ビートたけしが出演も……DVD化されない幻の大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』
今から15年前。私が高校生の頃、教室で頻繁に読み回されていた漫画が2つありました。『20世紀少年』と『バガボンド』です。
振り返ってみると、どちらも青年漫画でありながら、どことなく少年漫画っぽさのある作品。男子高校生が夢中になるのも当然ですが、とりわけ『バガボンド』の人気といったら、世間一般レベルで見ても、凄まじいものだったと記憶しています。
『バガボンド』は、『SLAM DUNK』でおなじみの井上雄彦が、吉川英治の小説『宮本武蔵』を下敷として描いている漫画作品。累計発行部数4130万部で、いまだに高い人気を誇っている不定期連載です。
特にブームとなったのは、連載初期の頃。駆け出しの武芸者・武蔵が強敵に挑み、挫折し、打ち勝っていく姿は、特に若年層から熱烈に支持され、社会現象といっていい盛り上がりを見せたものです。
そんな『バガボンド』及び宮本武蔵ブームに後ノリするカタチで、2003年に始まったのが、NHK大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』です。
こちらも吉川英治版『宮本武蔵』を原作としており、主演を務めたのは、7代目 市川新之助(現・11代目 市川海老蔵)。つりあがった眉毛とカッと見開いた血走り気味の目……。歌舞伎役者としての血が疼いたのか、はたまた、『バガボンド』版・武蔵を意識したのか……。どっちにしても、目力が半端ないです。
そんな、荒ぶる若き日の海老蔵を支える主要キャストは実に豪華。恋人役のお通には、後に私生活でも恋人となる米倉涼子、幼馴染の本位田又八役は堤真一、ライバル・佐々木小次郎役はTOKIOの松岡昌宏が担当。
さらに、武蔵の父・新免無二斎役には、本作で大河初出演となったビートたけしが起用されます。
豪華俳優陣と『バガボンド』ブーム、若者からも支持を集めるであろう「宮本武蔵」という題材設定……。NHKとしては盤石の体制で、ヒットを狙いにきていたはずです。
ところが、視聴率は前半こそ好調だったものの、後半からは低迷。最終的には、全話通しての平均視聴率が16.7%という、前年度に放送された『利家とまつ〜加賀百万石物語〜』の22.1%を、大きく下回る結果となってしまいました。
不遇だったのは、数字の面だけではありません。内容面でも災難に見舞われてしまいます。
問題となったのは、第14話『美は美なり!』において、小泉今日子演じる吉野太夫が、武蔵に「抱いてください…」と上半身裸(映されたのは背中のみ)で迫る場面。
このシーンに対して、吉野太夫ゆかりの京都・嶋原の財団法人『角屋保存会』は「文化人であった太夫への誤解を生む」として、NHK側に異議申し立てをしたのです。これにより嶋原との関係が悪化し、以降NHKでは、嶋原に関する内容を一切放送しなくなったといいます。
災難は続きます。第1話で放送された夜盗襲撃シーンが、映画『七人の侍』の一場面に酷似しているとし、黒澤プロ側が著作権侵害などを理由に、1億5400万円の損害賠償を求めたのです。
原告棄却されて事なきを得たものの、先述した嶋原からのクレームも含めて、いろいろとケチが付いてしまった『武蔵 MUSASHI』。DVD化・オンデマンド閲覧共になしという憂き目にあってしまったのでした。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonより武蔵MUSASHI (前編) (NHK大河ドラマ・ストーリー)
振り返ってみると、どちらも青年漫画でありながら、どことなく少年漫画っぽさのある作品。男子高校生が夢中になるのも当然ですが、とりわけ『バガボンド』の人気といったら、世間一般レベルで見ても、凄まじいものだったと記憶しています。
『バガボンド』は、『SLAM DUNK』でおなじみの井上雄彦が、吉川英治の小説『宮本武蔵』を下敷として描いている漫画作品。累計発行部数4130万部で、いまだに高い人気を誇っている不定期連載です。
特にブームとなったのは、連載初期の頃。駆け出しの武芸者・武蔵が強敵に挑み、挫折し、打ち勝っていく姿は、特に若年層から熱烈に支持され、社会現象といっていい盛り上がりを見せたものです。
現・市川海老蔵が主演 大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』
そんな『バガボンド』及び宮本武蔵ブームに後ノリするカタチで、2003年に始まったのが、NHK大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』です。
こちらも吉川英治版『宮本武蔵』を原作としており、主演を務めたのは、7代目 市川新之助(現・11代目 市川海老蔵)。つりあがった眉毛とカッと見開いた血走り気味の目……。歌舞伎役者としての血が疼いたのか、はたまた、『バガボンド』版・武蔵を意識したのか……。どっちにしても、目力が半端ないです。
そんな、荒ぶる若き日の海老蔵を支える主要キャストは実に豪華。恋人役のお通には、後に私生活でも恋人となる米倉涼子、幼馴染の本位田又八役は堤真一、ライバル・佐々木小次郎役はTOKIOの松岡昌宏が担当。
さらに、武蔵の父・新免無二斎役には、本作で大河初出演となったビートたけしが起用されます。
低迷した『武蔵 MUSASHI』の視聴率
豪華俳優陣と『バガボンド』ブーム、若者からも支持を集めるであろう「宮本武蔵」という題材設定……。NHKとしては盤石の体制で、ヒットを狙いにきていたはずです。
ところが、視聴率は前半こそ好調だったものの、後半からは低迷。最終的には、全話通しての平均視聴率が16.7%という、前年度に放送された『利家とまつ〜加賀百万石物語〜』の22.1%を、大きく下回る結果となってしまいました。
小泉今日子の大胆な濡れ場シーンがクレームの対象に
不遇だったのは、数字の面だけではありません。内容面でも災難に見舞われてしまいます。
問題となったのは、第14話『美は美なり!』において、小泉今日子演じる吉野太夫が、武蔵に「抱いてください…」と上半身裸(映されたのは背中のみ)で迫る場面。
このシーンに対して、吉野太夫ゆかりの京都・嶋原の財団法人『角屋保存会』は「文化人であった太夫への誤解を生む」として、NHK側に異議申し立てをしたのです。これにより嶋原との関係が悪化し、以降NHKでは、嶋原に関する内容を一切放送しなくなったといいます。
『七人の侍』に似ている!? 黒澤プロ側から訴訟を起こされる
災難は続きます。第1話で放送された夜盗襲撃シーンが、映画『七人の侍』の一場面に酷似しているとし、黒澤プロ側が著作権侵害などを理由に、1億5400万円の損害賠償を求めたのです。
原告棄却されて事なきを得たものの、先述した嶋原からのクレームも含めて、いろいろとケチが付いてしまった『武蔵 MUSASHI』。DVD化・オンデマンド閲覧共になしという憂き目にあってしまったのでした。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonより武蔵MUSASHI (前編) (NHK大河ドラマ・ストーリー)