「オッケーオッケーお安い御用、ってことでまたタダ酒よろしく」

ある食べ物系のイベントを取材した時、いわゆる「インフルエンサー」と呼ばれる人たちの集団を初めて目の当たりにしました。念のため、インフルエンサーって、インスタグラムなどで多くのフォロワーを抱えて情報を発信する人たちのこと。それで食えたりしてる人もいるのかしら、すごい世の中です。

その日集まったのは「食べ物系の情報をたくさん発信している人」「おしゃれ主婦&ママ」みたいな人たちで、最近のPR会社はこういう人たちをリスト化しており、インフルエンサーたちはそこここのイベントで顔を合わせる顔見知りです。**さん久しぶり〜、こちら**さん、**のイベントにいらしてましたよね、今月号あの雑誌に出てるんです、わー、いろんな雑誌に出てるんですね〜……みたいな明るく空虚な会話が交わされたかと思ったら、商品ディスプレイの前で何人かでポーズを取って写真。位置変えて写真。商品手に取り顔のアップで写真。どうりでみんなおしゃれしてるはずだわと遅まきながら気づいた私ですが、主催者側としてはここ一番大事なとこです。

でも私が最も「おおおお!」と感心したのは、彼女たちがイベントのキモであるトークショーに全然興味がなかったことです。もちろん中には真剣に聞いている人もいましたが、大半がスマホに夢中。私はなるほど、と思いました。これはバブル時代のパーリーピーポー――明るく楽しく軽薄で、オイシイことが大好きという、その伝統を継承する人たちなんじゃないかしら。

相手の本質を知るために、ホントに「話」が必要か?

時に憧れの、時に軽蔑の対象となるパリピ。このイベントで私はそのすごさを再確認しました。何がすごいって、彼らの無敵の思想のなさです。例えばパリピは招待してくれる企業側に義理など感じていません。SNSに写真を上げるくらいはするでしょうが、それは次回も招待してもらうため。添えられたテキストは渡された資料まんまのコピペ、愛用者になる可能性もほぼないでしょう。

「タダでもらうなんて申し訳ない」気弱系、「いくらタダでも本当に気に入らなければ」のこだわり系、「本当はタダで欲しいけど、あからさまに欲しがるのもなんか」なカッコつけ系が人口の大半を占めるウェット国家・日本にあって、何の逡巡もなく「オッケーオッケーお安い御用、ってことでまたタダ酒よろしく」と即答できるその突き抜けた思想のなさ。パリピの(少なくともパーティーにおける)姿勢はつまり「ノリ」だけなのですが、実はそこにこそ社交の極意があるのではないかしらと私は思うのです。

さて今回のネタも前回に引き続き『スウィート17モンスター』。こじらせ17歳のヒロイン、ネイディーンはもちろんパーティーが苦手で、映画の中には出たくもないパーティーに連れていかれて案の定大爆死という、痛々しくも笑っちゃう場面があるのですが、その原因がより明確になるのは、遠くからずっと妄想していた憧れの男の子に(手違いとはいえ)「あなたとセックスしたい」という完全なエロメールを送り、ついに妄想が実現!というところで、「まずは知り合いたいから、話を」と押し戻した場面です。もちろんイヤらな断っていい、断るべきなんですが、私ですら「ここで断ってどうする!」と突っ込みたくなるこの場面で明らかになるのは――話とセックス、どっちが相手の本質がわかるか、という問題は別にして――何につけても「本質」から入りたいネイディーンの性格です。

人生が長いパーティーであるなら、夜な夜な開かれるパーティーはその縮図でもあります。「知ってる人誰もいないしどうしよう」という人たちが、政治についてディープな意見求めてくる人よりも、何に関しても「オッケーオッケー」と思想なく明るく流すパリピに乗っかるのは、その場を気楽にやり過ごしたいからで、信頼できる友達になりたいわけじゃありません。でもそうした無意味な時間の共有ができなければ、その先で友達になる可能性はないに違いなく……とわかってる風の私が、パーティーがやっぱり苦手って、これほんと、どういうことかしら。

『スウィート17モンスター』

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