年収100万円に転落した人たちの共通点

写真拡大

5年連続で上昇している日本人の平均年収は420万円(’16年国税庁統計)だが、非正規雇用に限れば170万円まで落ち込む。もはや珍しくない年収100万円生活者。限界の生活を余儀なくされる人々とは――

◆もはや他人事では済まされない年収100万円時代の生き方

 年収100万円と聞くと、家庭環境に問題があったり、低学歴ゆえとのイメージもあるが、長年ワーキングプアの取材を続けるルポライターの増田明利氏によれば、それは偏った先入観だという。

「もちろんそうした要因から貧困に陥るケースは珍しくありませんが、実際に取材した人には、大手百貨店や都銀に就職したものの、リストラや早期退職から再就職に失敗し、時給1000円のアルバイト暮らしに転落した人もいました。会社を辞めたときは、『自分はプロフェッショナル』だという自負があり、意気揚々としていたものの、不況で同業他社はベテランの中途採用には消極的。ハローワークに募集を出すような中小企業からは『あなたの専門性と人脈は、ウチの会社では何の役にも立たない』と一刀両断され、結局はそれまでのキャリアとは無縁の仕事を選択せざるを得ないのです」

 また、これらの人々には性格面でも共通点があるという。

「見えっ張りで、他人に高圧的な態度に出る。しかしキャリアを見れば2番手で、超一流に対してコンプレックスがあり、そのくせ会社に依存して威張り散らすタイプ。そこまで極端でないにしても、人望のない人はリストラや早期退職で標的にされやすいです」

 さらにこうしたタイプに加えて、近年は会社に従順な“社畜系”も転落予備軍だと増田氏は言う。

「ブラックな職場でも『仕事があるだけまし』と満足している人は言うに及ばず、義務感や責任感が強く、『自分がいないと会社が回らない』と思っている人も危ない。会社への忠誠心が高い人は、経営者からすれば搾取しやすい存在。会社のために無理を続けて体を壊しても、それを考慮して働けない人間を雇い続けてくれるほど、経営者は甘くありません」

 こうしたケースが多くの企業で常態化し、低賃金かつ激務にさらされる「ハードワーキングプア」が急増中だと社会福祉士の藤田孝典氏も警告する。

「グローバル経済下で株主や内部留保に資本が回る一方で、人件費や福利厚生は削られるばかりです。かつては福利厚生を含めて年収500万円で雇われていた人々が、今や福利厚生なしの年収200万円も珍しくはありません」

 こうした状況が劇的に改善される見込みはなく、だからこそ個人の意識改革が重要だという。

「まずは周囲と賃金を比較して、自分の待遇を客観視すること。ブラック職場の場合、多忙すぎるので感覚がマヒしてしまうことも多いです。また外部でもいいので労働組合に加入する手も。組合は職場がブラック化したときの保険になります。普段からの人間付き合いも重要です。孤立は何より生きる気力を奪い、転落の大きな要因となります。また少しでも余裕があれば、今の仕事に関連する資格を取り、キャリアアップを図る。そして政治に興味を持ち、選挙に行くこと。投票の重要性はもちろん、候補者を吟味する過程で社会保障の知識も身につくはず」

 年収100万円時代がすぐそこまで迫っている。その現実を他人事とせず、貧困のスパイラルに備えるのは必要不可欠なのだ。

<年収100万円に陥らないための5つの自己防衛策>

1.周囲と給与を比較する
2.政治に関心を持つ
3.労組に入る
4.資格を取る
5.人との繋がりを持つ努力をする

【増田明利氏】
ルポライター。20年以上にわたり低所得者、ワーキングプアを精力的に取材。ブラック職場への潜入取材などもこなす。著著に『貧困のハローワーク』ほか

【藤田孝典氏】
社会福祉士。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学准教授。貧困、ブラック企業問題に取り組む。近著に『続・下流老人 一億総疲弊社会の到来』

取材・文・撮影/高島昌俊 福田 悠 古澤誠一郎 宮下浩純 撮影/岡戸雅樹 岡村隆広
― 密着ルポ[年収100万円生活]の恐怖 ―