NBAプレーオフ2017 カンファレンス・セミファイナル展望@イースタン編

 今季イースタンのNBAプレーオフ・ファーストラウンドは、危うい場面がありながらも上位シード4チームがカンファレンス・セミファイナルに進出した。次なる舞台――カンファレン・ファイナル出場をかけて、さらなる激戦は必至。勝ち名乗りを挙げる2チームは果たして?


千葉ジェッツの富樫勇樹が「バケモノ」と評するマーカス・スマートボストン・セルティックス(1位/53勝29敗)
vs.
ワシントン・ウィザーズ(4位/49勝33敗)

 両チームのレギュラーシーズンでの対戦成績は2勝2敗の五分。ファーストラウンドはどちらも4勝2敗で勝ち抜き、疲労度も同程度だろう。どちらが勝ち抜いてもおかしくはないカードだ。レギュラーシーズン中からの何かと因縁のある両者だけに、白熱したシリーズになることは間違いない。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 昨年11月の対戦ではワシントン・ウィザーズのエース、ジョン・ウォール(PG)がボストン・セルティックスのマーカス・スマート(PG)を覆いかぶさるように倒し、フレグラントファウル2(※)をコールされて退場処分を受けた。さらに、今年1月の対戦でも試合後に一触即発のシーンがあり、セルティックスのジェイ・クラウダー(SF)に2万5000ドル(約278万円)、ウォールに1万5000ドル(約167万円)の罰金処分が下されている。

※フレグラントファウル=身体接触が激しく危険と審判が判断した場合に宣告されるファウル。危険度に応じてレベル1、レベル2に分けられる。レベル2は一発退場で、出場停止処分が加わる場合も。

 しかも3度目の対戦では、ウィザーズの全選手が喪服のような上下黒い服を着て会場入りした。これは、プレーオフでシリーズ王手をかけたチームが、「この試合で終わり」という意味を込めたパフォーマンスなのだが、レギュラーシーズンで行なうのは稀(まれ)だ。それほど両者の因縁は深い。

 このカードで注目を集めるのは、間違いなくセルティックスのアイザイア・トーマス(PG)だろう。

 突然の悲劇がトーマスを襲ったのは、シカゴ・ブルズとのファーストラウンド初戦の前日だった。妹が交通事故で帰らぬ人に。激しく動揺するトーマスにブラッド・スティーブンスHCは、「もし出場を望まないのであれば、それで構わない」と声をかけた。しかし、トーマスは試合に出場することを決断する。

 試合当日、トーマスのシューズには、『R.I.P. Lill SIS.』(愛する妹よ、安らかに眠れ)の手書きの文字が書かれていた。それでも、試合前の練習で涙を流し、選手紹介の最中も呆然と天を仰いでいたトーマス。いつもどおりにプレーできるはずがないと思われたが、この試合でも33得点の活躍を見せる。しかし、それでもチームは敗れた。さらに、セルティックスは続く第2戦も落としてしまう。

 セルティックスのピンチに、檄(げき)を飛ばしたのがケビン・ガーネットだった。

 ガーネットは2012-2013シーズンまでセルティックスでプレーし、2008年のセルティックス優勝にも貢献した伝説のプレーヤーだ。そんなガーネットがトーマスにビデオレターを送り、試合前にはチームメイトにトーマス自身がそれを見せた。詳細こそ不明だが、エイブリー・ブラッドリー(SG)がガーネットのメッセージについてインタビューでこう答えている。

「KG(ケビン・ガーネット)は、俺たちを鼓舞する言葉を授けてくれた。『セルティックスは、どのチームよりもハードにプレーしないといけない』ということを思い出した。俺たちは、トーマスの身に起こった不幸をモチベーションに変えるべきだ。プレーすると決めた彼のため、彼の家族のためにもハードに戦わなければいけない」

 ガーネットのメッセージで覚醒したセルティックスは、第3戦から4連勝を達成。逆転劇を演じてカンファレンス・セミファイナル進出を決めた。

 対するウィザーズは、ウォールとブラッドリー・ビール(SG)のバックコートコンビが好調だ。なかでもウォールは、アトランタ・ホークスとのファーストラウンド6試合で平均29.5得点・10.3アシストを記録し、第6戦ではプレーオフキャリアハイの42得点を叩き出している。

 リーグ最高峰のスピードを誇り、リーグを代表するポイントガードであることは間違いないウォールだが、過去3年間はひざのケガに悩まされてブレークしきれずにいた。今季にかける想いの強いウォールは、最近のインタビューでこう答えている。

「ケガの影響で過去3年は満足な練習ができなかった。早くに成功するヤツもいるだろう。だが、遅咲きのヤツもいる。まだ誰もが、真のジョン・ウォールを知らない。ここから俺の時代が始まる」

 セルティックスはトーマスがエースとしてチームを牽引するが、スターター全員がふたケタ得点できるバランス型のオフェンスを展開する。一方のウィザーズは、ウォール&ビールのガード陣の得点能力に特化したチームだ。

 見どころのひとつは、セルティックスがウォールをどう抑えるかだろう。スピードのみならずパワーもあるウォールに対し、セルティックスは昨年11月にハードファウルを受けた前述のスマートをマークマンに起用する時間が長くなるはずだ。ちなみに、193センチ・100キロとプロレスラーのような体格のスマートについて、高校時代に対戦経験のある富樫勇樹(Bリーグ・千葉ジェッツ)は「バケモノ」と評している。

 5月1日に行なわれたカンファレンス・セミファイナル第1戦は、セルティックスがホームで先勝した。しかし因縁の深さを考えれば、このまますんなり決まるシリーズだとは到底思えない。

クリーブランド・キャバリアーズ(2位/51勝31敗)
vs.
トロント・ラプターズ(3位/51勝31敗)

 こちらも「因縁の対決」と呼んでいい。昨季のカンファレンス・ファイナルで顔を合わせた両者が、早くもカンファレンス・セミファイナルで激突する。

 今季レギュラーシーズンでの対戦成績は3勝1敗で、一見クリーブランド・キャブスが有利に見える。しかし、最初の3戦はキャブスが勝利するも、94-91、121-117、116-112とすべて接戦。4度目の対戦は98-83でトロント・ラプターズが大勝するも、キャブスはレブロン・ジェームズ(SF)、カイリー・アービング(PG)、ケビン・ラブ(PF)の「ビッグ3」が欠場していたため参考外と言えるだろう。

 昨年のカンファレンス・ファイナルでは、キャブスが2勝2敗から2連勝してカンファレンス王者となっている。しかし、今季のラプターズは昨年よりも確実に強い。リオ五輪アメリカ代表コンビでもあるデマー・デローザン(SG)とカイル・ロウリー(PG)の2枚看板は健在だ。さらに弱点だったインサイドには、オーランド・マジックからサージ・イバカ(PF)を補強。また、短期決戦のプレーオフを勝ち抜くために不可欠な「ゴートゥガイ(ここ一番でもっとも頼れる選手)」も現れた。

 ミルウォーキー・バックスとのファーストラウンドで、ラプターズは1勝2敗とリードを許す。バックスはヤニス・アデトクンボ(SF)を筆頭に身体能力の高い選手が多く、ラプターズはその対応に苦戦していた。そこで第4戦、213cmのヨナス・ヴァランチューナス(C)に代え、193cmのノーマン・パウエル(SG)をスターターに起用。するとパウエルは自慢の守備力を発揮して勝利に貢献し、第5戦ではスリーポイントシュートを4本すべて成功させて25得点を記録するなど、オフェンス面でも輝きを放っている。

 一方、ファーストラウンドでのキャブスは、インディアナ・ペイサーズをスウィープ(4連勝)で退けたものの、4試合すべてが接戦だった。特に第3戦は最大26点のリードを許した状態から薄氷を踏んでの大逆転。レギュラーシーズン終盤から続く不調を完全に払拭できたわけではない。

 しかし、キャブスには「キング」がいる。レギュラーシーズンでは平均26.4得点・8.6リバウンド・8.7アシストだったレブロンは、プレーオフに入るともう一段上のギアを隠し持っていた。ペイサーズとの4試合では平均32.8得点・9.8リバウンド・9.0アシストをマーク。特に第3戦では41得点・13リバウンド・12アシストのトリプルダブルで大逆転劇の立役者となった。

 シリーズの見どころは、いかにラプターズがレブロンを抑えるかに尽きるだろう。レブロンを完璧に抑えるのは、どんなプレーヤーであっても不可能である。問題は、どの程度に抑えられるかだ。その意味でも、「キング」レブロンとディフェンスが得意な「ゴートゥガイ」のパウエルのマッチアップは必見。実力的にはカンファレンス・ファイナルと呼んでもいいカードだけに、このシリーズの勝者がカンファレンスの覇者にもっとも近い存在と言っても過言ではないだろう。

 カンファレンス・ファイナルに駒を進めるのは、どの2チームか。今季のイースタンは「ふたつの因縁対決」から目が離せない。

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