創業家が経営陣のストッパーに

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 安倍晋三首相の夫人・昭恵氏の実家、森永製菓創業家が兄弟会社である森永乳業との合併問題に揺れている。

 創業家の3代目で昭恵氏の叔父の森永剛太・森永製菓会長はライバルの明治がいち早く製菓と乳業を経営統合して規模拡大に走ったことから、森永でも製菓と乳業を合併させる「大森永」構想の旗を振ってきた。2月に「合併を検討」の一報が流れると、両社の株価はハネ上がった。

 ところが、わずか1か月後の3月30日、両社は「経営統合に向けた検討を終了する」と合併断念を発表。「経営陣が消極的だった」と見られているが「剛太氏だけはまだあきらめていない」(森永製菓関係者)。

 経済ジャーナリストの福田俊之氏は会社の重大な岐路にあたって創業家が経営チェックの機能を果たし始めたことに注目する。昨今話題となっているのが、出光石油と昭和シェル石油の合併について、「社風が違い過ぎる」と出光の創業家が声をあげ、合併は暗礁に乗り上げている。

「創業者一族は愛社精神が非常に強い。先祖が作った会社は損得なしに守りたいと考える。出光の創業者一族はそれまで経営に口出ししていなかった。それが経営陣が企業風土が違う昭和シェルを経営統合に選んだことから、“経営統合の相手が違う”と声をあげたわけです。

 森永の場合、もともと乳業は製菓から分かれて設立された経緯があり、創業家は競争に生き残るには規模拡大しかないと合併に走ろうとした。いずれも、会社の先行きに危機を感じて行動を起こした点は同じ。物言わなかった創業家が、経営陣にはっきり示すようになってきた」

 経営陣のストッパーとして「NOと言える創業家」が登場したことは、新しい現象である。

※週刊ポスト2017年5月5・12日号