カナダ・モントリオールの都市農園「ブラン・ドグリ」で栽培される高級ヒラタケ(2017年1月17日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】カナダ・モントリオール(Montreal)に住むリジアン・ロイ・マヘウさん(35)は、市中心部にあるレストランにヒラタケを配達する途中、バリスタの友人の所へ立ち寄り、コーヒーの出し殻がいっぱいに入ったバケツを受け取った。次の収穫のために必要だからだ。

 地元のビール醸造所から譲り受けた搾りかすをコーヒーの出し殻に交ぜると、高級キノコの栽培に適した豊富な栄養分を含んだ用土になる。

 キノコが栽培されている穴の開いたプラスチック製バケツは、2メートルの高さに積み上げられている。昔は労働者階級が多く、今では急速なジェントリフィケーションが進んでいる地区の倉庫の中だ。

 マヘウさんと同じ年の友人、ドミニク・リンチゴティエさんは週に3日、約200キロのキノコを収穫し、その日のうちに地区内の複数のレストランに配達している。

 ここでは、いわゆる循環経済が機能している。資源の再利用や再生によって生産性を向上させつつ廃棄物を減らし、環境を汚染しない仕組みが成り立っている。

■無駄なものは一切ない

 高級ヒラタケ「ブラン・ドグリ(Blanc de Gris)」を専門に栽培する都会の農場を友人と共同で設立したリンチゴティエさんは、再生資源を使ってキノコを栽培することで「廃棄物をなくした」と説明する。

 リンチゴティエさんは循環経済の基本原理に触れ「廃棄物は、資源だ。これまでは正しい使われ方をしていなかっただけだ」と語った。

 2人が会社を立ち上げたのは、3年前。リサイクルはコストを大幅に削減し、環境的にも持続可能な方法だと唱える。

 キノコの栽培には、近所から譲り受けたコーヒーの出し殻とビールの搾りかすを交ぜた覆土を、多くの栽培業者が使用している使い捨てのプラスチック袋ではなく、水はけ用の穴の開いたバケツに敷き詰めて使っている。

 マヘウさんは、外食産業で長年働いてきたことから、モントリオール市内の最高レベルのレストランのシェフたちに直接連絡をとり、キノコを持って行って吟味してもらうことの重要さを心得ている。

 キノコの価格は、レストランのオーナー向けには送料込みで1キロ当たり25カナダドル(約2000円)。飛び込みの注文に応じることもあり、その場合は0.5キロ当たり15カナダドル(約1200円)で販売している。価格の高さには賛否両論がありそうだが、ビジネスは好調だ。

 ケベック大学モントリオール校(UQAM)の社会学者、ルネ・オーデ(Rene Audet)氏は、エコロジーや有機農法と関連して「少し割高でも地元産の食品を喜んで買い求める消費者が増えている」と指摘する。

■職人的な新たなスタイル

 需要を生み出すことには成功したものの、会社自体は利益の確保に四苦八苦している。

「この2年間、2人とも給料はなし」と嘆くマヘウさん。一時は夜間にウエートレスのアルバイトをしてなんとかしのいだこともあったという。だが2人はくじけない。

 2人がキノコ栽培事業を立ち上げた年、モントリオール市内の倉庫街には初の屋上菜園が登場し、地元産の有機農産物が販売されるようになった。

 屋上菜園で収穫された果物や野菜は、食料品店で売られている外国産に比べて価格は2倍近いが、半径100マイル以内で獲れたものだけを食べる「100マイル・ダイエット」という食習慣の流行で、地元産の需要はうなぎ登りだ。

「今こそ、われわれのフードシステムを変革する真の動機が存在すると思う」と言うオデット氏は、職人的な新たな生産者の一群が登場し、やがて一気に広まるだろうと予測する。そして「オルタナティブなフードシステム」を支援する取り組みは「さらに広まり、認知度が上がり、成功していくだろう」と述べた。
【翻訳編集】AFPBB News