映画『ムーンライト』コラム(後編)、監督がこだわった音楽にはケンドリック・ラマーの影響も?!

写真拡大

 現在公開中の映画『ムーンライト』。映画の内容や映像美とともに高い評価を受けているオリジナル・サウンドトラックが、4月7日にリリースされた。劇中音楽の選曲には、バリー・ジェンキンス監督が受けた“ある人物”からのインスパイアと現代社会へのメッセ―ジが反映されている。
 
 『ムーンライト』の物語は、ピアノやストリングスを主体とした美しいスコア音楽に導かれて進行するが、その一方で、劇中に挿入されているR&Bやヒップホップの選曲も素晴らしい。自他ともに認める大の音楽マニアであるバリー・ジェンキンス監督は、多くのシーンで「特定の曲」を頭に思い描きながら脚本を執筆したとのこと。そのこだわりの選曲は、主人公・シャロンの“本当の自分探し”の物語に「今この瞬間、どうしても伝えたくてはいけないこと」という“同時代的”なエッジをもたらしている。

 映画『ムーンライト』は、1980年代のマイアミの貧しい黒人居住区のシーンで幕を開ける。そのオープニングで、物語全体の“イントロ”的に使われているボリス・ガーディナーの「エヴリ・ニガー・イズ・ア・スター(Every Nigger Is a Star)は、ガーディナー自らが主演した1973年の同名ブラックスプロイテーション映画の主題歌だった曲。ヒップホップ・ファンなら気づいた人も多いだろうが、実は、これは先日最新アルバム『DAMN.』をリリースし話題を呼んでいる、ケンドリック・ラマーの2015年の傑作アルバム『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』の1曲目「ウェズリーズ・セオリー」の始まり方とまったく同じ演出だ。
 
 もちろん、ただの偶然の一致ではない。かねてからラマーの大ファンだったジェンキンス監督は、彼のアルバムで初めてこの曲の存在を知り、<すべての黒人はスターだ>という歌詞のメッセージに深く共感。当初の脚本では予定に入れていなかったが、ポストプロダクションの段階で急遽、この曲の使用を決断したという。

 また、後半のハイライトでもある深夜のドライブのシーンでは、現代R&B界のモテ伊達男、ジデーナ(Jidenna)の「クラシック・マン(Classic Man)」が車のラジオから流れてくる。2015年に全米で大ヒットしたこの曲、原曲はノリノリのパーティ・チューンだが、ジェンキンス監督はあえて“チョップド・アンド・スクリュード”にリミックスされたバージョンを使用。その結果、すべての音が引き伸ばされて、まるで夢の中の時間を過ごしているような不思議なサウンドが生まれ、車中のふたりの揺れ動く感情と静かに溶け合っていく、素晴らしい名シーンが生まれた。

text:内瀬戸久司

◎Jidenna「Classic Man」(“チョップド・アンド・スクリュード”):
https://youtu.be/UcNE9HHfrWQ
◎Jidenna「Classic Man」(原曲):
https://youtu.be/nsiN0W15w0U

◎リリース情報
オリジナル・サウンドトラック 『ムーンライト』
Now On Sale
RBCP-3186 2,400円(tax out)
01. Every N****r Is a Star by Boris Gardner
02. Little's Theme
03. Ride Home
04. Vesperae Solennes de Confessore ? Laudate Dominum,K.339
05. The Middle of the World
06. The Spot
07. Interlude
08. Chiron's Theme
09. MetroRail Closing
10. Chiron's Theme Chopped & Screwed (Knock Down Stay Down)
11. You Don't Even Know
12. Don't Look at Me
13. Cell Therapy by Goodie Mob
14. Atlanta Ain't but So Big
15. Sweet Dreams
16. Chef's Special
17. Hello Stranger by Barbara Lewis
18. Black's Theme
19. Who Is You
20. End Credits Suite
21. The Culmination (Bonus Track)