高体連のプロ内定第1号となった本田。四国のみならず全国でも注目される1年が始まった。写真:松尾祐希

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 4月28日、来季のJ2ジェフ千葉入りが決まった四国学院大香川西高の本田功輝(3年)。今季の高体連組の中で一番乗りのJ入り内定者だ。4月下旬という異例の早さでの加入決定。ふたつの事象が絡み、世間から大きな注目を浴びた。
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 はたして、本田功輝とは一体どんなプレーヤーなのか。
 
 彼はこれまでアンダー世代で日の丸を背負った経験がなく、大舞台も、昨年のインターハイに出場したのみだ。一般的には全国的に「無名の選手」という位置付けだろう。それでも千葉が獲得に踏み切ったのは、彼のポテンシャルを高く評価したからこそ。「早い時期に獲得したひとつ目の理由はこれ以上、彼の獲得を遅らせてしまうと他のJクラブと競合してしまう可能性があった」と高橋悠太GMが明かした通り、千葉は夏のインターハイなどで彼が名を上げる前に動いたのだ。
 
 そんな新星の武器は、なんと言っても、非凡なスピードとドリブルスキルにある。171センチでアタッカーとしては決して大柄ではないが、均整の取れた体格の持ち主で、個人技は高校年代屈指の切れ味だ。プレータイプとしては同校OBの川崎フロンターレ所属、登里享平がもっとも近い。「登里と同じような選手。本当にドリブルは巧い」と、大浦恭敬監督も勇猛果敢に勝負を仕掛けるアタッカーとその姿をだぶらせる。
 
 では、なぜ、無名の17歳が千葉からラブコールを受けることになったのか。きっかけは昨年のインターハイである。
 
 チームは2回戦で敗れたが、印象的なプレーを見せていたのが左サイドハーフの本田だった。そこから千葉は動向を追いかけていたが、期待の新鋭は昨年の8月中旬に右足の頸骨を骨折。リハビリを余儀なくされ、年内はピッチに戻れなかった。そして年が明け、怪我が癒えてグラウンドに帰ってきた若武者は、3月20日から千葉の練習に参加した。これが転機となる。
 
「ジェフの練習に行って、クラブのスタイルと合わなければ決断を待とうと思っていた」(本田)という心持ちで、3日間クラブの練習に加わった。フアン・エスナイデル監督の下、プロのレベルでどこまでやれるのか。新たなチャレンジに胸を躍らせながら、千葉の地に足を踏み入れた。
 
 しかし、その想いとは裏腹に、出来はまるで振るわないものだった。彼の獲得に尽力した強化部の稲垣雄也スカウトも「全然ダメだったんですよね」と苦笑いをするほどだった。とりわけ、彼のプレーで問題になったのはディフェンス力。もちろん、千葉特異の「ハイライン・ハイプレス」の戦術理解に苦しんだ側面もあるが、本田はそれ以上に基本的な守備のやり方を理解していなかった。
 そして、気が付けば3日目が終了。今回の出来を見て獲得を決断するつもりだった千葉としては、OKを出せる状態ではない。そのため、彼に期待をしていたクラブは練習参加の期間延長を決断。2日間の追試を行なったのである。
 
 ただ、同じプレーをしているようでは意味がない。彼には短期間での変化が求められた。そこで稲垣スカウトが守備のやり方を覚えさせるために動く。サイドハーフでプレーする世界各国の選手たちのプレス方法を10分程にまとめた映像を彼に渡したのだ。3日目の練習終了後に動画を見せ、彼にディフェンスの重要性を説いた。
 
 これが本田の守備に変化をもたらす。
 
「ビデオを見て守備のやり方を教わった。ウイングバックをやったことがなくて、守り方が分からなかった。香川西だと攻撃がメインのポジションなので。守備のハメ方も分からない。それを(海外の選手などの)ビデオで説明してもらった」
 
 一夜漬けではあったが、繰り返し何度も映像に目を通した。すると、翌日以降はディフェンス面の出来が向上。最終日の練習試合では及第点のプレーを見せ、守備のポジショニングやプレスの質は大幅に改善された。土壇場で、本田の未来は開かれたのである。
 
 プロ入りが決まってから初の公式戦となった29日のプリンスリーグ四国・徳島北戦。本田は0-0の拮抗した展開のなか、後半頭からピッチに立った。注目度が高まったことで相手からのマークが厳しく、彼らしいプレーはほとんど見せられなかった。進化の跡を見せていた守備もこの日はいまひとつ。「自分がチームを勝たせるのが目標」と攻撃に気合いを入れすぎたため、帰陣が遅くなり、試合を決定付けられる2失点目の原因を作ってしまった(0-2で敗戦)。
 
 それでも、本田にとっては学びが多かったゲームだ。プロ入りが決まり、周囲からのプレッシャーもこれまでとは比にならない。そのなかで結果を残さなければいけないという難しさを知れた。
 
「プロ内定者第1号ということで、その注目に応えられるぐらいでっかい選手になりたい。そういう意味で自信に変えて、レベルアップをしていきたいと思っている」
 
 与えられた高評価を証明するため、どのようなプレーを披露していくのか。大注目のシーズン、その幕が上がった。
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)