リーグ戦初ゴールはならなかった小川航だが、2点ビハインドの苦しい流れを変え、チームに勝点1を呼び込んだ。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 怪我のために、今季リーグ戦で初めて中村俊輔が欠場。開始6分にはボランチの山本康裕が負傷退場するアクシデントに見舞われるなか、磐田は立て続けにゴールを割られ早々に2失点を喫してしまう。
 
「立ち上がりが試合のポイントだったが、そこで2点ビハインドという苦しい状況になったのは、自分たちのセカンドボールをモノにするための球際での戦いやボールアプローチの甘さがあったから。前に向く選手、顔を出す選手が少なく攻撃の形もできなかった」と名波浩監督は振り返った。
 
 2列目の松浦拓弥は「俊(輔)さんはタメをつくれるし、ボールを落ち着かせることができる場所。でも相手のロングボールの競り合いのあとのボールが拾えず、拾っても落ち着かせられなくて、その部分で俊さんがいる時との違いが出てしまったかなと思う」と序盤を振り返った。
 
 やや集中を欠き、相手の圧力に押されて攻守のアクションも物足りなかった磐田を変えたのが、FW小川航基の投入だった。
 
 名波監督は迅速に手を打った。
 
 2列目の松本昌也に代えて、26日のルヴァンカップ・FC東京戦でハットトリックを達成して勢いづく若きFWがピッチに飛び出したのは39分。川又と2トップを組むと、そこから小川航の逆転への意欲に溢れたアクション、ゴールに迫る姿勢が、チームを活性化させ、後半の反撃に結びついた。
 
「前半の戦いはジュビロらしくなかった。流れを変えなければいけなかったし、プレーでチームを鼓舞しようと、誰よりも強い気持ちでピッチに入った。相手の背後やスペースへの動き出しが大事だと思ったので、自分が動くから(通るかどうか)五分五分のボールでも出してくれと、声をかけた」と小川航は振り返る。
 
 初めて2トップを組んだ川又との連係も、指揮官が高評価を与える出来だった。
 
「ふたりの流動性が良かった。並んだり近すぎることが少なく、相手の3バックを広げたり下げさせたりできたから、駿(川辺)や松浦が出て行くスペースができた。宮澤や、最もやっかいだった兵藤が守備に追われる時間が増え、我々が“押せ押せ”になった大きな理由だった」と名波監督。
 
 松浦も変化を実感していた。
「航基が身体を張って自陣からのボールを味方側に落としてくれたのでセカンドを拾えたし、それを予測して周りが動き出せた。スペースがあるので前向きになれた」
 
 ワンタッチでリズムを作る効果的なポストプレーや前への推進力を生み出すプレーだけではない。相手のカウンター時には、小川航がボールホルダーやドリブルで持ち上がろうとする選手を後方から猛然と追い、その起点を潰した。
 2点を返し、さらに逆転のチャンスを得たのは84分。後方からのパスを受けた小川航が前を向き松浦に出すと、ペナルティエリア右のスペースへと走り込む。川又からのラストパスを受け、右足を振り抜いたシュートは惜しくもバーを叩いた。
 
「FWの仕事はゴール。長い時間チャンスをもらったのに、本当に悔しい。自分の得意な形だったのに決められないのは、まだまだ甘い。試合前に(ホワイトボードに)リラックスと書いてあるのを見たのにそれを意識できなかったのは、不甲斐ない。1対1でも冷静に決められるのが一流のFW。まだまだ二流だし、カップ戦ではなく、リーグ戦で得点を決めて初めて本物のFWとしての歩みが始まると思う」
 
 昨季磐田に加入してから練習後、名波監督と居残り練習を積み、“待つ”FWから、巧みに動き出してパスを引き出すFW、相手DFにとって”怖い”FWへ進化しつつある。守備の貢献度も高い。U-20代表でもルヴァンカップでも結果を出しているが、しかし、小川航に満足感は微塵もない。
 
 逆転劇こそならなかったものの、次世代エース候補のパフォーマンスには、確かな進化と、さらなる進化への貪欲さがはっきりと見えた。