玄米にはヒミツの「夢の味」がある

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【美と若さの新常識 スリムボディーの近道 『舌』に注目】(NHKBSプレミアム)2017年4月20日放送

世界3大美女の1人、唐の楊貴妃は「美」のためにラクダ、ツバメ、スッポンを毎日食べた。しかし現在、「高級食」にこだわらなくても「美」と「若さ」は手に入る。

番組ではスリムボディーを手に入れる方法に「味覚」が重要である最新研究を次々に紹介した。「中毒」になり、肥満になる「危険な味」。その逆に、おいしく食べられ、しかも、やせさせてくれる「夢の味」があるという。

赤ちゃんが知っていた「おいしくやせる」夢の味

前編では、中毒になり肥満の原因になる「危険な味」を紹介した。ラーメンのつゆや焼肉の「こってり味」、つまり「脂肪の味」とスイーツなどの「糖分の味」だ。さて、おいしく食べて、しかもやせられる「夢の味」とは何か? MCのお笑いコンビ・フットボールアワーの後藤輝基が、笑っている赤ちゃんの写真を掲げながら言った。

「それは赤ちゃんが大好きな味、『うま味』です。母乳の中のタンパク質にはうま味成分のグルタミン酸がたっぷり含まれています。だから、赤ちゃんは母乳を飲みたがり、スクスク育つのです」

うま味成分はグルタミン酸(昆布、海藻類)のほかにイノシン酸(カツオ節)、グアニル酸(干しシイタケ、キノコ類)があるが、いずれも日本人が発見した。だから、「UMAMI(うまみ)」は国際語になっている。英国サセックス大学の研究チームがうま味成分にダイエット効果があることを明らかにした。彼らはこんな実験をしたのだ。学生たちを2つのグループに分け、食事前にうま味が入ったスープとうま味が入っていないスープをそれぞれ飲んでもらった。そして、45分後に満腹感を感じるまで、好きなだけランチを食べさせた。それぞれの摂取カロリーの平均を比較すると次のような結果だった。

(A)うま味入りスープ組:407.57キロカロリー。

(B)うま味なしスープ組:445.67キロカロリー。

うま味入りスープを飲んだグループは、より少ない食事量で満足感を味わったのだ。その差は約37キロカロリー。

MCの後藤「1食で、たった37キロカロリーかと思うでしょうが、『チリも積もれば山となる』です。うま味を料理につけ加える食生活を1年間続けると、なんと、消費カロリーの差は、体重52キロの女性が東京から名古屋までの270キロをジョギングしたのと同じになるのです!」
ゲストのフリーアナ・高橋真麻「スゴイ! もう明日から絶対カツオ節です」

「うま味」が腸内細菌を増やし、食の好みを変える。

なぜ、うま味成分をとると食欲を抑える効果があるのだろうか。メタボリックシンドローム(代謝異常症候群)のスペシャリスト、慶應義塾大学の伊藤裕教授がこう説明した。

「腸の粘液はうま味成分のグルタミン酸で作られています。腸にとってはそれだけ大事な成分なのです。また、グルタミン酸は腸内細菌のエサになりますから、腸内細菌がどんどん増える。腸内細菌が少ないと『もっと食べ物がほしい、もっとくれ』となるわけだから、うま味成分をとると満腹感を得られやすいのです。うま味がダイエットにいいことは、もはや常識です」

それ以外にも、うま味成分がいかに健康によいか、味覚研究の第一人者、東北大学の笹野高嗣教授がこう解説した。

「グルタミン酸は脳の神経伝達物質になりますから、とても重要です。イノシン酸とグアニル酸は核酸の1つで、細胞分裂を活発にしますから、体の成長や若返りに大きな影響を与えます」

ところで、前編では「脂肪」や「糖分」の「危険な味」が依存症になることを紹介した。うま味を生かすと、危険な味の依存から脱出できるのだ。番組では沖縄のピン芸人、大屋あゆみ(32)に1週間、うま味が入った食事をとり続けてもらう実験を行なった。大屋は149センチ、73キロの超ポッチャリ体型だが、6年前は45キロのモデル並みのスリム体型だった。28キロも激太りした原因は大の焼肉好き、つまり「脂肪の味」中毒だったからだ。

料理に昆布やカツオ節のダシをふんだんに使うことで人気のある沖縄第一ホテルの協力を得て、毎日3食、うま味のダシだけで調理した仕出し弁当を大屋に届けた。はたして「うま味」は大屋の食の好みを変えられるか?

ご飯は白米ではなく玄米。玄米は白米の2倍多くグルタミン酸を含んでいる。野菜などのおかずもしょうゆや塩を使わず、カツオ節、昆布などのダシ味だけ。最初はボソボソとまずそうに食べていた大屋も、3日、4日目に入ると、「うん、おいしい」とうなずくように。そして7日目。体重を測ると、2.1キロ減っていた!

大屋「1週間で2キロも減るなんて...(と涙ぐむ)。薄味が好きになり、野菜なんか食べる気がしなかったのに、おいしく食べられるようになりました」

玄米には美と健康のヒミツのパワーがあった

実は、うま味以外に大屋の食の好みを変化させたものに、玄米が一役買っている。味覚と脳の研究をしている琉球大学の益崎裕章教授がこう解説した。

「玄米に含まれているガンマオリザノールという成分に、味の好みを変えるすごいパワーがあるのです。マウスの実験で、高脂肪のエサを食べ続けたマウスは脳細胞が自殺して、食欲のコントロールが利かなくなります。もっと食べたい、もっとアブラをくれと、どんどん太ってしまいます(前編参照)。しかし、高脂肪中毒になったマウスに玄米を食べさせると、アブラを食べたいという欲求が抑えられてきます。味覚が変わり、それまで100%のマウスが高脂肪のエサしか食べなかったのに、15%が普通のエサを食べるようになりました」

ガンマオリザノールは米の胚芽や米ぬかだけに含まれるポリフェノールだ。脳で食欲や自律神経をつかさどる視床下部という場所に直接働きかけるので、食の好みを正常に戻すことができるのだ。しかも、血管を広げて血行を良くし、善玉コレステロール(HDL)を増やし、悪玉コレステロール(LDL)を減らす効果がある。大屋が1週間で2キロもダイエットできたのは、うま味プラス玄米パワーのおかげだった。