最近は、感染症の中にあって、マイコプラズマ肺炎という病がよく話題にのぼる。症状は風邪と同じだが、くしゃみや鼻水は少なく、発症当初の、痰の出ない“から咳”が特徴だ。
 都内で呼吸器内科クリニックを営む大谷義夫院長は、こう言う。
 「感染経路は咳で移る飛沫感染ですが、体内に侵入した病原体が下気道(気道のうち喉頭よりも末梢の部分)で増殖すると、免疫が過剰に反応してしまい、炎症が起こると考えられています。感染から発症するまでの潜伏期間は1〜3週間ほどです」

 流行する場合は、学校などで集団感染する子供の発症が中心となるが、大人が感染すると子供より重症化しやすいという。
 「大人が感染すると、激しく咳が出て、夜も眠れないほどの気管支炎の状態になる場合があります。喘息を持つ人などは、引き続き気管支喘息が悪化、咳喘息になることもある。そこから肺炎を引き起こす割合は、最近のデータで全体の5〜6%。発症者の免疫反応が関係するため、受診が早ければ重症化しないということも言えません。中には、発症から3日で人工呼吸器が必要になる患者さんもいます。まれにですが、心筋炎や髄膜炎などを併発することもあり、命に関わるケースもあるのです」(同)

 厄介なのは、原因となるマイコプラズマ自体が、我々の周囲にいる普通の微生物であるという点だ。感染力は決して強いわけではないが、感染した人の免疫力に反応して発症するため、免疫力の高い、若くて元気な人でも症状が強く出るケースがある。
 「通常、症状の出方やX線画像などを見て、マイコプラズマ肺炎を予想させるいくつかの要因が重なったところで治療を始めます。基本は抗生物質の投与と安静で、1週間から10日程度で快方していく。マイコプラズマに罹った場合、菌を排除しようとしてマイコプラズマ抗体(MPHA)ができ、この抗体の推移でどの状態であるかの診断が可能です」(専門医)

 ただ実際には、診断時にすでに治っていることがほとんどだという。それでも、風邪と間違えて放置すれば重症化することもある上、会社や家庭内で感染を拡大する危険性もあったことを考えれば、早期の適切な処置がいかに大事なことかが分かる。
 「マイコプラズマは細菌の仲間ですが、細胞壁がないため、細胞壁を壊して菌を殺すタイプの抗菌薬は効きません。つまり、普通の肺炎などに使用するペニシリン系やセフェム系の抗菌薬が効かないことから、薬のチョイスが肝心になるということです」(同)

 ここで再度、マイコプラズマ肺炎に罹った際の症状を確認しておこう。
 ●鼻水や鼻づまり。
 ●喉の痛み。
 ●から咳から淡がからむ咳への移行。
 ●37℃〜39℃以上の熱。
 ●喘息がある場合はその悪化、ゼイゼイといった喘鳴。
 ●呼吸困難。

 咳にも様々な原因がある。甘く見ることなく、症状をしっかり確認しよう。