日曜ドラマ「フランケンシュタインの恋」(日本テレビ 日よる10時30分〜)
脚本:大森寿美男 演出:狩山俊輔  4月23日初回視聴率11.2%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)

4月期のドラマはほぼでそろったところ、出来のいい作品が多く、ドラマ好きとしては嬉しい限り(その分たくさん観なきゃならなくて大変)。そこから1作選ぶとしたら、初回を観た時点で断然「フランケンシュタインの恋」である。

「Q10」「妖怪人間ベム」「泣くな、はらちゃん」「ど根性ガエル」など、異形のものと人間の共生を描き続けてきた河野裕英がプロデューサーで、朝ドラ「てるてる家族」の再放送で改めてその才能を再認識させ、大河ファンタジー「精霊の守り人」の脚本も書いている大森寿美男による、「フランケンシュタイン」を原作にしたストーリーは、120年間生きた怪物(綾野剛)と人間の女(二階堂ふみ)のラブストーリーだ。

初回視聴率は、11.2%は、前作「視覚探偵日暮旅人」の初回と一緒の好成績。


1話でノックアウトされた、綾野剛の“かわいい”を列挙


何がいいって、綾野剛がいい。この役は、朝ドラ「カーネーション」の周防さんを超えるのではないか。
「コウノドリ」もよかったが、医者の仕事の合間にピアニストをやっているときのいでたちに違和感があったのが惜しかった。「最高の離婚」もよかったが、浮気もの過ぎる役なのがやはり惜しかった。
もともと、一風変わった役が多い綾野だが、その変わり具合にどれだけ共感ポイントをつくれるかがテレビ的な成功を左右する。
その点、今回の、怪物(フランケンシュタイン、正確には、フランケンシュタイン博士につくられたとされる怪物)は成功している。
わりとあっさりした目鼻立ちが時として表情に乏しくなるところを逆手にとって“かわいさ”で勝負を賭けた。赤ん坊のように、まだ何もわからない無垢さ一点推しで迫る。それが最強だ。

一話の綾野剛の“かわいい”を挙げてみよう。
山の中でひとり暮らし、唯一の情報源ラジオの、好きな番組の主題歌「あなたとわたしの時間 天草に訊け」と歌うところ。かわいい!

はじめて入るお風呂にドキドキしながら「ざぶーん」と入ったあとに「ああ」と溶けていく顔。かわいい!

カレーライスやしめじを食べる。かわいい!

はじめてのふかふかの布団に埋もれる仕草。かわいい!

これは、二階堂ふみ(役名は津軽継実)でなくても、きゅんとしますよ。

異形感は、服を脱いだときのやったら硬そうな筋肉質な上半身と、そこここにある傷と、首の横のネジみたいなもので出している。
ネジが気分が高揚するとキノコになるところはユーモラスであったが、このキノコは、怪物(名前は、父親の名前から継実がとって“深志研”となる)の悲劇と深く関わってくるようだ。
それを匂わせる、初回のラストシーンは衝撃的だった。

映像もきれい、台詞もいい、音楽もいい



綾野剛のまわりに、ふわっふわと胞子が浮遊して、まるでナウシカの腐海のよう。ナウシカ+もののけ姫って感じで、さすが日本テレビである。

綾野剛が、山の中でピンチの二階堂ふみを救って抱き上げるシーンでは、遠くに街の光がにじみ、ラブストーリーの基本キラキラも忘れない。
だが「かわいい」と「キラキラ」だけの薄っぺらいドラマではなく、じつに深い思索に満ちているのを思わせるのは、二階堂ふみが、科学者(の卵)であること。大学で菌類の研究をしている“菌女”(すごいネーミング)なのだ。

「知らないことを知りたいです。知らないことを知らないままに死ぬのはやです」
と未知なるものに思いをはせる二階堂ふみ(継実)。
そして、彼女に協力するのは、柄本明扮する教授(鶴丸十四文)。
この人のセリフがまたしびれる。
「優れた話芸、優れた文芸は、個人的な事情にかかわらず、カラダにいい影響を与え得るかどうかだ。
たとえば、シェイクスピアやチェーホフの芝居を観れば、眠っていた遺伝子の力がオンになり細胞にいい影響を与え得るかどうかだ。
与えなければ、それは、演者や演出家に問題があると言えるのかどうか」

なにこれ、かっこ良すぎる。
そして大学院生で、朝ドラ「まれ」に続く噛ませ犬になりそうな予感いっぱいの柳楽優弥(役名:稲庭聖哉)が、「遺伝子にそんな演劇評論家のような働きがあるんでしょうか」とツッコむ。
なんて洒落た会話なんだろうか(勝手に名台詞の収蔵庫に保管決定しました!)

ほかにも、やたら名台詞を発する担当として、柳楽くんのお父さんで、大工の光石研(稲庭恵治郎)がいる。いい台詞たくさんあったけど、きりがないので、今回は「けんさんの中でも一番位の低いけんさんじゃないか」だけにとどめておきたい。
綾野剛が大好きなラジオの人・天草(新井浩文)の台詞も含蓄ある。

面白い台詞も、心に刺さる台詞もいろいろあるヒューマニズムあふれるお話になりそうだ。
綾野剛、二階堂ふみ、柳楽優弥、柄本明、光石研、新井浩文など、芝居の巧いひとが集まっているから、重厚。
エンディングの映像もいい。RADWIMPSの「棒人間」も。

怪物の造形と衣裳デザインは、二階堂ふみ主演の「蜜のあわれ」、綾野剛主演の「新宿スワンII」のほか、「信長協奏曲」や「3月のライオン」などでも活躍する才能あふれる澤田石和寛。綾野剛のパッチワークの衣裳がとてもいい。
音楽は、「妖怪人間ベム」でも、口笛吹いてるような哀愁ある音楽をつくっていたサキタハジメ。今回も、口笛きたー。
俳優もスタッフも粒ぞろいのこのドラマは絶対盛り上がる。
劇中ラジオ主題歌「あまくさソング」もはやくもフルバージョン公開して、万全の体制だ。

別途公開されている、大川原亮による、前日譚を描いたアニメーション「かいぶつが、生まれた日。」も、これもまたすてきにいい。
曲がフォーレの「パヴァーヌ」で、この曲を聞くと、同じくこの曲を使っていた蜷川幸雄演出の「近代能楽集〜卒塔婆小町」(作:三島由紀夫)を思い出す。この話も、99歳まで生きた老婆がと若い詩人が出会うと、80年前、老婆が若く美しかった頃にいつの間にか時間が戻り、若い詩人が汚く老いた女に恋をしてしまうという、やはり異形の悲しい恋のお話であった。

綾野剛と二階堂ふみはどうなるのか。
4月30日(日)、第2話放送!
(木俣冬)