ヤマト運輸の配達員(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

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 またまた、業務で知り得た個人情報を悪用してナンパするという悪質な事案が発生した。「クロネコヤマトの宅急便」で知られるヤマト運輸の男性配達員が、伝票上の携帯電話番号を使って客の女性にアプローチした、とツイッターで暴露されて炎上している。

 ヤマトの広報戦略部は、筆者の取材に事実関係を認め、「確実にやってはいけないことで申し訳ない」とあらためて謝罪した。同時に、配達員は委託会社を通じた業務請負関係で直接的な雇用ではないが、問題が発覚した4月13日に契約を解除したことを明らかにした。

 かねてより、同社は個人情報保護や法令遵守の観点から、社員や委託会社に対する教育を徹底してきたが、今回の事案発生を受けて、今後はあらためて徹底していく方針だ。具体的な内容は、これから発表するという。

 インターネットショッピングの急増などもあり、物流業界の現場は過酷な業務内容を強いられている。「そういった事情が今回の事案を招いたのでは」と質問すると、同社広報戦略部は「通販業界が成長することは一定程度予想していたが、現状は我々の想像をはるかに超えた」と吐露した。

「もともと弊社は個人宅配からスタートしましたが、当時から再配達のサービスはありました。お客様とは距離の近い関係で『大将、元気かい』というお声がけもありましたが、お客様のライフスタイルが多様化し、それに合わせていく過程で、お客様の要望にお応えできなくなっていることが多くなってきています。今後、時間指定や再配達に対応できなくなるのでは、という懸念があります」(ヤマト広報戦略部)

 同社広報戦略部は、今回の事案によって「以前より大きな課題である働き方改革に、業界として本腰を入れなければならない」と決意表明。また、「配達員の長時間労働を改善し、昼食時間の確保のため、お昼の時間指定の廃止などを行っていますが、さらに通販会社との話し合いで、総労働時間を調整するような仕組みをつくります。働いている時間を見える化し、残業代も適切に支払います」とも語っており、配達員をはじめとする社員の処遇改善による質の向上を目指す。

 一方で、「働き方改革に関しては、小手先の動きで改善できるものではない」(同)と危機感をあらわにしており、「やりがい以前に、配達員や社員が『自分はここで働いていいのか』と疑問視するような職場環境であれば、それは変えていかなければなりません。従業員および請負配達員全体の働き方改革により、全体の質を向上させ、法令遵守はもとより個人情報悪用の事案をなくしていきます」(同)との方針だ。

●「ヤマトの人です! 良かったらLINEしませんか?」

 さて、今回の事案だが、ツイッター投稿者によると、アマゾンで買った商品を届けに来た配達員から、「さっき11時ごろ荷物渡しに行ったヤマトの人です! 良かったらLINEしませんか?」というショートメールが携帯電話に届いたことから始まった。

 LINEに「追加しました」とメッセージを送ると、配達員はすぐに「ありがと」「いきなりごめんねー」と悪びれることなく返信。プロフィール写真には、顔写真を使っていた。投稿者が「どこで電話番号知ったのですか?」と聞くと、配達員は「伝票に書いてあるんだよw 破損とか確認とかで電話するときもあるからさ」と答え、投稿者が「(業務で知り得た個人情報を)私的な目的で利用したわけですね?」と詰問、配達員は「すいません」とあっさりと認めた。

 しかし、「謝って許されると思っていますか?」「今すぐ上司の方を出してください」とさらに問い詰めると、配達員からの返信は途絶えた。また、配達員は荷物を受け取った女性に「今日はいるんだね〜。いつもは昼間いないん?」などと話しかけていたようで、投稿者は地元の警察に通報。警察から配達員に対してストーカー行為の警告文が出されたという。また、投稿者はヤマト側と話し合い、配達員に対して法的措置も検討しているという。

●セブン店員や美容師も個人情報を悪用

 過去にも、個人情報を悪用してソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でメッセージを送るなどのナンパは数多く発生している。

 2016年には、セブン-イレブンの男性店員が「彼氏とかいなくて迷惑で無ければLINEしませんか?」「ナナコカード進めた従業員です笑」(※いずれも原文ママ)というメッセージをフェイスブックで客の女性に送信したことが明らかになった。nanacoカードを登録する際の申請用紙に書かれた女性の氏名をフェイスブックで検索してメッセージを送ったという。

 14年には、茨城県内の美容室の男性店長が“一目惚れ”した女性客に対し、女性客が予約に使った「ホットペッパービューティー」を介して個人情報を入手し、LINEで連絡する事案が発生した。驚いた女性は、LINE上のやりとりをネット上で公開、すぐに店名や氏名などが特定された。

 しかし、これらは氷山の一角だろう。人手不足が叫ばれる昨今、個人情報の取り扱いを含めたコンプライアンスがおざなりになっている感は否めない。また、従業員の質低下が今回のような事案発生を招いている可能性もある以上、あらためて教育の徹底が求められる。

 ヤマト広報戦略部は「改革は小手先だけでは変わらない」と語ったが、同社に限らず、働き方改革による社員の処遇改善や質の向上、法令遵守、個人情報の悪用防止などのコンプライアンス遵守と、それを徹底する覚悟が求められている。
(文=長井雄一朗/ライター)