アルバム『One』の世界観をより強く打ち出したツアーを完遂した堀込泰行(撮影=立脇卓)

 元キリンジで、シンガーソングライターの堀込泰行が4月16日に、東京・豊洲PITで、全国ツアー『HORIGOME,YASUYUKI LIVE TOUR 2017』のファイナル公演をおこなった。10月19日にリリースした、堀込泰行名義初のソロアルバム『One』を引っさげ、3月4日の京都・磔磔を皮切りに、全国9カ所をおこなうもの。ライブでは、12月12日に開催した、東京・渋谷TSUTAYA O-EASTのメンバーに加え、コーラス&パーカッションとして、ヒックスヴィルで、ましまろの真城めぐみが参加。アルバムの世界観をより強く打ち出したものとなった。この日は『One』の楽曲を中心に、キリンジ時代の「エイリアンズ」や未発表曲「ファイヤーバード」などアンコール含め全23曲を届け、大盛況のなか幕を閉じた。

新たな表情を見せた楽曲たち

堀込泰行(撮影=立脇卓)

 ジャジーで怪しげな雰囲気を持つBGMが会場に流れる。これから始まるライブの世界観を促すように、高揚感を煽っていく。定刻を少々過ぎたところで暗転、アルバム『One』収録のオルタナティブなインストナンバーである「Buffalo」が流れるなか、堀込泰行とサポートメンバーがステージに登場した。演奏陣は鮮やかな赤いシャツで統一。

 12月におこなわれたO-EASTでのライブと同様に「Wah Wah Wah」でツアーファイナルの幕は開けた。12月と大きく違うのは、真城めぐみ(Cho/Per)が入ったことにより、美しいコーラスワークとタンバリンやシェイカーなどパーカッションでグルーヴに彩りを加えたことだろう。それに加え、全国9カ所をロードしてきたことにより、百戦錬磨のツアーメンバーたちによるバンドとしての一体感の増加だ。そこに乗る堀込の歌もまた、4カ月前とは違った表情を見せていた。

 煌びやかなブラスサウンドとともに紡いでいった「New Day」はAORやR&Bを感じさせ、シャンパンゴールドに輝くミラーボールの光に照らされ、穏やかな歌声を響かせた口ロロ(クチロロ)とのコラボレーションソング「バース・コーラス」。レイドバックしたサウンドは、堀込本人もこの曲が気に入っている様子が歌からも伝わってくる。そして、キリンジ時代の代表曲「エイリアンズ」をDUBバージョンで披露。堀込によるアコースティックギターの指弾きが、リズムの裏拍を強調、心地よいレゲエサウンドを届けた。オリジナルとはまた違う表情で、オーディエンスを楽しませていく。

 「馬の骨」名義のソロ1作目から懐かしいナンバー「PING & PONG」を披露。松江潤(Gt、Cho)の私物だという、楽器メーカーのローランドが1980年に発売したリズムマシンの名機、「TR-808」のリズムループが印象的に響いた。今となってはビンテージ機材とも言える、実機のサウンドを体感できた貴重な瞬間でもあった。

 MCでは「エイリアンズ」が最近、テレビCMで流れていることに、「親もホッとしているんじゃないかな。嬉しいことです」と、過去曲が現在も使用されている喜びを話した。ほっこりとした空気感を演出した「Shiny」では、堀込、真城、北山ゆう子(Dr、Cho)によるコーラスワークがサビに広がりを与えた。軽快なリズムが体を揺らす「カメレオンガール」とキャッチーな楽曲で展開。

 2度目のMCでメンバーを紹介。真城の衣装について堀込が言及。演奏陣は赤で統一したが、堀込と真城は赤い衣装ではなく、ベルトやネイルで差し色に赤を使用したと話し、堀込は真城のネイルに赤が使われていることに「僕は見逃しませんよ」と自身の観察力にほくそ笑んだが、真城は「ツアー中、ずっと赤でしたよ」と突っ込んだ。堀込本人はというと、シャツをめくり、赤いベルトをオーディエンスに見せつけ、しっかりと赤が入っていることを報告。

 ここからは徐々に世界観を変え、伊藤隆博(Key、Cho)によるオルガンの音色がアクセントとなった「Round and Round」、堀込のアコギのストロークが心地よい未発表曲「ファイヤーバード」、そして、マイナーコード感が聴くものを異世界へと導いた「クモと蝶」、キリンジ時代のバラードナンバー「サイレンの歌」。エンディングの重厚なコーラスが豊洲PITを包み込んでいくようだった。

ラストはパーティーチューン「銀砂子のピンボール」

堀込泰行と松江潤(撮影=立脇卓)

 イントロでの北山の躍動感あふれる8ビートが響き渡り「さよならテディベア」へ。ちょっぴり切なさもあり、爽やかさもあるバランス感が絶妙な曲調で紡ぐ。そして、久々に披露する曲だという「ポップコーン」と先ほどのセクションの重さから、抜け出すよう。トンネルを抜けたかのような感覚を与えていた。アウトロの堀込のギターソロは松江と寄り添いながら、カラッとしたサウンドで聴かせた。MCでは「さよならテディベア」や「ポップコーン」のような曲調を集めたアルバムをリリースしたいという展望を語った。

 後半のラストスパートは、北山と沖山優司(Ba、Cho)によるリズム隊のグルーヴが、グイグイと楽曲を引っ張っていくキラッとしたポップスナンバー「最後の週末」や、優しいサウンドで感情を揺さぶる「僕らのかたち」。馬の骨時代の「季節の最後に」を届けた。オーディエンスもリズムに合わせクラップ。会場とステージの一体感の上で、伸びやかにスキャットする堀込の歌声が会場に響き渡り、本編を終了した。

 青く照らされるステージ。アンコールに応え、再びステージに堀込とバンドメンバー。堀込と真城はツアーグッズのスウェットで登場。堀込が「ペアルックですね」と話すと真城は「人生最後のペアルックだと思います」と話し、会場の笑いを誘った。アンコール1曲目は「Waltz」。抑揚をつけたダイナミックな演奏が、メロディを後押ししていく。シンセサイザーの音色が印象的な「ブルーバード」は、そのサウンドから情景見えるようだ。エンディングでの心を解放していくような上昇感は高揚感を与えてくれる。

 ラストはキリンジ時代のナンバーから、パーティーチューン「銀砂子のピンボール」を披露。12月公演でも魅せた、アウトロでの堀込と松江のギターソロの応酬は、ギタープレイする楽しさが存分に伝わってくる好演であった。『One』に収録された楽曲たちはツアーを重ねて、また新たな表情を見せ、ポップスとしての存在感が増していたように思えた。そして、ステージから放たれるサウンドに、身を委ねるオーディエンスの姿は、音楽を愛するアティチュードに溢れていた。

(取材=村上順一)

堀込泰行と松江潤(撮影=立脇卓) ライブのもよう(撮影=立脇卓) ライブのもよう(撮影=立脇卓) 堀込泰行(撮影=立脇卓) ライブのもよう(撮影=立脇卓)
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堀込泰行(撮影=立脇卓) 堀込泰行(撮影=立脇卓) 堀込泰行(撮影=立脇卓) ライブのもよう(撮影=立脇卓) 堀込泰行と沖山優司(撮影=立脇卓)

セットリスト

『HORIGOME,YASUYUKI LIVE TOUR 2017』

4月16日 東京・ 豊洲PIT

Tour members : Vo/Gt 堀込泰行 ・Ba / Cho 沖山優司・Key/Cho 伊藤隆博・Dr/Cho 北山ゆう子・Gt /Cho 松江潤・Cho/Per 真城めぐみ

SE: Buffalo

01.Wah Wah Wah
02.Jubilee
03.涙にあきたら
04.New Day
05.バース・コーラス(口ロロとのコラボソング)
06.エイリアンズ(DUB Ver.)
07.PING & PONG
08.Shiny
09.カメレオンガール
10.Round and Round
11.ファイヤーバード(アルバム未収曲)
12.クモと蝶
13.サイレンの歌
14.さよならテディベア
15.ポップコーン
16.クレイジー・サマー
17.最後の週末
18.ブランニュー・ソング
19.僕らのかたち
20.季節の最後に

ENCORE

EN1.Waltz
EN2.ブルーバード
EN3.銀砂子のピンボール