2007年7月、アメリカ、リンデン・ラボ社が開発・運営する仮想空間「Second Life」の日本語版がリリースされました。 当時雑誌やテレビでも取り上げられ話題となったのを覚えている方もいるでしょうし、実際にアカウントを取得して「Second Life」を体験した方も多いでしょう。

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 実際その当時は日本人ユーザーの人口爆発と言えるほど大挙して「Second Life」に人が集まりました。その状況は半年ほどで減速し、2008年前半には「過疎ってる」と言われるようになりました。 実際「Second Life」を始めてみたという方でも、その中で何をしていいのかわからなかったという方もいるでしょうし、外国人中心のその世界で日本人に会えなくて辞めてしまったという方もいると思います。

 とネガティブな面から始めてしまいましたけど、わたし自身は2007年8月からおよそ10年、「Second Life」を続けています(笑)。

 「Second Life」という仮想空間自体は2003年にスタートしました。最初はアメリカ、そしてヨーロッパ、中南米とサービスが広がり2007年の日本語版となります。3Dアバターを使った自由な空間というネットの情報から日本語版がリリースされる以前に始めたユーザーもいます。また2007年7月の日本語版リリース時には現実のビジネスと同じように仮想空間で仕事ができ、お金が稼げるという触れ込みもありましたから、単にネット上の「ゲームのようなモノ」という以上に興味を持たれたということはあったように思います。

 とはいえそれから10年。すでにネット上でもユーザー以外には「Second Life」について取り上げることもなくなり、その存在自体を知らない人も多いのではないかと思います。まずは「Second Life」がどのような世界なのか、そのあたりからお話ししていきましょう。

1:SLという世界

 「Second Life」(ユーザーはSLと略しますので、今後はSLと表記します)はアバターを自分の分身として仮想空間の中でコミュニケーションしたり、モノづくりをしたりする世界です。SIMと呼ばれる島単位のエリアがあり、そこに自然の景観を作ったり、未来的な街を造ったりできます。

 アバターは歩くこと、走ること、そして空を飛ぶことができます。またアバターの容姿編集(一般的なオンラインゲームのキャラメイク)がいつでも自由にできますし、髪形、着ている服なども自由に着替えられます。
 コミュニケーションはテキストベースのチャットのほか、ボイスチャットも使えます。目の前にいなくてもログインしていれば、IM、インスタントメッセージ機能で1:1で話せますし、グループIM、カンファレンスを使えば複数の相手と離れた場所でも会話ができます。

 MMORPGなどで使われている「カバン」や「持ち物」はすぐにアイテムで一杯になってしまいませんか? 容量を増やすのに課金する場合もあるかと思います。けれどSLのインベントリはその心配がありません。多い人だと10万を超えるアイテムをインベントリの中に入れています。また自分で買ったり貰ったりして集めたもののほか、「ライブラリ」というフォルダーの中にはリンデンが用意してくれたアバターや服などさまざまなアイテムも入っていて、これだけでもけっこうな数のアイテムになっています。

 モノづくりという点では「マインクラフト」を高度にしたものと思っていただいていいと思います。椅子を作ればそれに座れますし、メガネや煙草といった小物から家やビル、車にヨット、ジェット機まで作ることができます。スクリプトやアニメを仕込んで椅子に座ったポーズをアバターに実行させたり、煙草から自然な煙を出したりすることもできます。

 単純に言うと、チャットなどのコミュニケーションとモノづくりを楽しむ世界と言っていいのだろうと思います。またSL内で作ったものは自由に販売することができます。多くのクリエイター(といっても一般ユーザーに変わりありません)がアバターの衣類や家具や建物といったモノを作って売っています。

 SL内での通貨はL$、リンデン・ドルと呼ばれています。これは現実の通貨に換金ができますので、SL内でL$を稼いで換金すれば、現実の収入となるわけです。

 収入という点ではリンデン・ラボ社からSIMを購入して土地をレンタルしたり、SIMの価値を上げて転売したりすることもできます。2007年当時、海外のユーザーにはSIMの転売で億単位の収入を得たという伝説的な話もあって、SLに注目が集まったのも事実ですし、それを真似て仮想空間の土地売買をうたった詐欺が日本国内でもありました。

 SL内には運営が造成したSIMの大陸があり「メインランド」と呼ばれています。また個人や企業が単独で購入したSIMを「プライベートアイランド」と呼んでいます。プライベートアイランドは独立して存在していて、連結させない限りSIM間の移動はTP、テレポート以外できません(TPは「どこでもドア」を想像していただければわかりやすいかもしれません。行きたい場所のSLURL(LM、ランドマークと呼ばれています)があればどこにでも行くことができます)。地図上は近くても接続していないSIMはほかのSIMからは見ることもできないのです。またSIMに入ることのできるアバターを規制することもできますので「箱庭」として使うことも可能なので、自分のSIMで自由に作りたいものを作って楽しんでいるユーザーもいます。

 とそんなところが2007年当時でも実装されていたSLの世界です。ここからはその後の10年の変化について見ていきたいと思います。

2:SL世界の変遷1・ビュワー

 SLはSecond Life Viewerという専用のクライアントビュワーをPCにインストールしてプレイします。2007年、このビュワーはV1と呼ばれるもので、右クリックで表示される円形のパイメニューなどが特徴でした。またこのビュワーのソースは公開されていたのでユーザーが独自に改良したサードパーティービュワーというものが複数ありました。公式ビュワーの重さを軽減し、独自の機能を付加したものがありましたので、ユーザーの中にはサードパーティービュワーを愛用する人も増えていきました。が、その中にユーザー情報を盗んだりする悪質なビュワーが登場してきて、リンデン・ラボはサードパーティー開発者と協議を重ね、リンデン公認のビュワーだけがログインできるようにしました。それに関連してサードパーティービュワーもほぼ公式ビュワーの機能に準ずるものになっていき、サードパーティーのオリジナリティのようなものが失われていった感もあります。

 V2ビュワーが実装されたのは2010年頃。画像表示をより綺麗に見せるウィンドライトを実装し、UIも一新したものが登場しましたが、それまでのV1ビュワーに慣れたユーザーには不評で、V1ビュワーのUIをそのまま引き継いだサードパーティーV2ビュワーの人気が高まりました。またこのころ、アバターの胸やお尻が揺れるようにもなりました。

 その後2012年頃にV3にヴァージョンアップしたあとは大きな見た目の変化はないまま、現在はV5ビュワーとなっています。アバターや木々、建物の影の表示が標準になり、空や海の色調を調整できるなど、2007年当時に比べるとグラフィック面での進化もこの10年の成果といえるでしょう。ただし基本的にハイスペックな環境を基準に開発されているので、ユーザーの誰もがそのグラフィックを充分に楽しむのは難しいというのもSLの真実と言えます。

 それとスマートフォンの登場に合わせてモバイル版のビュワーもサードパーティーから出ています。とはいえSL自体がマシンパワーを要求するものなのでスマホからのアクセスでは思うように楽しめないというのが現実のようです。

-SL世界の変遷2・アバター

 2007年当時、初期アバターは男女共にTシャツを着てジーンズをはいているというものでした(女性アバターはスカートの場合も)。容姿はお世辞にも綺麗とか可愛いと言えるものではありませんでした。特に日本のゲーム画像に慣れている目には不細工に映ったのは仕方ないでしょう。けれどこれはシェイプ(骨格)の編集やスキン(皮膚)の変更といったことで見違えるほど変えることができましたし、自作したシェイプやスキンを販売することもできました。日本人的な顔だちのシェイプやスキンも増えていきましたし、アニメアバターと呼ばれる目の大きいアバターも作られました。V2ビュワーがリリースされたときには初期アバターも変更されて、より多くの種類が選択できるようになりましたし、現在はヴァンパイアやゾンビといったアバターも初期段階で選ぶことができます(この2種はリンデンのあるアメリカでドラマが流行った影響なのだと思います)。

 2015年頃からはメッシュアイテムが実装されたことにより、メッシュボディと呼ばれるより美しいディテールのアバターを使うことができるようになりました。

 2017年現在はBentoと呼ばれる形式のメッシュパーツが出てきて、クラシックアバターのように容姿変更でメッシュのボディーパーツを編集できるようになっています。またBentoで作られた手は指を動かすこともできます。2007年当時のアバターしか知らないという方にはこの新しいアバターをぜひ体験していただきたいものだと思います。SLの進化を実感できることのひとつだと思います。

 アバターの頭の上には名前が表示されています。2007年当時、それは欧文のログインIDでした。2012年頃表示名、ディスプレイネームという、IDとは別のキャラクター名のようなものが表示できるようになり、これには漢字やひらがなといった日本語も使用できるようなりましたので、現在では表示名で日本語の名前を出すことができます。またこれは変更もできます(1度変更すると1週間変えることができませんが)。

 SLではアバターの容姿編集はいつでも自由に何度でもできます。また人間以外のアバターになることもできます。複数持っているアバターに瞬時に切り換えることも可能です。着ている服や着けている髪などもセットにしてフォルダーにまとめておくことで、ワンクリックで変身できるというわけです。このセット保存はV3ビュワーリリースの頃に実装されました。

-SL世界の変遷2・モノ作り

 SLでのモノ作りはプリムという素材を使って行います。正方体や円柱、円錐といった素材を組み合わせたり、テクスチャーを張り替えたりしてさまざまなものが作れます。さらに複雑なものは外部のCGソフトで作ったデータをアップロードするスカルプトプリムというもので作ることができますし、現在では外部の3DCGソフトを使って造形したデータをアップロードできますので、よりリアルなモノをSL内で見ることができます。

 アバターの服やスキンは画像ソフトを使って描いたデータをアップロードします。型紙のような素材も配布されていますので初心者から始めて人気のデザイナーになったというユーザーもいます。

 服に関しては2Dのデータで作るレイヤー服から3Dデータのメッシュオブジェクト服に移行しているのが現状で、新たにレイヤー服を作っている人はもうほとんどいないと言っていいかもしれません。これはアバターの髪にも言えて、当初はプリムを組み合わせて作られていましたが、現在はメッシュの髪が主流です。ただ、プリムで作った場合、アバターの動きや風などで髪が揺れたりするように設定できるところが魅力ではあります。プリムのロングヘアはアバターのカラダに刺さってしまいますけど(苦笑)。

 現在はSL内のすべてのものがメッシュに移行していると言っていいでしょう。プリムで作るとたくさんの素材(プリム数)が必要になったモノもメッシュでは少数ですむこともSIMの負荷を軽くするので置き換えられていっているという面もあります。けれどSL内で誰でも自由にモノ作りができたプリムと違って外部の3DCGソフトを使用するメッシュはモノ作りのハードルを上げてしまったということも否めません。

-SL世界の変遷3・SS

 SSはSL内での写真撮影機能、スナップショットの略です。これは初期から標準装備されていましたがV2ビュワーリリース後、被写体深度を設定して背景をぼかすことのできるサードパーティービュワーが登場したあたりから機能が強化された感があります。ワンクリックで撮影した画像の画面色を変更でき(例えばセピアなど)、フェイスブックやフリッカーといった外部サイトに直接投稿もできるようになりました。

 SLのSSの特徴として上げられるのはカメラ位置を自由に変えることができるということではないでしょうか。一般的なオンラインゲームですと撮影するキャラクターが中心になるように固定されていますよね? SLでは自分のアバターをフレームの外に出して風景だけを撮影することもできるのです。アングルが自由に変えられるので写真撮影も楽しくなりますし、高度な撮影を得意とするユーザーはSL写真家として活躍もしています。

 またSLビュワーの機能ではありませんが、動画撮影ソフトで映画を制作しているユーザーもいます。これは「マニシマ」と呼ばれていてYOUTUBEなどの動画サイトに公開もされています。

-SL世界の変遷4・SIM

 SIMはSL内の土地です。2007年当時にもリンデンが造成したSIMの集合地域、メインランドがあり、そのほかにユーザーが購入したプライベートアイランドがありました。

 日本人コミュニティとしてはメインランドに日本人オーナーのSIMが増えていき、プライベートアイランドも個人のほか企業が運営する日本人大陸のようものができていました。代表的なものとして東京の山手線各駅名のSIMや「ジャパンリゾート」「幕末」などがありました。

 山手線各駅のほうは2010年代になって運営企業が撤退を決め、土地をレンタルして借りていたユーザーなどに買い取られるなどして一部が存続した以外は消失しました(「アキバ」は現在もあります)。「ジャパンリゾート」も2015年までオーナーが変わったりしながらありましたが、現在はありません。2014年末に無くなったのが「幕末」SIM群です。ここは時代劇のセットのような町並みが特徴で、着物や和風の小物といったショップが集まるモールがメインとなっていました。毎年年末には着物市も開かれ賑わっていたのですが、いまはもうありません。

 その点では2007年にSLを体験した人にとって思い出のSIMがほとんど残っていないというのは事実でしょう。もちろん新たにSIMを購入するユーザーもいますから日本人オーナーのSIMがなくなってしまったということはありません。

 そうそう忘れるところでしたが、2007年当時どこにでも作ることのできたアダルト施設(SLではアバター同士でHをすることができ、それを目的とした施設があります)ですが、SIM単位でリーディングが設定されたことによりアダルトリーディングのSIM以外には設置できなくなりました。また18歳以上でなければ参加できなかったSLも16歳以上と改定されたことで、アダルトリーディングのSIMに入るときには年齢確認が要求されるようになりました。

 プライベートアイランドのほかリンデンが用意したアダルトSIMの大陸もあります。

-SL世界の変遷5・コミュニティ

 2007年当時、日本人コミュニティは日本人の集まるSIM(たいていは日本人オーナーのSIM)という単位で成立していた感がありますが、2009年あたりからはユーザーが運営するカフェやバーといった店単位となっています。これはSIMを購入するユーザーが増え、土地をレンタルして店を運営するユーザーが増えたことで、一カ所にユーザーが集中しなくなったということと比例します。

 一般的なオンラインゲーム、MMORPGの城や町といった、ユーザーが必ず行かなければ先に進めないというものがSLにはありませんから、SIMの数、店の数だけユーザーが分散していったわけです(これも過疎といわれた要因のひとつですが、この点では誤解と言っていいでしょう)。

 そこで登場したのが「すりんく」という外部サービス。ユーザーが自分の店舗にセンサーを設置すると、そこにオーナーやスタッフ、来店客がいるとその人数を表示してくれるというものです。2010年頃にスタートしたこのサービスは、いまや日本人SLユーザーの間では欠かすことのできない情報源となっています。

 アバターが多く集まっているのはDJやダンスイベントでしょう。SLではSHOUT CASTなどのネットラジオを土地に設定して音楽が流せますので、ライブ演奏するSLミュージシャンもいます。音楽を聴きながらダンスアイテムを使って踊るのをSLユーザーの多くが楽しんでいます。これは実際に体験してみないとなかなか伝わりにくい楽しさではないかと思います。

 情報源といえばSNSやブログがあります。2007年の秋には「ナビスル」というSLユーザー専門のSNSがスタートしました。これは3年ほどで閉鎖になっています。ブログは「ソラマメ」という、やはりSLユーザー専門のブログサービスが2007年秋にはスタートしていました。個人的な日記はもちろん、初心者に向けてSLの楽しみ方、モノ作りの解説といった記事も多く、SLユーザーなら1度は見たことがあるブログサービスと言っていいでしょう。ブログの運営会社はSL内で土地のレンタルもしていてSLに密着した印象は強いです。ただブログ自体は運営を別の会社に移管しています(2016年末)。また現在はソラマメ以外のブログサービスを利用するユーザーも多く、SLの情報を得るのにソラマメだけを見れば事足りるという状況ではなくなっています。

 コミュニティに関連してコミュニケーションにも触れておきますと、テキストチャットは初期から当然実装されていましたが、ボイスチャットの実装は2007年の秋ごろでした。とはいえ最初は不安定で使い物にならなかったのも事実で、2009年になってから外国人ユーザーの間ではボイスチャットが主流で、キーボードを使わなくなっているという話が聞こえ始め、2010年になると日本人ユーザーでもボイスチャットをメインにする人が増えてきました。現在はテキスト派、ボイス派、その両方を状況によって使い分ける派に分かれている感じです。カフェやバーでもテキストオンリーでボイスチャットを禁止している場所があります。

 テキストチャットに関していえば、チャットを入力するとアバターはキーボードを打っているような動きをします。わたしはこれがチャットの臨場感があっていいなと思いました。また打ち込みに合わせて手の位置にノートPCやさまざまなものが表示されるチャットアイテムというものも豊富にあります。アバターの動き自体もチャットアニメとしていろいろなものが作られているので、それだけでも楽しいと思います。

-SL世界の変遷6・ビジネス

 SLでのビジネスというと、冒頭でも触れたSIMの転売があります。現在でもメインランドの人気のある土地は高額で取り引きされているようですが、もう伝説として語られるような大儲けはできないでしょう。そのほか一般ユーザーが気軽にできるものとしてアイテムの販売があります。アバターの服などのアパレル関係、家や家具、車、ヨット、花、樹、あらゆるものが作られ、販売されています。

 2007年には自分でショップを建てて販売するか、モールのような場所に店を出すのが主流でしたが、現在はリンデンが運営する「マーケットプレイス」を利用してオンラインショップで販売することが多くなっていて、SL内に店舗を持たなくてもアイテム販売ができるようになっています。もちろん人気のあるショップはSL内に実店舗も用意していて賑わってもいます(日本人ユーザーだけでなく外国人ユーザーも買いに来ているショップなど)。

 最近のトレンドは、やはりメッシュボディやBentoヘッドなどで、関連してスキンやシェイプ、AO(アバターのアニメを上書きして、より自然に見せるアイテム)の販売も活発です。

 アイテム販売のほかには、カフェやバー、クラブの店員、DJやミュージシャンといったアーティスト職があります。これらは来店客や観衆からチップを貰って収入としています。

 SL内の通貨L$についても少し触れておきましょう。
 L$はリンデン・ラボから直接買うこともできます。クレジットカードを登録して課金するのが一般的ですが、代行販売というか、個人や企業がリンデン・ラボから購入して転売することも以前はできました。その場合カード以外の決済もできましたので、多少手数料を取られますが代行業者を利用するユーザーは多かったのです。けれど2016年にリンデン・ラボはL$の代行販売を中止しました。現在はリンデン・ラボからの直接購入だけができる状態になっています。カード登録のほかペイパルも利用できます。

 2007年当時、L$を入手する方法として「キャンプ」というものがありました。5分や10分ごとに2L$、5L$といった小銭がもらえるというもので、SLにログインして長時間キャンプに放置するというユーザーも珍しくありませんでした。2010年頃、ボット対策などの理由でキャンプも規制され、いまではほとんど設置しているところはありません。

-SL世界の変遷7・メディア

 2007年の日本語版リリースに合わせるようにしてテレビ、雑誌でSLが取り上げられたのは冒頭でも触れた通りですが、SLの入門書のようなものもムックや書籍で多数出版されていました。

 2008年には雑誌の企画でAKB48のメンバーがSLにログインして実況していました。現在もYOUTUBEで動画を見ることができます。ほかにも2007年末頃のテレビでは出演者がSLのアバターを操作するという形で制作されたレギュラー番組もありました。まあ放送期間は短かったと記憶していますけど。

 こうしたテレビ、雑誌関連もネット上と同様に2008年後半にはSLを取り上げることがなくなり、いまや忘れられた存在といってもいいような状態でしょう。

 それでもYOUTUBEなどの動画サイトではぽつりぽつりと「現在のSecond Lifeは?」的な動画がアップされていますし、リンデン・ラボ公式チャンネルでも最新の動画が公開されています。

 またユーストリーム、ニコニコ動画といったライブ配信の動画サイトでもSLの実況中継をしていたユーザーがいて、現在も不定期に実況されているようです。

 SL内に目を向けてみると、SL内で雑誌を作って販売していたり、SL内から動画サイトの動画を再生するアイテムでSL内のニュースや情報を配信したりする番組もありました。そのほとんどはすでに終了してしまっていますが、SL内でも本を読んだりテレビを見たりできるということは知っておいてほしいと思います。SLは単にアバターを操作して遊ぶゲームではなく、そこから何かを始めるポータル的な要素があるということです。

3:SLの未来?

 実は2、3年前から「SL2」と呼ばれる次期プラットフォームの話が出ていました。

 これは「サンサール」というリンデン・ラボの新しい仮想空間として、現在クローズドベータ版が稼働しています。VR機能を前提とした仮想空間で、よりリアルな世界になっているようです。

 ただしサンサールではSLのように気軽にモノ作りはできないようで、同じ仮想空間とはいえ別の思想で成り立つようです。サンサールでは最初からメッシュアバターになるようで、SLのアバターよりも綺麗でリアルなものになりそうです。手も指が動きますし、顔の表情も豊かになりそうです。

 ただ現在のSLでもメッシュボディやBentoアイテムでそれは実現してきていますので、その世界で何を楽しむかということがどちらの仮想空間を選ぶかの理由になりそうです。VRがいまよりも一般的になればサンサールに人は流れていくことでしょう。わたし個人はサンサールの情報を聞くごとに「アメーバピグ」のリアル版になりそうな予感がしています。

 というのもSLと違ってサンサールではモノ作りのハードルが高く、ユーザーの誰もがクリエイターとして商品を作って販売できるとは思えないからです。一部のクリエイターユーザーが作った商品を買って、アバター同士でコミュニケーションする、それがサンサールの基本になるだろうと予想しています。

 クローズドベータ版に参加するには3DCGソフトMAYAユーザーであることが絶対条件になっていたこともその理由です。誰でも気軽にモノ作りができたSLよりもかなり高いハードル、いえ、すでにハードルというより棒高跳びのような域までサンサールはクオリティを上げているように思います。逆に言えば一般ユーザーは綺麗な環境を見ることができますし、精度の高いアイテムを購入することができるということでもあるのですけれど。これはやはりSLとは別物と考えた方がいいでしょう。

4:SL日本語版の10年

 2017年春「Second Lifeは失敗だった」というタイトルのネット記事がありました。要点は1SIMに入れるアバター数があまりにも少なすぎ、コミュニケーションするにしても不完全だったというものです。

 けれど失敗と言い切られた世界が10年続くでしょうか? たしかにSIMに入れるアバター数はSLの弱点には違いありません(最大で100アバター)。しかしそれだけが仮想空間の、SLの楽しみ方ではないというのも事実です(記事はそのあたりも理解した上で書かれていて、タイトルだけが過激に付けられていた感があります)。

 さまざまな点で10年の間にSLも進化してきました。SLが続く限りその進化は止まらないでしょう。SL自体の存在を知らないという人も多くなっている現在、まずは自分でSLの世界に入ってみることをオススメします。MMORPGなど、クエストや狩りの方が楽しいという方には向かないかもしれませんが、アバター同士での会話や、音楽やダンスといったものが楽しいと感じる人もいるでしょう。10年前やってみたけど…という人ならなおさらいまのSLを体験してほしいと思います。

(結城あや)