(写真提供=FA photos)延世大学と高麗大学の対決は、韓国大学スポーツの名物カードだ

写真拡大

大統領選挙が終わり、朴槿恵(パク・クネ)前大統領の裁判が始まるまでは、一連のスキャンダルの追及は、小休止といったところだ。

しかし、このスキャンダルの余波で、大学のスポーツは大きく揺れている。

朴槿恵、崔順実(チェ・スンシル)ゲートで韓国の若者たちを怒らせたのは、崔順実の娘のチャン・ユラの梨花(イファ)女子大へのスポーツ特待生としての不正入学問題であった。権力を背景に、大学幹部も絡んだ露骨な不正は、怒りを買うに十分ではあった。

(参考記事:韓国の名門・梨花女子大学舞踊学科出身の美女スポーツ女子アナ“三大将”)

不正に関与した教授・講師は448人、学生は332人!!

けれども、韓国のスポーツ特待生に関しては以前から不正が横行しており、大学の運動部の監督らが、収賄容疑で逮捕されることも、珍しいことではない。

真偽不明の話もあるが、トップ選手を入学させるために、レベルの下がる選手もセットで入学させることもよくあるといった話も聞いたことがある。

チョン・ユラの問題を契機に、スポーツ特待生に絡む不正に世間の目が厳しくなる中、韓国の教育部(省)が昨年の12月26日から今年の2月26日まで、スポーツ特待生の規模が100人以上である17の大学を調査したところ、調査した全ての大学で不正が発覚し、不正に関与した教授・講師は448人、学生は332人だった。

違反行為としては、授業に欠席した学生に対する課題の代理提出、出席数の足りない学生に対する単位の付与などがある。

また高麗(コリョ)大学、延世(ヨンセ)大学、漢陽(ハニャン)大学、成均館(ソンギュンガン)大学では、学業不振で警告を3回以上受けた学生は退学処分を受けることになっているが、そうした措置を取らず卒業させていたケースが、1996年から2006年まで、394人に達していた。

とある超名門大学は公式戦参加を見送ることに

教育部の調査とは別に、KUSF(韓国大学スポーツ総長協議会)では、成績が一定基準を満たしていない学生は、大会などの出場を禁止している。

これまで大目に見られていた部分もあったが、チョン・ユラの問題が社会的な関心を呼んでから、成績管理が厳しくなった。

そのためこの春、延世大学が大学サッカーのリーグ戦であるUリーグの参加を辞退した。28人中14人が基準の成績を満たしておらず、そのうえ、韓国で開催されるU20のワールドカップに選手を出さなければならず、リーグ戦参加が不可能だという理由だ。

延世大学は、校名が延禧専門だった時代から、韓国サッカーの歴史を作ってきた名門チームであった。その延世大学すら、チョン・ユラ問題の余波から逃れることはできなかった。

かつての日本の大学スポーツと似ている!?

スポーツの強豪校といえども、学業を優先すべきとの姿勢は、日本でも同じだ。

私が明治大に通っていた頃は、強豪チームに属する体育会の学生は、あまり授業に出なかった。

時おり配られる出席カードは、授業によっていくつか色が違うが、全ての色を集め、代筆するのもマネージャーの仕事の一つだった、という話を聞いたことがある。

今は出欠の管理が厳しくなり、そうしたズルい行為はできなくなっているようだ。練習も早朝や夕方など、できるだけ授業に支障のない時間に行うようになっている。

スポーツだけやっていれば大学を卒業できるという慣習は、問題が多いのは間違いない。といって、入口の部分では、スポーツさえできていれば良しとしていたのに、入ってから厳しくなるのも、酷ではある。

韓国を強くしたスポーツ特待生制度が揺らいでいる

特に韓国の場合、以前は、高校の運動部の生徒はほとんど授業に出なかった。近年では授業に出ることを義務付けているものの、受験競争が日本以上に厳しく、運動部の生徒と、勉強だけをしている生徒は完全に2分されている。

勉強だけをしている生徒にすれば、大会出場のため授業に出ないことも少なくなく、放課後に行われる補習や自主学習に出てこない運動部の生徒に対して、ネガティブな感情もあるようだ。

韓国のスポーツが強くなった背景に、メダリストなどに対する兵役免除や生涯年金とともに、スポーツ特待生制度もあった。今その柱の一つが大きく揺れている。

問題の根本的な解決は容易ではない。勉強との両立は小学生の段階から習慣づけなければならないし、勉強だけをしている生徒との垣根もなくしていかなければならない。

そして、過渡期の混乱をいかに最小限にすることができるかが、今後の韓国スポーツの活躍のカギとなる。

(文=大島 裕史)