衆議院議員 野田聖子氏

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■文句を言われても断固「やらない」

政治家は忙しい。国会議員ともなればなおさらだろう。

「私は1年365日働くことを前提にしています。仕事の柱は3本あり、現職の国会議員として、次の選挙の候補者として、そして母親としての仕事です。この3本柱をどううまく組み合わせるのか常に考えています」

こう語るのは野田聖子衆議院議員である。その言葉どおり、1週間のスケジュールは休みなしだ。原則、月〜金は東京、土日は地元選挙区の岐阜で活動する。24時間を最大限に活用するため、余計な仕事を整理するよう心がけている。その一つが取捨選択だという。

「国会議員というのは受け身の仕事です。役所からのレクチャーの依頼、支援者の方たちの陳情などで、その取捨選択がすごく重要です。お断りする率の高いものは、日にち指定の講演があります。私の予定は3年先まで決まっているものもありますので、あらためて調整していただける場合はお受けすることもあります」

陳情などの対応は、ほとんど秘書に任せているという。「秘書のほうが私より動けますから。私本人が対応しないと文句を言う人もいるけれど、私がやるより早く対応できるのでそのほうがいい」と野田さんはきっぱり言う。

こうして取捨選択をしながら1日のスケジュールを組み立てていくわけだが、その手法がユニークだ。予定は「夜」、つまり酒席から埋まっていく。「私は酒豪ですから、夜は原則断りません」と野田さんは笑うが、これも大事な仕事である。

「昼間は人と話が進まないんです。こう見えてシャイだから(笑)。夜、一杯飲んで、胸襟を開いて話をすると、昼間には意思疎通が図れない人や、初対面ではとっつきにくいと思った人でも、意外に話が進みます。このスタイルで20数年やってきて、これが成功の秘訣かなと思っています」

■「時間を長く取るとムダ話が多くなる」

とはいえ、ダラダラ飲んで時間をムダにするようなことはない。「1日1席主義」。時間も18〜21時の3時間以内と決めている。ひと晩に何席も掛け持ちする政治家も少なくないが、そうすると1席あたりの時間は30分ほどということもある。

「それでは相手に失礼だし、本音でじっくり話をすることはできないと思います」

21時で切り上げるのには理由がある。人生の3本柱の一つ、子育てのためだ。50歳で授かった一人息子(5歳)との時間を大切にしている。独身時代は2次会でカラオケに行き、午前様になることもたびたびだったが、「息子は夜の9時半〜10時に寝るので、いまはその時間までに必ず帰ることを自分自身に厳命しています」。

夜の会食が18時スタートとすると、17時半には事務所を出なければならない。したがって、17時半から朝の仕事開始時間までさかのぼる形で、アポイントメントを入れていく。それも15〜30分単位と小刻みに、すき間なく。野田さんは「レゴのブロックのように積んでいく感じです」と表現する。

15分というのは短い気もするが、「時間を長く取るとムダ話が多くなる」と理由を説明する。ここにも野田さん流の仕事の整理術が見てとれる。

取捨選択については、プライオリティーの重要性を指摘する。

「いまこの瞬間に一番大切な仕事は何かを決断し、それまで1位だった仕事を未練なく断ることも大事です。昔はそれができなくてグダグダになったけれども、いまは一点集中です」

先の自民党総裁選への挑戦(出馬断念)のときがそうだったと振り返る。

「あのときは、ちょうど後援会旅行が決まっていました。年1回、後援者の方々とふれ合い、意見交換ができる大切な機会で、時間をかけて企画され、私の年間の必須の仕事の一つになっています。総裁選への出馬準備がなければ、それがプライオリティー1位でしたが、潔く切りました。私は旅行に行けないので、ビデオレターをつくって届けました。大事な仕事が重なったときのリスクコントロールは上手になりました」

プライオリティーでいえば、自民党の各種委員会や部会も同様だ。かつて野田さんは多くの委員会や部会に出席していた。たいてい朝8時ごろから始まる。しかし、いまは人生の3本柱の一つ、子育てを優先する。「朝7時から8時は息子の食事等、母親としてのゴールデンタイムなので、部会には出ません」と言い切る。そのうえで次のように説明する。

「これには問題提起の意味もあります。特に女性の活躍推進の部会を朝8時にやるのはどういうことかと。女性の働きやすさを考えていると言いながら、ぜんぜん働きにくいじゃないかと。だからあえて出ません。私が心がけていることは、女性の活躍とか、女性の活用といったキャンペーンが行われている中、がんばるモデルではなく、誰でもできる働き方をしたいなと。国会議員は特に有給休暇もないし、産休も育休もない職場ですから、多くの女性に入ってもらうためには、ムリをしない働き方を自分で模索したいなと考えています。多少あつれきというか、男性からムッとされたとしても」

■予定を自分で決めれば後の変更よりも効率的

ところで、驚くのがこうした仕事のスケジュール管理のすべてを、野田さん自身が行っていることだ。一見、余計な仕事のように思えるスケジュール管理をなぜ秘書に任せないのか。

「なぜ全部自分で決めているのかというと、スケジュールの把握ができるからです。子育てとの両立もありますし、秘書もすべてを理解してくれているわけではないので。自分でやると手間ひまかかるでしょと言われますが、後で変更するよりも効率的です。自分で決めたスケジュールなので内容の把握もでき、精神的にも安定しますし、モチベーションも下がらない」

同じ例として、政策立案などに活用する新聞や雑誌の記事、データの切り抜きがある。これも秘書に任せず、野田さん本人が行っている。

「昔はラインマーカーを引いて、秘書に切ってもらっていましたが、自分でやったほうが頭の中に入るんです。いまは自宅から議員会館まで車で30分くらいなので、移動中に集中的に新聞や雑誌を読みながら、ハサミで切っています。それを袋に入れておいて、時間のあるときにノートに貼っています」

ベテラン女性議員として日夜奔走する野田さん。ちなみにどんなリフレッシュ法を取っているのかを尋ねると、朝の時間をとても大切にしているとのこと。毎朝5時半〜6時に起床し、まず風呂に入る。この約30分のバスタイムが「唯一の私だけの時間」。15分くらいを趣味の読書に充てる。湯船に浸かりながら、好きな小説を読む。そのあとはネットでニュースを見たり、メールチェックをしたりしながら、朝の1時間ほどを1人で過ごす。

この1人だけの時間に大きなリフレッシュ効果があるといい、仕事と育児の両立に奮闘する女性におすすめだと野田さんはアドバイスする。

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衆議院議員 野田聖子
1960年生まれ。83年上智大学卒業後、帝国ホテルに入社。93年衆議院議員初当選。郵政大臣、消費者行政推進担当大臣などを歴任。

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(田之上 信=文 小倉和徳=撮影)