台湾で日本人土木技師の銅像に続き、初代総統で国民党の最高指導者だった蒋介石氏の銅像の頭部が切り取られた。台湾では蒋氏像が損壊される事件が頻発。台湾メディアは中国をめぐる「独立」「統一」の対立激化を憂慮している。写真は蒋介石夫妻の士林公邸。

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2017年4月29日、台湾で日本人土木技師の銅像に続き、初代総統で国民党の最高指導者だった蒋介石氏の銅像の頭部が切り取られた。台湾では国民党が台湾住民の民衆蜂起を弾圧した「2.28事件」70周年前後から蒋氏像が損壊される事件が頻発。台湾メディアは中国をめぐる「独立」「統一」の対立激化を憂慮している。

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中央通信社などによると、台北市北部陽明山にある公園付近で22日、蒋介石の銅像の頭部が切り取られ、赤いペンキが掛けられているのが見つかった。壊された像の台座には「2.28事件の元凶」「殺人魔」と落書きされていた。その後、「台湾建国工程隊」と名乗る急進独立派が犯行を認める声明を発表した。

台湾では16日に南部の台南市で日本統治時代の土木技師・八田與一氏の銅像の頭部が切り取られる事件が発覚。香港と同じような「一国二制度」に基づく中国との統一を主張する急進統一派「中華統一促進党」に所属する元台北市議の男が名乗り出て、切り取りを認めた。「台湾建国工程隊」の声明には「そちらが一つ壊すなら、こちらは多数を壊す」「台湾の永遠の友人八田さんにささげる」などとあり、八田氏像が急進統一派に壊されたことへの報復だったことを示唆している。

蒋介石像に関しては今年2月、与党・民進党が台湾各地の学校に設置されている像の撤去を行政院(内閣)と教育部(教育省)に求めた提案が立法院(国会)を通過した。背景になったのは1947年の「2.28事件」。国民党政権による台湾統治への不満の高まりを背景に、台北で起きた抗議デモが全土規模の民衆蜂起に発展。事態は当時、国民党が支配していた中国大陸から派遣された軍によって収拾されたが、犠牲になった人の数は1万8000人〜2万8000人に上るとされる。

今年は事件から70周年に当たり、蒋氏の像破壊は2、3月にも起きていた。南部・高雄市の中山大や高雄師範大では構内の像にペンキで落書きがされたほか、像の台座には「威権遺毒(権威主義体制の時代の遺物)」と黒いペンキで書かれるなどしていた。八田氏の像損壊は独立と統一の急進派同士のせめぎ合いのとばっちりだった可能性もある。

昨年5月の蔡英文政権発足後、台湾では中国離れを象徴する「脱蒋介石」が急速に進んでいる。「2.28事件」に追悼行事に出席した蔡総統は事件をタブー視せず、真相解明に取り組む考えを改めて表明した。その一方で中国本土に親近感を持ち、蒋氏を偉大な指導者としてたたえる声も依然として根強い。一連の銅像破壊について中央通信社は「一部の市民や政治家からは社会の分断や対立の深刻化を懸念する声が上がっている」と伝えている。(編集/日向)