かつて「産学連携教育世界会議」というグローバルな大会に日本の企業代表として参加したことがある。そこで印象的だったのは、世界の大学の事務局長や経営当事者が、いかに世界の産業界との連携を進めるか、必死にノウハウの交流を行う姿であった。

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かつて「産学連携教育世界会議」というグローバルな大会に日本の企業代表として参加したことがある。その主題は「人材開発における産学連携教育の役割」で、大学および企業関係者750人以上が参加し、産学連携教育の具体的な事例の発表交流と今後の改革が論議された。

そこで印象的だったのは、世界の大学の事務局長や経営当事者が、今後いかに優秀な学生を集め、社会に貢献し得る優秀な学生を育成し、いかにその卒業生を地域社会や産業界に就職、貢献させるか、そのためにいかに世界の産業界との連携を進めるか、必死にノウハウ交流を行う姿であった。

そうした中で日本を振り返ってみると、日本の大学は最近まで、あまりに社会や産業界から隔絶した世界をつくり、社会に貢献するために存在するとの使命感を失っているのではないかと思わざるを得ない。

日本は今後、少子高齢化社会の進行で就学人口は減少に向かうとともに、価値観の多様化時代にあって大学も選別される、今以上のメガコンペテイション時代に入るのは間違いない。また、従来の量的拡大から「質」の時代に入る。さらにグローバリゼーション時代にあって、日本国内のみならず国際的メガコンペテイション時代に向かうことは容易に想像できる。

現在、企業は時代のターニングポイントにあって21世紀に向けて経営システム改革・事業構造改革・人事システム改革などの大改革を進めつつあるが、大学も次世代に向けて社会の期待を担うための大幅な構造改革を進める時にきている。大学改革のためには企業の改革事例を参考に、第1に大学の存在意義の再確立とその特色を明確化すること。第2に経営システム改革と経営ガバナンスの改革を進めること。第3に自らの大学経営における評価基準を設け、その成果の評価結果を公開すること。第4に産官学連携教育を積極的に推進すること。第5に広く世界の大学との提携・人材交流・研究交流などによるネットワーキングやコラボレーションを進めることである。

こうして、大学が位置する地域社会の抱える問題を、共に解決し、その存在を高め感謝される姿をつくることが大切である。

大学は、学問研究のみならず広く社会の次世代を担う人材を育成する機関であり、新時代のニーズを担う人材育成こそが最大のミッションであり、その存在が評価される。日本の産官学連携教育は世界のトップレベルに近付くべく、さらなる発展を期したいものである。

■立石信雄(たていし・のぶお)
1936年大阪府生まれ。1959年同志社大学卒業後、立石電機販売に入社。1962年米国コロンビア大学大学院に留学。1965年立石電機(現オムロン)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。日本経団連・国際労働委員会委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)「The Taylor Key Award」受賞。同志社大学名誉文化博士。中国・南開大学、中山大学、復旦大学、上海交通大学各顧問教授、北京大学日本研究センター、華南大学日本研究所各顧問。中国の20以上の国家重点大学で講演している。