シーズン序盤で見つけた「オッ」と思った選手(4)
MF関根貴大(浦和レッズ)

「オッ」というよりも「オォー」という感じだろうか。驚くというより唸らされる感じ。浦和レッズのMF関根貴大(たかひろ)のことだ。


今季はゴールに絡むプレーが増えている関根貴大 選手層の厚い浦和でルーキーイヤーの2014年から主力を張っているから、多少の活躍に驚きはない。ボールを持てば、ためらいなく勝負を挑み、コース自在の軽やかなドリブルは今シーズンも変わらず、浦和の武器になっている。

 ゴールを奪ったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)5節のウェスタン・シドニー(オーストラリア)戦で披露したように、従来の右サイドだけでなく、左サイドでも躍動感あふれるプレーを見せているが、昨シーズンも左サイドでプレーする機会があったから、そこにも「新発見」のニュアンスはない。

 今シーズンの関根のプレーに思わず「オォー」と感嘆してしまうのは、ゴール前に顔を出す回数が圧倒的に増えていることだ。

 ACLを含む公式戦11試合に出場して、3ゴール6アシスト。しかもこれを、FWでも、攻撃的MFでも、サイドハーフでもなく、守備での負担のあるウイングバックとしてマークしているのだから、称賛に値するだろう。

 関根の進化は、チームメイトの目にも頼もしく映っているようだ。後方から支援するDF槙野智章も、こんなふうに語っている。

「以前だったら、ボールを持てば真っ直ぐ突き進んでいた。ファンやサポーターにも『行け、行け』という雰囲気があって、それに応えていたと思うけど、今は周りも見ながら自分のよさを出せるようになっている。メディアでも『ドイツのクラブが注目している』という記事が出て、本人も意識しているのかわからないけど、原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)からの刺激もあるだろうし、相手にとって非常に嫌な選手になってきたと思いますね」

 右サイドからカットインして味方にボールを預けると、人垣をかき分けるようにして裏に飛び出し、リターンをもらう。あるいは、サイドに流れたMF武藤雄樹と入れ替わるようにして中央のスペースに潜り込み、シュートを放つ――。

 ユース時代は攻撃的MFとしてプレーしていただけに、「シャドー(ストライカー)でやりたいですね」と常々口にしているが、今シーズンはウイングバックとして守備のタスクをこなしたうえで、アタッキングサードではまるでシャドーのようなプレーまでやってのけている。ひとりふた役の活躍ぶりなのだ。

 今シーズンを迎えるにあたって関根は、「リーグ戦、10得点10アシスト」という高い目標を掲げている。

「ゴールとアシストをもっと増やすこと、あと、これまで以上に走ることを意識していますね。もっと怖さを見せないと、って思うんです」

 目に見える結果と走力のアップを強く意識させたのは――槙野も言うように――浦和のアカデミーの先輩である原口の存在だ。

 かつて「突貫小僧」といった勢いでドリブルを仕掛け、浦和の攻撃陣を引っ張った原口は、ドイツに渡ってからプレースタイルを進化させ、ハードワークを厭(いと)わないサイドアタッカーへと変貌を遂げた。

 昨年12月、関根はドイツを訪問している。原口のプレーや原口との会話から刺激やヒントを得ることが目的だったが、ヘルタ・ベルリンの試合を観戦して、改めてヨーロッパでプレーすることの難しさを感じたという。

「元気くんはあんなにがんばって守備をして、あんなにハードワークして、あんなに何度も裏を狙っているのに、ボールが出てくるのは数えるほど。それに、出てくるボールも厳しいものばかり。浦和の場合、周りにうまい選手が多いから、自分が裏を狙えばボールが出てくる。そう考えると、元気くんの凄さがわかる。自分がもしドイツに行けたとしても、そんなに強いチームには行けないと思うから、そういう中でどれだけもがいてやれるか……」

 Jリーグで圧倒的なプレーを見せなければ、ヨーロッパや日本代表への扉は開けない――。そんな強い思いが、関根を突き動かしている。

 一方、ウイングバックの選手がゴール前まで何度も侵入できるのは、それだけ浦和が相手を敵陣に押し込めているからでもある。今シーズンの浦和は、「相手に90分間プレスをかけ続け、相手のコートで試合をする」という理想を掲げているが、関根がどれだけ決定的な場面に絡めているかは、チームとしての好調さを示すバロメーターでもあるのだ。

「今年は押し込んでいる展開が多いので、その分、モリくん(DF森脇良太)や槙野くんが高い位置を取っていて、それで自分が中に入りやすいし、ポゼッションしながら中で受けてサイドチェンジしたりっていうプレーがこれまでよりもできているかなって。それに、前の3人が起点になってくれるので、自分が中に入るタイミングが取りやすいっていうのもあると思います」

 J1リーグの得点ランクの上位にはFW興梠慎三、FWラファエル・シルバ、そして武藤らが名を連ねているが、この3トップに相手チームのマークが集中しているところで、アウトサイドにいるはずの「24番」が、いつの間にかゴール前に飛び出してくる――。今シーズンはそんなシーンが、この先もたくさん見られるに違いない。

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