やめる道を選ぶか? やめない道を選ぶか? 前作から20年、かっこ悪い男のかっこいい映画『T2 トレインスポッティング』【最新シネマ批評】

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【絶賛公開中☆最新シネマ批評】
映画ライター斎藤香が見た最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、絶賛公開中の映画『T2 トレインスポッティング』。大ヒットした1996年公開の前作『トレインスポッティング』から、なんと20年を経ての続編公開です! 内容もまた、主要人物たちの20年後の物語になっています。

長い時をこえて公開された続編『T2 トレインスポッティング』、果たしておもしろいのでしょうか。前作のおさらいをしつつ、みていきましょう。

【前作『トレインスポッティング』のおさらい】

英国はスコットランド、エジンバラの街で暮らすマーク・レントン(ユアン・マクレガー)は、ドラッグ中毒。彼の幼い頃からの仲間もイカれた男ばかりで、しょっちゅうツルんで、ドラッグはもちろん、強盗も平然とやらかしていました。

そんな毎日に嫌気がさしたレントンはドラッグ絶ちを試みるものの、なかなかうまくいかず。盗みをして捕まり、執行猶予で釈放されたとたんにまたドラッグで病院送りに。

家族協力のもとで、幻覚に苦しみながらもやっとドラッグ絶ち成功! カタギの仕事に就き、人生がまともになった……はずだったのに、あの仲間たちがやってきて、仕事はクビ。ろくでもないシノギに手を染め、結果大金を手に。新しい人生を始めるべく、その金をひとり持ち逃げするのでした。

【新作『T2 トレインスポッティング』あらすじ】

あれから20年。レントンが故郷に帰って来ました。

かつての仲間はどうなったかというと、スパッド(ユエン・ブレムナー)は家族に愛想を尽かされ孤独な独り身。シック・ボーイことサイモン(ジョニー・リー・ミラー)は叔母から譲り受けたパブの経営者だけど、裏でカノジョに売春をさせて恐喝しながら荒稼ぎ。ベグビー(ロバート・カーライル)は殺人の罪で刑務所の中。

全員あの頃のまま、イケてない中年になっていました……。

20年ぶりの再会となったレントン、スパッド、サイモンの3人。最初はギクシャクするものの、すぐに意気投合。

しかし、刑務所の中にいる狂犬ベグビーは、レントンが金を持ち逃げしたことを許していません。そして彼は、姑息な手を使って刑務所を脱走するのです。

【イケてないし、反省もしていない不良オヤジたちの生き様】

ユアン・マクレガーの大出世作となった前作『トレインスポッティング』。ドラッグ中毒の若者たちが、ドン底まで落ちて這い上がり、成功をつかむ……なんてカタルシスは一切なし! 這い上がろうとするものの、また薬に頼るというしょーもなさがリアルなのです。

何しろ、舞台は閉塞感みちあふれるスコットランド。成功など夢見る気持ちになれない若者たちは、本能のおもむくままに快楽を求めるしか生きる道がなかったのです。

そして新作『T2 トレインスポッティング』で、久々に4人を見て驚きました。見た目は老けたけど、やることなすことそのまんまという、成長しない大人だったから。

唯一レントンはまともになりつつあったものの、この地に立つと“あの頃”に戻るのでしょうか。やっぱりツルんで悪さを開始してしまうのです。

でも自分を振り返ってみて、昔の自分と今の自分、変わりましたか? 年齢は重ねたけど中身は一緒という人、多いのではないでしょうか? よっぽどの衝撃的な経験がない限り、人はそんなに激変したりできないものです。

彼らだって一緒。荒っぽい行動には共感しかねるものの、レントンが前作と同じように、エジンバラの街を走り回る姿を見ていると「彼らは成長しない道を選んだのだ」と思いました。自分に嘘がつけないんですよ。

【恐るべき依存社会……みんな何かに依存している】

20年前のままのイカれた生活をしつつ、お店を開業するために、プレゼンで資金を集めようとするレントンとサイモン、サイモンのカノジョ。やり手ビジネスマンのような、ちょっと大人な行動をとったかと思ったら、脱走したベグビーがレントンの前に現れ、ここから ”殺すか殺されるか” という後半のハイライトに突入していくのです。

ドラッグに依存し、犯罪を繰り返し、生死の境で生きているレントンたち。でも、あるときレントンは熱弁を振るいます。

「フェイスブック、ツイッター、みんな何かの依存者じゃないか!」

スマホ依存、SNS依存……。「ドラッグよりマシじゃん」と思いますか? でも依存するという行為は一緒だし、SNSだって一線を超えたら自分をダメにしますからね。

つまり成功しているか、荒んでいるかではない。「みんな人としてどうなのよ?」ということを問いかけているのです。

レントンはどこか客観的な視点で物事を見ているから、「だったら、今の俺たち、これでいいじゃん」と思うのでしょう。「やめる道を選ぶか、やめない道を選ぶか」なんですね。

最初は「全員変わってないな〜」と思いながら見ていましたが、前作では無鉄砲でなりゆきで行動していた若者たちが、年を重ねて覚悟が見え始めたようです。それは彼らが、その人生を選んだからでしょう。

【トレスポの変わらぬ魅力は映像と音楽のミックス】

前作『トレインスポッティング』が注目をあびたポイントから外せないのが、モノクロの写真にオレンジのロゴ、という洗練されたデザインのポスター。映画のポスターとは思えない秀逸なデザインが話題でした。

またイギー・ポップの軽快な『Lust For Life』や、クライマックスを盛り上げるアンダーワールドの『Born Slippy(nuxx)』など名曲ぞろいのサウンドトラック、美術を含めた映像の美しさも、この作品の魅力を際立たせています。

そして今作『T2 トレインスポッティング』では、部屋の壁紙がいちいちオシャレなんですよ。

部屋は荒れ放題なんですけど、壁紙はステキ。そして光を効果的に使った映像もいいんですよね。しょーもないダメ男たちのドラマを美しく彩る演出はさすが、魅せ方をわかってらっしゃる!

ちなみに監督のダニー・ボイルは、2008年『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞監督賞を受賞した英国の名匠です。こんなかっこ悪い男たちのかっこいい映画を作っちゃって、演出の腕キレキレです。

【この男たちを受け止められるか!?】

女性が見ると「なんなのこの男たち!」と思うかもしれない。永遠の少年なんて美化された言葉はあるけど、『T2 トレインスポッティング』は、かなり汚れた永遠の少年です。

この男たちを受け止められるか否か、それはぜひ映画で。女子同士で、あーでもないこーでもないと感想を言い合うのも楽しいかもしれません。

ちなみに、できれば前作を観てから観た方が、よりいっそう楽しめると思いますよ。

『T2 トレインスポッティング』
(2017年4月8日より、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー)
監督:ダニー・ボイル
出演:ユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラー、ロバート・カーライル、ケリー・マクドナルドほか

参考リンク:Amazonビデオ『トレインスポッティング』
執筆=斎藤 香 (c)Pouch

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