吉野家 羽田空港国際線旅客ターミナル店の牛重

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 空港――それは言うまでもなく、国内外へと飛行機が発着する場所であり、旅行や出張で利用した経験のある方も多いだろう。ゴールデンウィーク(GW)などの大型連休ともなれば、人々の賑わいはピークとなる。

 そんなターミナル内を散策したことがある方はご存じだろうが、主要都市の国際線が発着する空港はとにかく広い。そして、お土産や旅行用品はもちろん、ありとあらゆる専門店や飲食店が立ち並んでいる。搭乗手続きが始まるまでの時間潰し程度では、到底回りきれないくらいに充実した施設なのだ。

 筆者は今回、ショッピングやグルメだけを目当てに2つの空港を訪問してみた。飛行機に乗ってどこか遠方に行くわけではない。あくまで空港という施設の探索を目的として訪れた。

 果たして、空港にはGWに家族で足を運ぶ“レジャースポット”としての価値はあるのだろうか。あるいは、仕事帰りや休日にふらっと遊びに行くのが適当なのか。その検証結果をレポートしよう。

●京都土産を東京で購入できる

 まずは平日の仕事終わりに、東京国際空港(羽田空港)へ向かった。浜松町駅から東京モノレールに乗って羽田空港第1ビル駅で下車すると、そこは第1ターミナルのB1階だった。南口を出るや「よーじや 羽田空港店」という店舗が目に飛び込んできた。

 美容に関心のない筆者でも、「よーじや」のあぶらとり紙が京都でもっとも有名な土産の定番であることは心得ている。京都に4月初旬に旅行に行ってきた際にも、「あぶらとり紙 さくら」という季節限定商品を知人向けに買って帰ったほどだ。

 そのよーじやが東京でも店舗展開しているとは知らなかったため、羽田空港店にも物珍しさから立ち寄ってみることにした。空港限定の「あぶらとり紙 アロエ」のほか、母の日が近いということもあり、ハンドクリームや丸手鏡などが巾着に入った「2017母の日限定セット」も売られていた。女性店員から「美容に気を遣うお母さまでしたらぜひ」とオススメされたため、この限定セットをつい購入してしまった。

 それからエスカレーターに乗って、3階の某飲食店へ向かったのだが、その途中で「東京食賓館」というお土産屋に立ち寄ったが、平日夜で閉店間際ということもあってか客入りはスカスカで、快適に見て回れた。大賑わいだったのは、やはり東京土産の一番人気ともいわれる「東京ばな奈」だ。

 そして辿り着いたのは「吉野家 羽田空港第1ターミナルビル店」。空港内には、ほかにも有名チェーン店が軒を連ねており、飲食の選択肢は豊富なのに、なぜ筆者はわざわざ牛丼を選んだのか。それは、この店舗ならではのレアメニューがあると予習していたからにほかならない。

 それは「和牛 牛重」だ。1240円(税込、以下同)という、まるで吉野家らしからぬ高級仕様のメニューで、国会議事堂内にある「永田町1丁目店」では販売されているのだが、国会関係者以外の一般人が食べるためには、この羽田空港店まで足を運ぶしかない。

 だが、店外にあるメニュー表をチェックしても「牛重」は載っていない。あらためて調べ直したところ、同メニューを取り扱っているのは空港内の別店舗だと判明した。予習が不充分だったと悔やみながら1階まで下り、無料連絡バスを利用して国際線ターミナルへと移動した。

●羽田空港限定グルメの牛重と天丼を堪能

 国際線ターミナルに着くと外国人の割合が急激に増えた一方、空港内の「和」の装いが色濃くなっている。4階の「江戸小路」というエリアには提灯が吊り下げられ、天井には鯉のぼりもある。さらに、19世紀前半の東京・日本橋を半分のサイズで再現したという「はねだ日本橋」も架けられている。過去にタイムスリップしたかのような居心地になり、気分が高揚する。

 目的地の「吉野家 羽田空港国際線旅客ターミナル店」も、江戸小路の一角にあった。店内に入り迷わず「牛重」を頼むと、店員から「ちょっとお時間をいただきます」と断りがあった。事実、筆者の後に入店した客の「豚スタミナ丼」のほうが先に提供され、「牛重」は調理に特別な手間のかかるメニューであることがうかがえた。

「牛重」が運ばれてきたのは、オーダーから約5分後だ。牛丼店のほかのメニューを基準にすれば、5分は長いほうだが、重箱をトレーに乗せて差し出されたら、この程度で文句をつける気は起きないだろう。

 フタを取って実食すると、すき焼きのような味つけを施された肩ロースにごはんが進む。厨房担当のスタッフに「時間をかけてしっかりお肉を焼いてくれて、ありがとう」と感謝したくなるほどだ。店内にはフライト情報を示すディスプレイが設置されており、外国人客も次々と来店する。食事中に「ここは本当に吉野家なのか」と何度も疑ってしまう、不思議な体験となった。

 食後は再び第1ターミナルに戻り、「天丼てんや 羽田空港第1ターミナル店」へ向かった。日本を代表する天丼チェーン店だが、ここでは空港オリジナルメニューの「海宝天丼」が食べられるとの情報を得ていた。テイクアウト可能であれば自宅で食べたかったのだが、店内限定メニューだという。

 まだ胃袋には「牛重」が残っていたが、「せっかく羽田まで来たから」と意を決し、食べて帰ることに決めた。980円の食券を買って席に着く。やがて、配膳された「海宝天丼」には、アナゴが器からはみ出るように横たわっており、ほかにもイカ、鮭、ほたて、いんげんなど盛りだくさんだ。もはや、海老が主役の座を奪われている気がするほどの圧倒的なボリューム感で、当然ながら満腹となって帰路についた。

●空港はレジャーの穴場?

 筆者は翌日、成田国際空港を訪れた。今までは格安航空のジェットスターに搭乗するため、LCC(格安航空会社)専用の第3ターミナルを利用したことがあるのみ。このターミナルは2015年のオープンから日が浅いためか、小規模なフードコートを見かけたくらいで、あまり栄えている印象はない。そこで今回は、最初から第1ターミナルに狙いを定めた。

 事前にリサーチした結果、成田空港には羽田空港の吉野家や天丼てんやのような、わかりやすい限定メニューを提供している飲食店はなさそうだ。それならば自分の好物を食べようと中央ビル4階の「エアポートモール」を歩いているうち、「日本の中華そば富田」が目に留まった。

 ここは千葉県松戸市の有名店「中華蕎麦とみ田」のフランチャイズ店だ。本家は、食券を買っても実際に案内されるのが数時間後になるほどの超人気店。空港内の「日本の中華そば富田」も客足は順調そうではあるが、お昼過ぎという時間帯にかかわらず行列は発生していない。「あの噂のつけ麺を待たずに味わえる」との期待から、筆者は店内に吸い込まれた。その期待は裏切られず、「濃厚つけ麺」を割りスープまで飲み干し、大満足で店を出た。

 続いて、無料の連絡バスで第2ターミナルへと向かう。本館4階の見学デッキに出て、飛行機の様子を柵越しに眺めていると、柵の何カ所かに穴があいていることに気がついた。その穴にスマートフォンを差し入れれば、柵が入らないクリアな景色が撮れる。周りを見渡すと、本格的なカメラを手にした客もあちらこちらにいて、飛行機を撮影するために訪れている人も多いことがわかる。この穴は、そんな客に対する優しい配慮といえる。

 筆者はそのまま、見学デッキの近くにあったローストビーフがメインのレストラン「RB」へ。丼物やカレーのほか、サンドイッチやケーキのような軽食も取り揃えており、少し腰を落ち着けるにはピッタリな店だ。

 ローストビーフ、スモークサーモン、オニオンリングという「RBの三種盛り」に、白ワインをセットで注文した。晩酌にはまだまだ早い時間だと思ったが、隣のカウンター席に座る外国人女性も、ネギトロアボカド丼をフォークでつつきながらビールグラスを傾けている。奥のテーブル席では、男性グループの笑い声が弾んでいる。

 いつか「空港集合!」や「空港飲み」といった言葉がトレンドになるのだろうか……などと考えつつ、筆者もグラスへ白ワインを注いだ。前日もこの日も一人で来てしまったが、それでも空港は意外と楽しい。丸一日レジャーのつもりで、GWに家族や気の置けない仲間とゆっくり遊びに来ても、きっと満足できるだろう。
(文=A4studio)