1400人超の孤児を育ててきたインド女性(出典:https://www.youtube.com)

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インドのマハーラーシュトラ州プネーに、「孤児たちの母」と呼ばれる女性がいる。シンドゥタイ・サプカルさん(68歳)は、過去40年間で1,400人以上の子供たちを引きとり育ててきた。自らも辛い人生を経て彼女は今、大勢の子供たちと幸せに暮らす。『Barcroft TV』など複数メディアが、シンドゥタイさんのその素晴らしい行いを伝えている。

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シンドゥタイさんは9歳の時に教育を受けることを断念させられ、10歳で20歳の男性と結婚させられた。20歳の時は3児の子を抱えて4人目を身ごもっていたが夫に追い出され、牛小屋で娘ママタさんを出産した。

その後、母親や親族のもとへ助けを求めて帰るもシンドゥタイさんは誰からも援助を受けることができなかった。生きて行くために、生まれたばかりの娘を抱えて駅で歌を歌い、通行人や乗客から食べ物を貰う生活をしていたという。

やがてそんな生活に疲れ果て、シンドゥタイさんは娘と心中することを考えるようになる。ところが同じように貧しく行き場のない人が「助けてほしい」と訴えて来たことから、「どうせ死ぬならこの人を助けてからにしよう」と思い水を与えた。その瞬間、シンドゥタイさんの中に「貧しい人の手助けをしたい」という気持ちが湧いたそうだ。

それからというもの駅で親に捨てられたり、ゴミ箱に遺棄されたり、通りで犬に引きずられたりしている子供たちをシンドゥタイさんは救い、食べ物を分け与えた。そして次第に人々からの寄付を受けるようになり、「Mai(母)」としてこれまで40年間で1,400人以上の子供たちを引き取り、愛情をかけて育ててきたのだ。

現在、男児の孤児院2棟と女児の孤児院2棟を運営するシンドゥタイさんには、血は繋がらなくとも282人の息子と49人の娘がいる。「行き場のない子供たちの世話をすることはなによりの幸せだ」と話すシンドゥタイさんは、自らが教育を断念せざるを得なかった立場であるからこそ、教育を受けることは何よりも重要と常に子供たちに伝えているという。

シンドゥタイさんのサポートを得て孤児院を巣立っていった子供たちのほとんどは、弁護士や医師、教育者などの職に就いているそうだ。面倒を見た子供たち全員と、今もシンドゥタイさんは連絡を取り合っている。

「他の孤児院では18歳になると出て行く子供が多いんです。政府も18歳になったのだから孤児院を去るようにと言いますが、18歳になってもまだ愛やサポートを必要とする子供たちはいます。ここでは仕事を得たり結婚したりするまで一緒に暮らしていますよ」とシンドゥタイさんは語る。

1歳半の時に駅に捨てられていたところをシンドゥタイさんに拾われ、孤児院で育ったヴィネーさん(26歳)は「時々、私に実の両親がいなかったことを神に感謝します。もしMaiが私を拾ってくれなければ、こんなに愛情を受けて育つことはなかったし、たくさんのきょうだいを持つこともできませんでした。Maiのおかげで法科を卒業することや昨年12月には結婚することもできました。Maiなしでは私はここまで成長することはなかったでしょう」と明かし、シンドゥタイさんの人としての素晴らしさを「Maiは花びらを1枚1枚愛しむように、引き取った全ての子供を愛し思いやっています」と話している。

また16年前にシンドゥタイさんに引き取られ、現在18歳になるプラティバさんも「Maiは、ただ私のMai(母)というだけではなく、人生の全てです」と話しており、シンドゥタイさんに引き取られた子供たちの多くが幸せな人生を歩んでいることがうかがえる。

そして何よりシンドゥタイさんのこれまでの子供たちへのサポートを間近で見て来たのは、シンドゥタイさんの娘ママタさん(42歳)だ。ママタさんは母の理念に感化され、心理学を専攻し福祉の修士号も取得した。現在ではそれを生かしてシンドゥタイさんが運営する男児孤児院の1棟を、シンドゥタイさんが最初に養子にしたディーパクさんとともに過去10年間サポートしており、「母とこの大家族を見ていると、血縁は関係ないということを学びました。私は母がしてきたことを誇りに思っています」と述べている。

シンドゥタイさんの施設は政府からではなく、シンドゥタイさん本人が各地で行う演説を聞いた人々からの寄付金で成り立っている。これまで平和賞や国民栄誉賞など750もの賞を授与したシンドゥタイさんだが、「賞はとても有難いがパンを作る材料にはならない」と今でも各地を旅し、寄付を募っているという。時に演説のために村へ出向いた時など、数人の子供たちを連れて帰って来ることもあるそうだ。

そんなシンドゥタイさんは子供たちのみならず、飼い主に見捨てられ虐待された牛や病気の牛を175頭引き取り、牛のための“孤児院”も運営している。「みんな私の家族なんです」というシンドゥタイさんは、この大家族をサポートし続けるために鋼のような精神を持っているのだ。それはシンドゥタイさんのこのような発言からも伝わってくる。

「私は空腹であることの辛さを知っています。その経験が私に世界の在り方や貧しさ、生き延び方、強さと忍耐を教えてくれました。私はかつて心が折れた時に、どんなに悪いことが起こってもふんばって力強く高く立ち上がることを学びました。苦しみは私に“母”になることを教え、人生や名誉を与えてくれたのです。今ここで育っている子供たちは不幸や悲しみを見てきたぶん、きっと将来は私よりも素晴らしい人間になってくれることでしょう。私が子供たちにいつも話しているのは、『川の水が溢れた時に、その水は岩を打ちつけるが、ただ岩を打ち続けるだけではない。やがて流れゆく方向をゆっくりと見出し流れていく』ということです。誰でも岩にぶつかる時はやって来ます。でも障害物を恐れず乗り越え方を学ぶことが大切なのです。」

自らの過酷な経験から生まれたシンドゥタイさんの言葉は、子供たちが成長していく過程で心強い励みとなっていくに違いない。

出典:https://www.youtube.com
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)