テキサス州にあるメキシコ国境の壁(Public Domain)

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 トランプ大統領に投票したパット・ベルは今度は大統領を提訴する構えでいるということが4月の『CNN』で報道された。理由は<メキシコとの国境に壁を建設することで、彼女の家族が100年以上も耕作して来た土地を手放さねばならない状況になりそうだからである>。(参照:「CNN」)

 壁を効率良く建設するには出来るだけ壁が直線であることが望ましい。そうなると、彼女の所有する土地のメキシコ国境の方に突き出た土地を切り捨てるようにして、そこを壁が縦断するような建設に成るのである。その為、その突き出た土地を放棄せねばならなくなることに対し、米国政府はそれを買い取るような形で賠償するとしている。しかし、彼女にして見れば長年愛着を持って家族が耕して来た土地を効果の薄い、しかも気まぐれな考えで生まれた壁のせいでメキシコ側に手放さねばらなくなるということが不服なのである。

 彼女と同じような立場の人は他にも多くいるという。土地を手放すことに問題無いとしている人もいるそうだ。しかし、パット・ベルはそれには納得できないとして、トランプ大統領を提訴する用意があるとしている。

◆アメリカ人地権者を脅すトランプ政権

 また、3月15日付の電子紙『Viva Noticias』は国土安全保障省からテキサス州のメキシコとの国境に土地を持っている所有者宛に政府が賠償金と引き換えに土地を収用することを伝える通知があったことを報じた。

<4850平方mに対し2900ドル(31万9000円)を政府が支払う>という通知である。5代にわたって64749平方mを所有するマリア・フローレスは、それに承諾しない場合は連邦政府から訴えられることに恐れを感じているという。彼女の家族は土地を手放すことに反対しているが、仮に連邦政府を相手取って提訴しても、判決まで長い期間がかかり、しかも訴訟で負けることの方が可能性として高いのではないかということなどを弁護士に相談しているそうだ。(参照:「Viva Noticias」)

 しかし、マリア・フローレスの例はほんの一例だとされている。特に、テキサス州のメキシコとの国境は長い世代受け継がれて来た私有地が多く、そのひとつひとつを賠償金として政府が買い取って行くことは相当に困難を伴う作業だとされている。

◆200億ドル超の建設費用

 こうした声に対して、トランプ大統領は、いつもの如く飽きることのないツイッターで<壁の建設は米国に麻薬を侵入させず、そして若者を麻薬から守る為のとても重要な手段である>というメッセージを送っている。(参照:「Mundo Hispanico」)

 トランプは、まず壁の建設に取り掛かれるように14億ドル(1540億円)の議会での承認を要求しているのである。民主党の議員は健康保険システム維持の為の予算を削って、それを壁の建設に充てようとする姿勢に反対を表明している。そして共和党のテキサス州の議員は全員が建設に反対している。テキサス州の経済はメキシコに大きく依存しているからである。

 また、建設反対を和らげるべく、トランプ大統領は何れメキシコ政府が建設費を負担するようになると述べている。それに対して、メキシコのペーニャ・ニエト大統領は断固その支払いを否定している。

 壁の建設に必要なセメントについては、メキシコで最大のセメント企業Cemexが<150億ドル(1兆6500億円)以上のビジネスになる>と見込んで建設参加に関心を示していたが、最終的にそれを辞退した。その背後には、カトリック教会までが<この建設に関心を示すメキシコの企業は祖国を裏切る者だと見做す>という姿勢を明確にしたからである。カトリック教会の姿勢に背いてまで壁の建設に参加するほどの無謀を犯そうとするメキシコの企業は皆無である。また、カトリック教会はメキシコ政府が断固とした姿勢に欠けることも指摘している。(参照:「Sin Embargo」、「同」)。