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もし、今も本田宗一郎がいたら……

故・本田宗一郎は、現代の偉人とも言うべき人物だ。英国編集部所属のわたしは、残念ながら語録のようなものを読んだことはないが、金言は少なからずあるだろう。

「独自性を追求することが、ホンダという存在を正当化する」というような言葉が、クルマのハンドブックに書いてあった。その精神は、新型シビックにも生きているはずだ。

このハンドブック、先代シビックにも付いていただろうか。多分あったような気がするが、敢えてそれを見なくても、そのメッセージは、あの風変わりなスタイリングから十二分に伝わってくるし、型通りでない装備や機能にも浸透しているように思えた。

ところが、今回はちょっと様子が違う。新型シビックで、ホンダは直球勝負に出たのだ。

グローバル・モデルとしての「シビック」

グローバル・モデルとなったこのハッチバックは、英スウィンドン工場の基幹車種だが、少なくとも過去2世代と比べると、極めてノーマルなクルマだ。

世界的に、ホンダとしては最大規模のリサーチと開発を行い、欧米各技術部門が共同で設計に携わった。燃料タンクは一般的な後席下に移設され、後席座面のフォールディング機構は廃止された。

スタイリングは、ダミー・ダクトや大きなテールライトのインパクトはあるものの、それほど冒険はしなかった印象だ。

最も興味深いのは、ボディ・サイズが大幅に拡大されたこと。

全長は4.5mを超え、フォルクスワーゲン・ゴルフやプジョー308より30cm近く長い。ただし、これはプラスに働いていると思う。そのことは、昨年のプロトタイプ試乗や、今年初めの欧州プレス発表時にも述べてきた通りだ。

果たしてホンダに、典型的な欧州の5ドア・ハッチバック・ファミリーカーに倣おうと思わせたものは何だったのか。

普通を目指したことは、欧州のハッチバック市場において、脇役から主役に躍り出るきっかけとなるのか。熟成と拡大は、シビックを真に成熟させたのか。そして、ホンダの精神はそこにあるのだろうか。

ガソリン優勢

新型シビックは、今年後半までディーゼルが設定されない。その追加予定のエンジンは、すでに他車種で称賛に値するところを見せている1.6ℓCDTIだが、量販ファミリー・ハッチバックの発売時にディーゼルが用意されないのは、欧州ではまずないことだ。

現時点のエンジン・ラインナップは、129psの1.0ℓ直3ターボと182psの1.5ℓ直4ターボのガソリン・ユニットのみ。

1.0ℓターボは、パフォーマンスと経済性、洗練性、バリュー・フォー・マネーの好バランスで、より多くのユーザーにアピールすることになると目されるため、今回のテスト車両に選んだ。

これに合わせて、マイナーチェンジしたばかりのゴルフも1.0ℓ直3ターボをチョイス。出力は109psだ。一方の308は、1.2ℓのアンダーパワーな仕様で、こちらも109psを発生する。

ホンダのエンジンは新型で、シビックの燃費とエミッションを競争力あるレベルに押し上げるもの。先代の1.8ℓ自然吸気に対し、パワーと0-100km/h加速は同等で、トルクでは上回る。

いよいよホンダもダウンサイジング・ターボを導入したわけだが、今更という思いも禁じ得ない。というのも、欧州メーカーの多くが、排気量ダウンが本当に実燃費改善の得策なのか疑問を呈し始めたタイミングだからだ。それはともかく、ライバルたちより大きく重いが、0-100km/h加速タイムは308の0.1秒落ちに収めている。

テストに入る前に、もうひとつ述べておくべきことがある。このEXグレードのシビックは、ヒーター付きレザー・シートやキーレス・エントリー/スタート、アダプティブ・ダンパーやプレミアム・オーディオを装備している。

これは、ゴルフでも308でも持ちあわせていない。そのため、他車より価格が高いのは当然だ。テスト結果を見てシビックが欲しくなったが、予算的に難しいというなら、もっと安価なSRグレードを選ぶという手もある。

より大きく

目の前にすると、シビックのサイズは衝撃的だ。このセグメントではスコダ・オクタビアがこれより長いが、今回の比較対象は市場でも比較的控えめなサイズのモデルだということで、大きさが引き立っている。価格の割高感はない。

室内も、同様の印象が徐々に積み重なってくる。先代と比べてもだだっ広い感じはなく、低くサルーン的なポジションに座らされる。

一般的なハッチバックは、短いホイールベースの中で後席のレッグルームも稼ぐため、ドライバーはやや脚を曲げてペダルを踏み下ろすようなポジションを取らされる。

ほかの2台のパッケージはまさにそれで、特にゴルフは、後席乗員のためドライバーに犠牲を強いるところが大きい。

ところがシビックは、上位車種のアコードに迫るホイールベースを有する。ゴルフを80mm近く上回るそれは、このクラス最長レベルで、小細工なしにスペースを確保できるのだ。

そのため、着座位置はBMW 3シリーズ並みに低い。しかも、革張りのスポーツシートは実に快適で、インテリアの仕立てもライバルたちより上質。

さらにもっと細かく見ていこう。

巧妙なデザイン

スイッチ類は身の詰まった確かさがあり、ガラス調の仕上げが高級感を控えめに主張する。速度計や回転計はTFT液晶で、燃料系と水温計も部分的にデジタル表示となっている。

高めのセンター・コンソールには、操作しやすい位置に短いシフトレバーが配置される。その周辺には電気式サイド・ブレーキ、アダプティブ・ダンパー、アイドリング・ストップといったデバイスの操作スイッチが集められている。

キャビンのスペースを侵食する高いセンター・トンネルは、ここ10年ほどのシビックには見られなかったものだ。

これにより、アームレスト部分とセンタークラスターの根元に、これまでとは段違いの容量を持つストレージが設けられた。

また、膝元のスペースにはUSB/12V電源/HDMIのソケットが設置され、ケーブルを通す経路も設けられているので、スマートフォンや音楽プレーヤーを操作しやすい場所に置いても、配線に煩わされずに済む。巧妙なデザインだ。