サントリーでは創業家一族への「大政奉還」の動きも

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 このところ日本企業では創業家の存在が見直され、経営トップの座を創業家に“大政奉還”する企業が目立つ。

 鳥井信治郎が鳥井商店として開業、壽屋を経てサントリーと屋号を変えた国内飲料メーカートップ企業も、再び創業家から社長を迎える準備を整えつつある。

 サントリーでは2014年に「プロ経営者」の新浪剛史・ローソン前会長を招聘し、「初の非創業家社長」が誕生したが、創業家一族の鳥井信宏・副社長の社長就任はカウントダウンの段階だ。非上場のサントリーHDは一族の資産管理会社「寿不動産」が約9割の株を保有しているが、昨年3月に信宏氏が寿不動産社長に就任、正式に一族の盟主、会社のオーナーとなったからだ。

「そもそも新浪社長は中継ぎで、その次が信宏氏であることは、新浪体制になった時点で社員なら誰もが知っていることだった。スムーズに信宏体制に移行するために、社外からプロ経営者を招いたわけです」(ローソン関係者)

 竹中工務店も現在は非創業家の宮下正裕・社長だが、その次には創業家の竹中勇一郎・常務が控えている。1975年生まれの勇一郎氏は社長交代のとき30代だったため、「宮下社長は創業家のプリンスが経験を積むまでのワンポイントで社長になった」(同社社員)と見られている。

 創業家以外の社長が続いていたセコムでもいよいよ“大政奉還”に動き出した。昨年5月の取締役会で前田修司・会長と伊藤博・社長がそろって解任され、後任社長に中山泰男・常務が昇格した。

 中山氏も創業家出身ではないが、翌月の株主総会で創業者である飯田亮・最高顧問の娘婿、尾関一郎氏が取締役に抜擢され、「後継社長のレールが敷かれた」と見られている。経済ジャーナリストの福田俊之氏は言う。

「企業のリーダーは孤独ですが、創業家の場合、家という味方がある。信用できる家族をもとにした一族の安心感がある。そこも、今の不透明な時代に創業家が再び求心力を持ち得る理由でしょう。それに企業が継続性を考えるときに、創業家の方が正統性がありまとまりやすい。いわば社員の側が、象徴としての創業家を求めているのかもしれません」

※週刊ポスト2017年5月5・12日号