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SaaS、PaaS、IaaSと全方位でクラウド戦略を進めるOracleは4月中旬、ERPの中でも会計にフォーカスした年次イベント「Modern Finance Experience 2017」を米ボストンで開催した。集まった1000人弱のCFO、経理・会計担当者を前に、同社のCEOのMark Hurd氏は、なぜこれからの経営にクラウドが必要なのかについて語った。

○コスト削減にセキュリティ、企業の課題解決に必要なクラウド

OracleのERPは、「Oracle E-Business」、それに買収したPeopleSoft、J.D.Edwardsの技術を統合したものだ。特徴は、単一のデータモデルを土台とした包括的なアプリケーションスイートという点。オンプレミスとクラウドで同じコードをベースとしており、容易に移行できる。

2011年に「Oracle Fusion Applications」としてオンプレミス版を発表、その後「ERP Cloud」としてクラウドサービスとして提供している。ERP Cloudは、会計(Financials)、プロジェクト管理(Project Portfolio Management)などのモジュールを持ち、SaaSではさらに、人事(「HCM Cloud」)、顧客管理(「Customer Experience」)も提供している。Oracleはオンプレミスの提供とサポートの継続を約束しながらも、積極的にクラウドをプッシュしている。

Hurd氏は同社がクラウドを積極的に推進する理由を必要性の面から説いた。世界経済の動向から成長国のGDPに大きな成長を望めない中、企業は業績の継続的な改善を迫られている。ITは企業の業務と経営を支える役割を果たしているが、企業のIT投資はここ数年横ばいにある。Gartnerは先に、2017年のIT支出予想を下方修正し、前年度比1.4%増としている。

さらに、「IT支出のうち8割近くが既存システムの安定稼働のために費やされている。CEOはデジタルトランスフォーメーションに取り組みたい、イノベーションを起こしたいと思っていても、その資金がない」と、Hurd氏は指摘する。つまり、モチベーションの問題ではなく、イノベーションが不可能な環境にあるわけだ。

こうした状況に輪をかけるのが、セキュリティだ。企業は、さまざまなセキュリティのリスクにさらされており、オンプレミスにある顧客情報、売り上げや財務に関する情報、最新の研究開発などの機密情報の流出を避けるためにセキュリティの対策に膨大な費用を投じなければならない。

そして今年の4月、企業が抱える潜在的な経営課題が露呈した――顧客のパワーだ。ユナイテッド航空によるオーバーブッキングの対応について、飛行機に乗り合わせた人の動画やツイートがあっという間に広まり、CEOは謝罪に追い込まれた。「デジタル技術により、顧客と企業は対等になった。顧客の要求は高く、企業はこれに対応しなければならない」とHurd氏は言う。

コスト削減やセキュリティ対策に加えて、さらには顧客のデジタル対応を迫られている、これが企業が置かれている厳しい現実だ。

○クラウドならバージョンアップもパッチ管理も手間いらず

インストール、設定・保守が不要なクラウドは、こうした企業が抱える課題の解決策となりうる。Oracleの社内では約3000人のプログラマーが製造、調達、会計などのアプリケーションの開発にあたっているという。つまり、Oracleのクラウドを利用することは、この3000人体制で運用されているITを利用できることになる。「仕事を移管できる」とHurd氏は形容する。また、オンプレミスと比べるとアプリケーションのリリースサイクルが早いため、クラウドの顧客は最新の機能をすぐに利用できることになる。

例えば、オンプレミスでカスタマイズをしている顧客の場合、最新版がリリースされてもすぐにはアップデートできない。"旧バージョンのカスタマイズを新しいバージョンの再カスタマイズ"にする必要があり、そのためのコストを強いられる。そのため、アップグレードを見送る決断をする顧客も少なくない。

「クラウドでは300、400もの新機能が4〜5ヶ月おきに登場している。新機能を提供するという点で、クラウドはこれまでとはまったく異なるアプローチとなる。イノベーションをより早く、より安価に得ることができる」と、Hurd氏はクラウドのメリットを強調する。カスタマイズについては、機能を追加する「拡張」を推奨した。拡張なら、(カスタマイズとは異なり)最新版を使うことができるからだ。

コストについても「TCOは20〜30%削減できる。ハードウェアのコスト、OSのコスト、データベースのコスト、ミドルウェアのコスト、アプリケーションのコスト、それをサポートするコスト、もしアプリケーションをカスタマイズしていたら、システムインテグレーターのコストもある。われわれ顧客の中には、クラウドに移行することで、50%のコスト削減を実現した企業もある」と、Hurd氏はクラウドのコストメリットをアピールした。

では、セキュリティはどうか。Oracleのクラウドは、攻撃を受けるとそのトラフィックをサンドボックスに送信して、攻撃を観察しているという。その後、パッチを作成してクラウドにパッチを当てる。「クラウドであれば、1台のコンピュータ、1種類のデータベースバージョンに対し、パッチを当てればよいので、作業は簡単だ」とHurd氏。

オンプレミスにパッチを適用するとなると、顧客にプログラムを送ることになるが、すべての顧客に行き渡るまでに1年以上を要することもあったという。クラウドなら、Oracleがパッチを適用するので、顧客はパッチ管理を行う必要はない。そのほか、同社のクラウドにあるデータはすべて暗号化されている。

「コスト、機能、イノベーション、セキュリティをすべて同時に満たすことができる。これがクラウドが急成長している理由だ」とHurd氏は述べた。

最後にHurd氏は、「われわれのクラウド戦略はこの5年変わっていない。この戦略を実現するために、さまざまな取り組みを行っている。Oracleは一貫して同じ見解を持っており、これが強みだ」と述べ、「Oracleは10年がかりでクラウドへの移行を進める。われわれはベストオブブリードのSaaSを標準技術状に構築しており、プラットフォームとインフラを利用して拡張性とスケールを得られる」と顧客に約束した。

今後、Oracleは2016年秋にERPに機械学習を取り込む計画を明らかにしており、今後より良い意思決定につながる機能や自動化を進めていくとした。

(末岡洋子)