注目の新星監督ホナス・キュアロン
 - (C)2016 STX Financing, LLC. All Rights Reserved.

写真拡大

 ガエル・ガルシア・ベルナル主演、『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロン監督が製作を務めたサバイバルスリラー『ノー・エスケープ 自由への国境』で、長編デビューを果たした息子のホナス・キュアロン監督が電話インタビューに応じ、父アルフォンソやガエルとの仕事について語った。

 第86回アカデミー賞で最多7部門を受賞した映画『ゼロ・グラビティ』で監督を務めた父アルフォンソと共に脚本を手掛けたホナス監督。実は『ノー・エスケープ 自由への国境』の初期の脚本を読んだアルフォンソがそのコンセプトに魅了され、作り上げたのが『ゼロ・グラビティ』だったという。つまり、『ゼロ・グラビティ』の原点ともいえる作品なのだ。

 世界的大ヒットとなった『ゼロ・グラビティ』に携わったことで「劇中の緊張感をどのようにして維持していくのかということ」を学んだというホナス監督。アカデミー賞受賞監督との共作という偉大な経験を経て、満を持して挑んだ監督デビュー作では、プロデューサーとしての父と現場を共にしたが、「(父は)映画は映画監督のものだということがわかっているから、最終的には監督の判断に委ねるとしたうえで、忌憚(きたん)のない意見を言ってくれる。と同時にリスペクトも忘れていない。とても心強いサポートだったよ」と親子であると同時に仕事仲間としてお互いを尊重する確固たる信頼関係をうかがわせる。

 また、主役のモイセスを演じたガエルは、本作ではエグゼクティブ・プロデューサーを兼任しているが、出稼ぎ労働のために命懸けで国境を越えようとする不法移民たちの実態に迫ったドキュメンタリー映画『ダヤニ・クリスタルの謎』(2013)でナビゲーター兼プロデューサーを務めるなど、アメリカ・メキシコ間における移民問題に精通しており、ホナス監督もモイセスは彼しかいないと心を決めていたそうだ。「実際、誰よりもモイセスのキャラクターを理解してくれていたのはガエルだったよ。移民の複雑な問題をきちんと描けるように脚本を前へ前へと押し進めてくれたのも彼だったし、監督するうえでも大きな力になってくれたんだ」と役者としてはもちろん、サポート役としての彼の仕事ぶりも素晴らしかったという。

 さらに「今日のアメリカ・メキシコ間の移住問題では、アメリカで生活を築いた人たちが国外退去させられている状況がよくみられているんだけど、ガエルの提案でモイセスの設定をそう変更したんだ。今のアメリカの移民政策が実に恣意的で危険だっていうことを描いている一つの象徴的な設定なんだよ」とホナス監督。タイムリーな問題をいかにリアルに描くかという点においても共にこだわりぬいて作り上げていったことがよくわかる。

 現在は再びガエルとタッグを組んだ新作の準備をしており、なんと怪傑ゾロにインスパイアされた物語だそうだが、ここにも本作との意外な共通点があるという。「『ノー・エスケープ 自由への国境』は移民問題をテーマに描きたいとしつつも、そういう問題意識を持った観客だけでなく、政治や移民の問題に興味のない人たちにも訴えかけるような映画にしたいと思っていたんだ。政治的なメッセージをホラーやアクションといったジャンルのマスクをかぶりながら描いている1970年代のアメリカ映画のようにね。ゾロも一見“アドベンチャーもの”でありながら、社会的メッセージがすごくある。そういった作品をまたやりたいと思っていたんだ」。

 しかし、オファーを受けた最大の理由はやはりガエルとまた仕事がしたかったからなのだとか。「いろんな名監督と組んで仕事をしてきているのに、僕のことを監督としてとても信頼して仕事をしてくれた。本作での彼との仕事はとても楽しくて、真なるコラボレーションだったよ」とすっかり魅了された様子。新星監督とメキシコを代表するスター俳優、新たな名コンビがまた誕生したかもしれない。(編集部・浅野麗)

映画『ノー・エスケープ 自由への国境』は5月5日よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開