女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたのに、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回お話を伺ったのは、現在、食品の輸入会社で一般職をしている水田直美さん(33歳)。現在の手取りの月収は20万円で、足立区内のワンルームマンションに住んでいます。

直美さんは、“育ちがいい”と一般的に言われている女性を自己演出しているタイプ。喫茶店の席に座るときは、背もたれにバッグ(スペードのアイコンで知られるアメリカブランドの黒のミニショルダー)を丁寧に置きます。そして、バッグからアイロンがかかったフランスブランドのブルーのハンカチを手元に出す。

ベージュのコクーンシルエットのワンピースに、黒のローヒールパンプス、コットンパールのネックレスに、フランスのブランドの潜水艦の窓をモチーフにした金属製の時計をしています。

メイクは全体的に薄く、透明感があります。パッと見は20代に見えますが、目の周りや手の甲の疲れは隠せません。セミロングに整えた髪の毛もところどころうねっています。

直美さんは貧困状況にあるとは思えない、きちんとしている女性。堅実な女性誌を読み、周囲から浮かないファッションと遠慮がちな姿勢を守り、いいお嫁さんになりたいと考えるタイプだと感じました。

「私、貯金が0円なんです。仕事もしているので今は貧困ではありません。でも、3か月後には確実に生活費に困るはずなんです。実家にも帰りたくないし、仕事も好きじゃないし、いったいどうしていいかわからなくて」

直美さんは、全く将来が見えなくなってしまったと嘆く背景には、婚活がありました。

「ずっと女子高育ちで、男性が苦手でした。私が小学校から行っていた都内の女子校は、良妻賢母教育がベース。母親も専業主婦でした。学校も家も基本的な空気感として、女性は結婚して専業主婦になることが幸せだと感じさせる雰囲気でしたね。もちろん、女性の自立など言われていましたが、本音ベースの話では、女性は男性に愛され、守ってもらうことが幸せなんだと思います」

直美さんは大学卒業まで女の園で暮らしていて、社会人になるまで男性とほぼ会話をしたことがなかった。

「新卒から今の会社にいるのですが、男性社員だとキョドってしまうんですよね。顔が真っ赤になったり、変なことを口走ったり。最初はみんな面白がってくれたんですが、ろくに会話もできないから、やんわりとハブにされるようになって。いじめとかそういうものではないのですが、私が同期との会話に参加すると、空気がひんやりするんですよ」

最初の恋愛は27歳のときで、相手は40代の上司で、不倫だった。

「懇親会の帰りに、酔っぱらった上司にホテルに誘われて、ついて行ってしまったんですよね。奥さんと別れて私と結婚してくれるものだと思って、いろいろ尽くしたのですが、全然別れる気配もなくて。最初の2回くらいは、すごく大切にしてくれたのですが、3回目くらいからただの恋愛関係の相手でした。ウチにサッときて、そそくさと帰るんです。でも、その人からメールやLINEがくると、喜んで応じてしまう。そんな自分がイヤで、30歳のときに思い切って婚活することにしました」

その婚活に、直美さんは200万円の全貯金をつぎ込んでしまいます。

「マッチングアプリや出会い系サイトは、コミュ障だからムリだと思い、セレブ男子を紹介してくれる結婚相談所に大枚をはたきました。医者、弁護士、上場会社勤務のビジネスマン、名家の御曹司……いろんな人を紹介されましたが、私が結婚したいような、爽やかで会話がおもしろくて、そこそこイケメンで、優しく真面目で、女性のことをいたわれる男性はひとりもいませんでした」

そこで紹介されたある医師は、落ち着きがなく、目の前で鼻をほじられたといいます。

「私の会話がつまらないからなのか、鼻に指を突っ込んでほじほじしたり、楊枝で耳垢を掘っていましたね。他にも口臭が異常に臭い人、初対面の挨拶の後に突然アップル社の世界支配の陰謀論を語る人、くちゃくちゃとフレンチトーストを食べる人、くしゃみするときに私に向かってツバを吹きかけた人など、男性というより、社会人としてどうなのかという人ばかりでした。みんな年収2千万円以上の医師とのことですが、結婚はムリ」

しかし、ある40代の医師からプロポーズされ直美さんは結婚の気持ちを固める。

「その人は“結婚相手はタダで使える家政婦さん”という感じの人で、これでやっと専業主婦になれると安心しました。男尊女卑の意識が激しい人だと思いましたが、そこそこ整っているので、気に入られようと家庭的な女性であることをアピールして、彼の結婚願望を焚きつけたので、プロポーズしてもらえたのです」

彼から送られた婚約指輪は日本の老舗宝石店のものだった。

 結婚が決まり、寿退社するも、その事が彼の逆鱗に触れ……〜その2〜に続きます。