「Thinkstock」より

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 インターネット時代の資金調達法として、近年注目を集めている「クラウドファンディング」。

 今年の日本アカデミー賞で最優秀アニメーション作品賞を受賞した映画『この世界の片隅に』(東京テアトル)は、3900万円余りの製作資金をクラウドファンディングで集め、お笑い芸人の西野亮廣は絵本『えんとつ町のプペル』(幻冬舎)の制作費用1000万円以上や展覧会の費用をクラウドファンディングで調達、のちに同書を無料公開したことで炎上するなど、話題にも事欠かない。

 矢野経済研究所によると、2015年度のクラウドファンディングの国内市場規模は前年度比で68.1%増となる約363億円で、16年度は同31.5%増の約477億円となる見通しだという。今やクラウドファンディングは、話題性だけではなく、市場規模も右肩上がりで成長を続けているのだ。

 しかし、クラウドファンディングはいい面ばかりではない。過去にはさまざまなトラブルも起きており、専門家は「日本のクラウドファンディングには問題点が多々ある」と指摘する。それはなぜか。

●「クラウドファンディング=寄付」は間違い!

 そもそも、クラウドファンディング(以下、CF)とは、「群衆(crowd)」と「資金調達(funding)」を組み合わせた造語だ。

 仕組みは簡単で、「立案者」がネットを介して実現させたいプロジェクトを社会に発信し、不特定多数の「出資者」から資金を調達するというもの。アイデアさえあれば、誰もがプロジェクトを立案することが可能で、プロジェクトへの出資は数千円単位の小口から設定されるものも多いことから、立案者にとっても出資者にとっても気軽に参加できる仕組みとなっている。

 日本では11年にスタートした「Readyfor(レディーフォー)」を皮切りに、今では「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」「Makuake(マクアケ)」など、多くのCFサイトが登場している。

 しかし、日本におけるCF研究の第一人者で戦略コンサルタントの板越ジョージ氏は、「日本のCFは、その可能性を妨げてしまうような問題点が数多くあるのも事実です」と指摘する。

 まず問題なのは、日本ではCFの仕組みに対する理解が根本的に不足していることだという。

「日本で現在行われているCFは、そのほとんどが『購入型』です。ところが、東日本大震災後、当時は震災復興系のプロジェクトが多かったこともあり、日本ではCFに寄付的なイメージを持つ人が多い。しかし、『CF=寄付』というのはまったくの誤解です」(板越氏)

 CFプロジェクトは、主に「寄付型」「購入型」「金融型」の3種類に区分される。

「寄付型」は資金を募るだけで、出資の対価はない。「購入型」は、新製品などの開発資金を提供し、完成した際に製品を受け取ることができるというもの。たとえば、『えんとつ町のプペル』の展覧会は3000円を出資すれば似顔絵入りの絵本が贈呈され、『この世界の片隅に』ではエンドロールに名前が載るなど、モノやサービスによる対価がリターンとして提供されるのが特徴だ。

 そして、「金融型」の場合、プロジェクトが成功して得た利益を分配するなどという、本来のファンディングに近いスタイルだ。現状、日本のみならず世界では、クラウドファンディング=「購入型」が一般的である。

●大炎上した女子大生の世界一周プロジェクト

 CFに対する誤解の典型的な事例を紹介しよう。15年、「スケッチブックを持って世界一周し、発展途上国の子供たちに夢を描いてもらって『夢のバトン』をつなげる」というCFプロジェクトが「CAMPFIRE」で公開された。

 立案者の女子大生は、旅の費用やカメラ代などの資金をCFで集める代わりに、旅先から持ち帰ったスケッチブックのコピーをリターンに設定。しかし、この企画には「他人から集めた金で世界一周したいだけ」などと批判が殺到して大炎上、プロジェクトは中止に追い込まれた。

「プロジェクトには、出資者に対する『魅力的でお得感のあるリターン』を用意することが不可欠です。この炎上騒動の原因は、立案者がCFを『手段』ではなく『目的』と履き違えていたことが原因です」(同)

 CFサイトで公開されるプロジェクトは、各サイトが独自の“審査”を行っている。事業者の信用性はもちろん、きちんとリターンを提供できるか、プロジェクトを完遂することができるのか、といった点がポイントになるという。

 出資者はCFサイトの審査を信用するしかないが、現実には女子大生のケースのような不透明なプロジェクトも横行してしまっているのが実態だ。さらに、CFの認知度向上に伴ってCFサイトは過当競争に突入しており、その審査基準はどんどん緩くなってきているという。

「今、日本のCFは社会基盤として根付いていくかどうかの重要な時期だと思います。ここで未熟なプロジェクトが増えてしまうと、CFに対するイメージが悪くなり、参加人口も減っていってしまうという懸念があります」(同)

 実際、アメリカでは「CF詐欺」も発生しており、裁判沙汰になった例もある。とはいえ、悪質なプロジェクトに出資して約束のリターンを受け取れなかったとしても、基本的にCFサイトが責任を負うことはない。

 CFサイトは、あくまで投資の「場」を提供しているだけであり、出資には自己責任が求められる。万が一、自分が出資したプロジェクトが詐欺だったとしても、自力で解決しなくてはならないという。

 クリエイターが投資を募る方法としてはそれなりに有効なCFだが、出資する側は、それ相応の責任やリスクがあることを肝に銘じておいたほうがよさそうだ。
(文=森江利子/清談社)