乃木坂46

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 乃木坂46が4月20日から22日にかけて、東京体育館で『アンダーライブ全国ツアー2017〜関東シリーズ 東京公演〜』を開催した。2014年から始まったアンダーライブのメンバーは、シングル表題曲の選抜メンバーではないという立場を抱えながら、同時に選抜メンバーでは経験できない類のキャリアを積み重ね、乃木坂46の歴史の重要ないちパートになっている。時に選抜メンバーを凌駕する勢いを見せるパフォーマンスによって、アンダーライブには常に希望が託されてきた。

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 けれども、この東京公演に名を連ねた12人は、これまでとはやや異なる重苦しさを背負っていた。その重苦しさを象徴するのが、今回開催された4公演すべてでメンバーの口から発せられた、「最弱」という言葉である。

 現在、乃木坂46は順調すぎるほどに世間的な存在感を拡大させている。メンバーそれぞれが活躍する場も多くなり、個々人として一般に広く認知される選抜常連メンバーも増えてきた。最新17thシングル『インフルエンサー』の選抜メンバーに過去最多21人が選出されているのも、著しい活躍を見せるメンバーが増えていることのあらわれだろう。また、1、2期生とはキャリアの差が大きい3期生は現在、別働隊のようにして単独の企画を続けており、彼女たちの「新しさ」が持つ勢いが、既存メンバーとは異なる彩りを生んでいる。

 その中で、必然的に人数が少なくなる17thシングルのアンダーメンバーは、難しい立場に置かれている。こうした状況下、今回のアンダーライブ開催にあたって選ばれたのは、「史上最少」「史上最弱」というネガティブな惹句を、あえて一旦背負うことだった。一公演8000人もの観客を動員するライブで「逆境」を自ら打ち出すことにより、今回の東京公演は例年のアンダーライブとはまた違う重みを帯びることになった。

 ライブは最新シングルのアンダー楽曲「風船は生きている」から始まり、「シークレットグラフィティー」「春のメロディー」「13日の金曜日」「ブランコ」と、過去のアンダー曲が立て続けに披露されていく。乃木坂46の歴史を彩ってきたそれらの楽曲には、選抜メンバーに伍する勢いをもって成長してきた、これまでのアンダーライブの記憶が宿っている。その軌跡を受け継ぐものとして今回、東京体育館という大会場での公演があることをあらためて意識させられる。

 同時に、今回のライブでは「集団」としてだけでなく、彼女たちの個々人としての強さをフィーチャーすることにも重きが置かれていた。「ファンタスティック3」と題されたパートでは、公演ごとに日替わりで、各メンバーが一人あたりアンダー曲3曲+シングル表題曲1曲の計4曲でセンターを務める。ソロ歌唱やソロダンスも効果的に織り込んだこのパートでは、1期生一人一人が確かな技術を持っていることも、2期生たちの進境著しい姿も、より具体的に強調される。昨年、東北シリーズ・中国シリーズを巡ったアンダーライブでは、集団としての演劇性を高めて一本の流れを描いていくような構成をとった。そうした昨年のアンダーライブとは、ある意味で対照的な見せ方ではある。けれども、個々のメンバーを強くフィーチャーしていくスタイルは、会場の大きさとメンバーの人数にもフィットするものだった。

 そのように一人一人のポテンシャルが発揮されていく中でも、ライブ中に掲げられた「史上最少」「史上最弱」というフレーズは時折繰り返され、常に意識されていた。その言葉を強く睨み返すような瞬間はセットリスト終盤、「別れ際、もっと好きになる」から「嫉妬の権利」「不等号」「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」へと続く場面でやってくる。切なさをたたえた楽曲のトーンと、今回のアンダーメンバーが置かれた立場とが重なり合ったこのパートは日増しに凄みを増し、「別れ際〜」披露前に円陣を組んで臨んだ千穐楽のパフォーマンスで、力強さはピークに達した。負のイメージをあえて背負うことから始まったこの公演が、何かを乗り越えたのはこの瞬間だった。

 逆境を自覚的に打ち出した今公演だが、センターを務めた渡辺みり愛は、公演中に流れるVTRの中で「史上最少」である今回のアンダーライブについて、「だから何?」とも発言していた。千穐楽公演のMCで彼女は自らその発言を引用し、「やることは一緒でしょ?」と言い添えてみせた。プレッシャーを背負い、葛藤を見せながらもそう語ってみせる彼女の姿勢は、今後のグループにとって大切なものだ。この公演を、「逆境」を表現するだけの場で終わらせてしまっても仕方ない。ではアンダーライブはその先に何を見せていくのか。その答えの一つはライブ本編ラストで見せた、アンダーメンバー版「インフルエンサー」だ。

 グループ史上屈指の難関曲となる「インフルエンサー」は、選抜/アンダーを問わず、これから長期に渡って練り上げ、完成度を上げていく必要のあるものだろう。このとき、アンダーメンバーのライブパフォーマンスが、選抜メンバーにとってある種の脅威となるならば、グループ内に新たなダイナミズムを起こすはずだ。ライブパフォーマンスを通じてのアピールは、元来アンダーが誇ってきた武器である。かつてなくメンバー個々人がフィーチャーされた公演の中で、表題曲のパフォーマンスによって強い印象を残せたことは明るい兆しになった。

 ライブの冒頭を飾った「風船は生きている」が、アンコールのラスト曲として再度披露されたとき、同曲はその印象をやや変化させ、ポジティブな予兆を見据える17thアンダーメンバーのアンセムとして響いていた。グループ全体の好調さと背中合わせに、選抜/アンダーの編成に地殻変動を起こしにくくなってもいる中、大会場での公演でアンダーメンバーたちが見せた頼もしさは、「逆境」の先の希望を感じさせる。この成果をさらに乃木坂46総体に波及する次の一歩に繋げられるかが、今後のグループの活性化にとって重要な鍵になるはずだ。(香月孝史)