「コーヒー、タバコ、緑茶が遺伝子を変えてしまう!?」――今話題の遺伝子のトピック「エピジェネティクス」が明らかにした驚きの事実。「遺伝学者×医師」シャロン・モアレムによる極上のノンフィクション『遺伝子は、変えられる。』から、最新遺伝学でわかった「とっておきの食事法」について紹介しよう。

コーヒー、タバコ、緑茶で
「遺伝子スイッチ」はどのように切り替わるのか

 ぼくらの人生は、遺伝子だけ、あるいは環境だけ、といった隔絶された状況で、1個の遺伝子だけによって機能しているわけではないことが、明らかになってきている。ゲノムは、ぼくらの行動や食べるものに常に反応しつづける。トヨタやアップルがJIT(ジャスト・イン・タイム方式)の生産体制を採用しているように、遺伝子も常にオンやオフに切り替えられている。そして、これは遺伝子発現を通して行われる。遺伝子発現とは、言ってみれば、遺伝子が何らかの要因によって誘導されて、ある「製品」をより多く、またはより少なく作るようになることだ。

 人々の暮らしが、興味深い方法で遺伝子に影響を与える例は、コーヒーを飲む喫煙者に見ることができる。あなたは、タバコを吸う人は、なぜあれほど大量のコーヒーを問題なく飲むことができるのだろう、と不思議に思ったことはないだろうか。

 その答えは、遺伝子発現に関係がある。

 ぼくらの身体は、さまざまな毒を分解するのに、同じCYP1A2遺伝子を使っている。タバコにはさまざまな有害成分が含まれているため、遺伝子に行動を起こさせる、とてもうるさい警戒警報を鳴り響かせる。それを考えれば、喫煙がCYP1A2遺伝子を誘導する(つまりオンにする)という事実は意外なことではないだろう。この遺伝子がオンになればなるほど、身体はコーヒーのカフェインを分解しやすくなる。とは言っても、誤解しないでほしい。ぼくは何も、コーヒーをたくさん飲んでも夜眠れるようにするために、タバコを吸いはじめなさい、と言っているわけではない。ぼくが言いたいのは、喫煙によって、身体がカフェインを分解する方法が変わり、遺伝子的にカフェイン代謝がゆっくりだった人も、代謝の速い人に変わってしまう、ということだ。

 ともかく、もしコーヒーがあなたの遺伝子構造になじまないとしたら、緑茶を楽しめばいい。けれども、腰を下ろして「センチャ」や「マッチャ」を楽しむ前に、ちょっと思い出してほしい。ぼくらがすることは、すべて、遺伝子に何らかの影響を与えるということを。

 緑茶の場合は、ある種のがんを防ぐ可能性が示唆されている。最近、「エピガロカテキン−3−ガラート」と呼ばれる、緑茶に含まれる強力な化学物質を乳がんの細胞に投与した研究者たちが、ふたつの重要な結果を手にした。乳がん細胞がアポトーシス(細胞死)と呼ばれる細胞のプロセスによって自滅しはじめ、自滅しなかった乳がん細胞も成長速度が鈍くなっていたのである。いまいましいがん細胞に対する新たな治療法を探しているなら、こうした反応こそ、まさに望んでいるものと言えるだろう。

 がん細胞がどのようにしてふるまいを変えるように促されたのかが判明したとき、エピガロカテキン−3−ガラートは、ポジティブなエピジェネティック変化――DNAをオンまたはオフにすることによって遺伝子発現の調節を助ける変化――を促すことができるという事実が明らかになった。これらは、細胞が身体の「集産主義的バイオロジカル・マニフェスト」に従うことを拒否したときに、それらをコントロールするうえで欠かせない重要なステップだ。なぜなら、細胞が協力して作業することをやめ、悪質な狼藉に打って出ると、がんが発生するからだ。

 ぼくらが食べたり、飲んだり、果ては吸ったりするものと遺伝子の相互作用に関する研究が進むにつれ、こうした相互作用が健康の維持にいかに重要であるかは、ますます明らかになってきている。

 そして、同じゲノムを受け継ぎ、似たような食生活を送っている一卵性双生児の研究から、栄養学のパズルにおける重要な未解明部分が判明しつつある。

 だからこそ、ここであなたに、ご自分の腸内微生物叢(いわゆる腸内フローラ)について知ってもらいたいのだ。

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