プラチナ世代で甲府ユース出身。クラブの「至宝」として期待されてきた堀米。ただ、ここまでの道のりは平たんではなかった。写真:サッカーダイジェスト

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[J1リーグ9節]神戸0-1甲府/4月30日/ノエスタ

 甲府に今季アウェー戦での初勝利をもたらしたのは、下部組織出身のテクニシャンだった。

 38分、敵陣左サイドでボールを受けた田中佑昌からのクロスに、堀米勇輝が頭で合わせたシュートがゴールへと吸い込まれる。前半終盤に奪ったこの虎の子の1点が、決勝点となったのだ。

 本人が「(ゴールの軌道は)見えていないです。とりあえず、当てることだけを考えて。(河本)明人君に『入ったよ』って言われて初めて分かりました」と振り返ったゴールは、記念すべきJ1初得点。2011年シーズンにJ1デビューしてから、約6年間待ち望んだゴールだった。

 ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。甲府U-15時代からその才能を高く評価され、92年生まれの「プラチナ世代」として、宇佐美貴史(アウクスブルク)や柴崎岳(テネリフェ)らとともに、09年のU-17ワールドカップに出場。飛躍への期待が膨らんだが、トップチーム昇格後はその期待に反して伸び悩んだ。

 12年シーズンは、J2で21試合・1得点の成績を残すも、翌年はJ1で出場機会を掴めず、シーズン途中で熊本への期限付き移籍を決断。13年シーズンは愛媛で武者修行し、実戦感覚を磨いた。それでも、満を持して甲府へ帰還した15年シーズンは12試合の出場に止まるなど、その才能が花開くことはなかった。

 その後一度は京都へ完全移籍したが、吉田達磨監督のラブコールに応え、今季再び古巣に舞い戻ると、開幕戦(対G大阪)を除いた7試合でスタメンに名を連ねてきた。前節のC大阪戦は「不甲斐なかった」(堀米)が、「とにかくボールに触ることを意識して、あとは全然楽しめていなかったので、楽しむことを考えた」この試合でようやく結果を手にした。

 技巧派の「至宝」と謳われるだけあって、ヘディングでのゴールは「想像していなかったです(笑)」と言う。それは本人だけでなく、堀米を知る者であればおそらく、誰もがそう感じたはずだろう。抜群の精度を誇る左足でのゴールをイメージしていたとすれば、なんとも意外な形だったが、ゴールを奪った事実に変わりはない。

 ただ、堀米はこうも語る。
「この後が肝心。ここからゴールを取り続けて『あいつ変わったな』って思われたい。次も大事だし、次の次も。明日の練習から大事だと思います。チャンスを逃したくない」

 吉田監督も「合格点とは言えませんけど、彼が自分のプレーを思い返すきっかけにはなった」と評したように、むしろ、真価が問われるのはここから先だろう。

 その点では、ミスを恐れてパスを受けることを拒んでしまったC大阪戦の出来を反省し、積極的にボールを要求してゴールへ向かった神戸戦のプレーは次へとつながるはずだ。

「もっとできたかなと思う部分もたくさんありますけど、それはやろうとしていたプレーをしたうえで出た反省。今日は楽しかったです。こういうのを自信にしていきたいし、今まで積み重ねてきたものをもっと出して、さらにJ1で活躍したいっていう想いが強くなりました」

 甲府の「至宝」が本格開花する瞬間は、もしかすると、すぐそこまで迫っているのかもしれない。

取材・文:橋本 啓(サッカーダイジェスト編集部)