マット・バーンズ(SF)やショーン・リビングストン(PG)といったベテラン勢に故障者を抱えるも、ステファン・カリー(PG)、クレイ・トンプソン(SG)、デュラントの3選手が万全な状態でコートに立つのであれば、いよいよチームはエンジン全開といっていいだろう。

 一方のジャズは、ロサンゼルス・クリッパーズとのファーストラウンドで第7戦までもつれた接戦を勝ち抜き、カンファレンス・セミファイナルに駒を進めてきた。

 クリッパーズの敗因は、得点源のブレイク・グリフィン(PF)が第3戦で右足親指を傷めて戦線離脱したことが大きかった。それでも、レギュラーシーズンで1試合平均108.7得点のクリッパーズを、ジャズは平均97.7得点に抑えている。リーグナンバーワンの守備力はダテではなかった。

 ジャズのオフェンスは、アイソレーション(※)が得意で「アイソ・ジョー」のニックネームを持つ35歳のベテラン、ジョー・ジョンソン(SF)が好調をキープ。ベンチスタートながら第1戦では逆転のブザービーターを沈め、第4戦でも28得点と期待以上の爆発を見せている。

※アイソレーション=1対1を仕掛けやすいように企図されたフォーメーション。

 今季の対戦成績は2勝1敗でウォリアーズがリード。ジャズが105-99で勝利した4月10日の試合は、ウォリアーズが誇る名シューターのトンプソンは不在だった。今回のシリーズもウォリアーズの圧倒的有利は揺るがないだろう。それでも、今季ブロック王(1試合平均2.6ブロック)のルディ・ゴベール(C)を中心に、ジャズがロースコアの展開に持ち込めば、かすかに勝機も見えてきそうだが……。

 このシリーズを勝ち抜けば、いよいよカンファレンス・ファイナル、そしてNBAファイナルへの道筋が見えてくる。順当でも波乱でも、1試合でも多くの好ゲームが繰り広げられることに期待したい。

■バスケットボール 記事一覧>>