写真:労働新聞(電子版)より

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 朝鮮半島情勢が緊迫するなかで、テレビで軍事パレードの様子やピョンヤン市内の高層ビルが映し出されることが増えた。外見的には金正恩時代になってから北朝鮮の経済事情は良くなっているようにも見える。2013年には平壌に敷地11万平方メートルのウォーターパークを建設、14年にはアジア最大規模をほこる馬息嶺スキー場をオープン、1発数百万ドルするスカッド(中距離ミサイル)や3000万ドルもするといわれるムスダン(中距離弾道ミサイル)を30発以上も発射した。金正恩政権はこのカネをどこから調達しているのか。王朝のマネーを支える「首領経済」がある。

金正日時代に始まった首領経済
党に「統治資金」集める専門部署

 米空母カールビンソンの朝鮮半島近海への派遣が伝えられていた最中の4月13日、平壌では金正恩労働党委員長出席のもと黎明通り完成式典が行われた。30階以上の高層ビル20棟ほどが立ち並ぶ黎明通りのオープンに先立ち、首相の朴奉珠(パク・ポンジュ)は、「(通りの完成は)敵の頭上に数百発の核爆弾を落とすよりも強力なもの」と自慢、「米国とその追従勢力の制裁の企みに対する勝利」と語った。

 国際社会の経済制裁にもかかわらず経済はむしろ改善しており、体制も盤石であると誇示する狙いがあったと思われる。

 その支えになっているといわれるのが、金正恩委員長が握る財布、すなわち“首領経済”だ。北朝鮮には、統計上に現れる国民経済の他に、もう一つの「財布」が存在するのだ。 

 起源は、1970年代初頭に遡る。金正日が父親の金日成の後継者の地位に就いた時期と重なる。

 1973年9月に開かれた朝鮮労働党中央委員会第5期7次会議で、組織指導部長兼組織・思想担当書記に選出された金正日は、党の運営方式を大きく変える。

 党中央委員会の中の党部門を拡大再編し、それまで党員から徴収する党費でまかなっていた党部門の業務を国家統治の全般に及ぶものにし、国家経済の上に君臨する「党経済」システムづくりに乗り出すのだ。

 金正日は党中央傘下の財政経理部を独立させ、統治のために必要とする資金を優先的に確保するようにした。例えば「1号計画」「1号行事」に必要な財源は国家予算と関係なく捻出できるようにした。1号計画、1号行事とは、金日成の神話づくりや宣伝事業、首領の神格化のためにつくられる各種施設の運営、行事を指す。

 例えば、金正日が工場を視察に訪れた際、思いつきで「この工場に車を3台送るように」と指示したら、無条件にそれを実行しなければならない。独裁体制のもとでは、1号計画に必要な資金の捻出にクレームをつける機関も人間もいない。「党経済」がすべてに優先されるようになった。

 それが首領経済の始まりである。

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