南インドに生息するカエルの分泌物から、インフルエンザウイルスを破壊する成分が見つかりました。将来的にワクチンや治療薬へ応用されることが期待されます。

An Amphibian Host Defense Peptide Is Virucidal for Human H1 Hemagglutinin-Bearing Influenza Viruses: Immunity

http://www.cell.com/immunity/abstract/S1074-7613(17)30128-0

South Indian frog oozes molecule that inexplicably decimates flu viruses | Ars Technica

https://arstechnica.com/science/2017/04/south-indian-frog-oozes-molecule-that-inexplicably-decimates-flu-viruses/

カエルの粘液には生殖毒性を持つ化合物が含まれており、これが一部のインフルエンザウイルス粒子にくっつき、破壊することが免疫学関連の科学誌であるImmunity上で発表されました。

毎年定期的にやってくるインフルエンザの流行ですが、その種類は多く、たとえワクチンを接種していてもウイルスと一致しなければ感染を予防することはできません。また、薬剤耐性をもつ種類も増えており、多くの研究者たちが「新しい抗ウイルス薬の開発は急務である」と考えています。

アメリカ・エモリー大学の研究者が、抗菌剤分泌物を有することで知られる「Hydrophylax bahuvistara」という名称のカエルの粘液を調査しました。調査の結果、粘液中の4種類の成分がインフルエンザウイルスを破壊することが明らかになり、その内のひとつはヒト赤血球に対して無害であることが明らかになります。この成分はインドの武術・カラリパヤットで用いられるムチのような形状の剣「ウルミ」と似た形をしていることから、「ウルミン」と呼ばれています。ウルミンは強力かつ正確に作用し、他のウイルスや細胞には害を与えず、インフルエンザウイルスだけを破壊することができるそうです。人体に悪影響を与えないと考えられているため将来的なワクチンや治療薬への応用が期待されますが、現在のところこのペプチドがどのように働くのかは不明瞭な部分があるため、今後も研究調査を進める必要性があるとのことです。なお、海外ニュースメディアのArs Technicaは、「インフルエンザの予防接種の必要がなくなるかもしれない」としています。



ウルミンに関する実験の結果、この成分はマウスのインフルエンザにダメージを与えることができることが判明しました。ウルミンは、ウイルス粒子の表面から突き出たキャンディー型のタンパク質である血球凝集素(HA)を標的とすることでインフルエンザウイルスを壊します。なお、インフルエンザウイルスには18種類のHAがあるのですが、ウルミンは特にH1型の血球凝集素を標的とするので、H1型血球凝集素保有のA型インフルエンザウイルスを破壊します。

また、興味深いことに、ウルミンはウイルス粒子から伸びるHAの頭部ではなく、さらに内側にある茎部分をターゲットにするそうです。インフルエンザウイルスはHAの頭部は変化しやすいものの、茎部分は不変性が高く、ウルミンはここをターゲットとするので薬物耐性のあるA型インフルエンザウイルスに対しても有効とのこと。

以下の写真はインフルエンザウイルス粒子で、球形の表面から伸びている突起がHA。HAの先端部分のふくらみが「頭部」で、これを支える細い管部分が「茎」です。



By ben dalton

さらに、電子顕微鏡を用いることで、ウルミンがインフルエンザウイルスを爆発させることも確認されています。通常、HAと反応する成分は単にHAをブロックしてウイルスが細胞に侵入することを防ぐ役割を担うそうですが、ウルミンはウイルスを丸ごと破壊してしまうそうです。現在のところその理由は判明していませんが、「ウルミンがHAと結合したあと、粒子表面で静電気力を働かせてウイルス全体を破裂させているのでは?」という仮説を研究者たちは立てているそうです。

また、実際に実験用のマウスをインフルエンザウイルスの感染から守ることにも成功しており、ウルミンが世界で使用されるインフルエンザワクチンと同様に、血球凝集素を標的とする抗インフルエンザウイルス独特の特徴を有していることが確認されています。

なお、研究者たちはフォローアップ研究の必要性を説いています。