堀奈津佳(24歳)の名前をスコアボードで確認したのは、いつ以来だろうか――。

 3月のアクサレディス in MIYAZAKIの初日、2013年の大会覇者である堀は「71」でラウンド。1アンダー、29位タイという位置に、彼女の名前を見つけることができた。翌日、「80」を叩いて予選落ちすることになるが、彼女がアンダーパーでラウンドしたのは、2015年のNOBUTA GROUP マスターズGCレディース2日目以来のことだった。


厳しい状況が続いている堀奈津佳 その後、堀は主催者推薦で4月のスタジオアリス女子オープンに出場。その際、アクサレディス初日のことについて聞くと、こんな答えが返ってきた。

「あの日(のプレー)はまだよかったのかなと思います。まだまだ感覚的には日替わりで、よくなったり、悪くなったり……。それは、練習でも一緒です。でも、その(プレーの善し悪しの)幅が少しずつ減ってきているのは実感しています。すごく調子がいいとまではいかないですが、少しずつ結果につながったり、いい感覚でプレーできたりするときもあるので、自分の中の『まだまだ(やるぞ)!』っていう気持ちを消さないようにしていきたい。

 自分の理想にはまだほど遠いのですが、そこばっかりを追いかけてしまって、少しよくなった感覚まで消してしまってはいけないな、と思っています。とにかく、積み重ね、ですね」

 厳しい状況にあるが、堀は答えに窮することなく、表情も明るかった。年間2勝を挙げた4年前(2013年シーズン)とは違って、いい意味で”饒舌”になり、精神的に成長しているようにも見えた。

 1年5カ月ぶりのアンダーパーを記録し、その中で気づいたこともあったという。堀が続ける。

「ゲームに集中すること、それが本当に大切なんだなと改めて感じました。悪いときは(自らのプレーの)悪いところにばかり目がいってしまいがちですが、あの日は自分のゲームに集中することにうまく取り組めた気がします。試合中、バーディーをひとつでも多くとらなきゃいけないと思ったし、ピンチがきたら何とかパーで上がらなきゃいけないと思って、いい集中力を保って回り切れた感じがありました。

 2日目も練習ではすごくよかったんですけど、そこはやっぱり(調子自体は)日替わりなところがあるので……。朝、コースに出たら悪くなってしまって……。まだ安定して、いい感覚でプレーできるわけではないのですが、それも含めて、ゲームには集中していかないといけない。(調子が悪い中でも)そこだけは大事にしていきたいな、と思っています」

 プロデビューした当時の堀は、これほどきちんと話ができる選手ではなかった。長らく表舞台から遠ざかり、その中でさまざまな悩みを抱え、人知れず苦しんできたのだろう。そうした過程を経て、人として成長し、自分の思いも明確に語れるようになったのかもしれない。同時に、いろいろなことを考え抜いてきた苦労が、言葉の端々ににじみ出ていた。

 前述したとおり、堀はプロ3年目の2013年シーズンにツアー2勝を飾った。2勝目となるアース・モンダミンカップでは、4日間72ホールを「267」、通算21アンダーをマークして、72ホールにおけるツアー最少ストローク(当時)を記録した。そして、その年の賞金ランキングでは10位という輝かしい成績を残した。

 その実績と、あどけないルックスが相まって、堀の人気は急上昇。その先の飛躍はもちろん、ツアーを彩る”主役”のひとりとして、大いにその活躍が期待された。

 だが、翌2014年シーズンは未勝利に終わって賞金ランキングは44位まで急降下。賞金シードこそ保持したが、徐々に歯車が狂い始めていった。

 2015年シーズンは、30試合に出場して23試合で予選落ち。目に余るほどの不振にあえいで、結局シード権を失った。同年のファイナルQT(※)でも99位にとどまり、翌年のツアー出場権は得られなかった。
※クォリファイングトーナメント。ファースト、セカンド、サード、ファイナルという順に行なわれる、ツアーの出場資格を得るためのトーナメント。ファイナルQTで40位前後の成績を収めれば、翌年ツアーの大半は出場できる。

 その結果、2016年シーズンは出場8試合のみ。しかも、すべて予選落ちに終わった。さらに、QTもセカンド止まり。今季に至っては、QTランキングは249位という位置づけで、下部ツアーのステップ・アップ・ツアーにも出場できず、主催者などの推薦での出場を待つ状態が続いている。

“どん底”とは、まさにこうした状況を言うのだろう。そんな現状にある選手に話を聞くのは、さすがに容易ではない。それでも、堀がどんな気持ちでシーズンを迎えているのか、ずっと気になっていた。そこで意を決して直撃したわけだが、冒頭でも記したとおり、こちらが面食らってしまうほど彼女は明るかった。

 今は、かなりつらい時期にあるのではないか? と聞いても、

「ぜんぜん、つらくないですよ!(笑)」

 そう言って、彼女は笑った。

「つらくないというか、自分の理想がある中で、自分の思った球が打てていないので『えぇ〜……、打てないぞ……』っていう気持ちはあります。難しいなとか、困ったなという感覚は常にあります。だからといって、つらいとは思わないです」

 そう語ると、今も「なかなかショットの感覚が戻らない」と、堀は正直に話してくれた。そのため、いいときと悪いときの波があるのだという。

 調子を落としてからこれまで、堀はプレー中にミスすると、試合中であっても「スイングをこう降ろして練習したほうがいいかも」とか「もっとこういうスイングにしてみたらどうだろうか」とか、ショットの悪い部分にばかり気をとられていたという。目の前の1打に向かう集中力を欠けば、プレーが安定するはずがない。

 堀は、完全に悪循環に陥っていた。もちろん、試合後にミスを補うための練習は必要だが、あまりにも考え込んでしまって、ミスの原因が何なのかを自分でつかむ余裕まではなかった。

 それでもこのオフ、浮上へのひとつのきっかけをつかんだようだ。「調子が悪い原因を整理したことで、練習にも集中して取り組めるようになった」という。

「調子が戻らない原因については、いつも考えてはいます。特にこのオフは、たくさん考えました。そして、(ひとつの)考えがまとまりました。ですから、今は悪い部分をひとつひとつ整理して、その原因が何なのかわかったうえで練習に取り組めています。

 アプローチとパットはそこまで悪くないので、とにかくうまくいかないのはショットなんです。それが気になりすぎてパットにも集中できず、入るものも外してしまったりして、すべてがバラバラに……。それで、ショットで『球がしっかり芯に当たらないからどうしよう』と(プレー中に)考え込んでしまうことも改めるようにしました」

 年間2勝を挙げて、一気にスポットライトを浴びた2013年について、堀は「出来すぎだった部分もあったと思う」と語った。

「それでも今はまた、ゲームに集中することによって、(自分の)本能的な部分が出せるようになってきたのかな、と思います。楽しく、本能的にゴルフをするというか。それで、いい結果も出始めているので、それは間違っていないんだろうなと思っています」

 話を聞く限り、自分の置かれた状況をそこまで深く悩んでいないのかもしれない。それについて聞くと、堀は自らの性格が「忘れっぽいし、悩まないし」と言って、こう続けた。

「(自らの厳しい状況について)あんまり考えてもいません(笑)。成績が出てなくて、状態も悪いですけど、そんなに悩んでもいません。調子が戻らなくて、困ってはいますけど(笑)」

 出場できる試合がほとんどないなか、モチベーションを保つことは簡単なことではないだろう。だが、堀はゴルフをやめていないし、ツアープレーヤーとして復帰することも諦めていない。現状にも腐らず、出られる試合では全力を尽くしていく気概を持っている。

「1試合、1試合、自分のやりたいことをやっていくことが目標です。本当に少しずつ(状態は)よくなってきているので。

 今は具体的な目標は決めないほうがいいと思っています。決めてしまうと、自分のやりたいことができなくなってしまうので。それが、今の自分には一番よくないと思っています。とにかく、自分がやっていることを貫き通していきたい。それが、結果につながれば、明確な目標が出てくると思います」

“復活”という言葉は、今の堀にとっては重たいものかもしれない。それでも、まだ24歳。シード復帰はもちろん、もう一度ツアー優勝の歓喜を味わうことを諦める必要はない。

 乗り越えなければいけない課題は山積みだが、堀奈津佳がプロゴルファーとしてやるべきことはまだまだ残されている。挑戦し続ける彼女を、これからも見守っていきたい。

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