「マツダの新型「CX-5」は、本当にディーゼルがベストな選択か?」の写真・リンク付きの記事はこちら

エンジンや変速機など、クルマ全体の大幅な技術刷新を進めたマツダの「SKYACTIV」(スカイアクティヴ)テクノロジーを初めて全面採用し、マツダ躍進の立役者の“一人”となった「CX-5」。2012年の誕生から5年を経て、17年2月に全面刷新した。

初代CX-5が、車体からエンジン、変速機、シャシーに至るまで、すべて新開発だったのに対して、新型はハードウェアのほとんどが先代からのキャリーオーヴァー(継続使用)である。ところが、細部に至るまで徹底した改良の手が入っており、別物と言っていいほどに進化している。

高まった内外装の質感

まずデザインだ。新型CX-5は、マツダの新しいデザインフィロソフィーである「魂動デザイン」を踏襲しているが、その表現はより洗練されたものとなった。先代のCX-5ではダイナミックな動きを重視したデザインだったが、新型CX-5ではプレスラインの数を減らし、よりシンプルでありながら、上質さを重視した仕上がりになっている。

その傾向がより強まったのがフロント周りだ。先代と比べてグリルを囲むクロームメッキは太くなり、より“細目”になったヘッドライトとともに大人びた印象を与える。真横から見たプロポーションは、フロントピラーの付け根が後ろに移動して、フロントノーズの長さを強調したものとなった。リアピラーのクロームメッキのモールの幅が広がったこともあって、車体寸法はほとんど変わらないのに、車格感はひとクラス上になったと感じる。

質感の向上は内装でも顕著だ。インパネ表皮の質感や、表面にあしらわれたステッチ(縫い目)、厚みのあるクロームメッキで囲まれたデフロスターグリルなどによって、欧州高級ブランドのSUVと同等といえる高い質感を実現している。それでいて、価格は先代からほぼ据え置きで、欧州ブランドのSUVよりも100万〜200万円ほど安いのだから、かなり“お買得”な印象である。

内装の質感は大幅に高まった。PHOTOGRAPH COURTESY OF MAZDA

別物のように進化した走り

エンジンやプラットフォームは先代を踏襲しているものの、走りは別物といえるほど進化している。乗り心地の滑らかさ、エンジン騒音の低さが段違いで、まるで1クラス上のクルマになったと感じるほどの違いがある。

もうひとつ、先代よりも明らかに向上しているのが、ステアリング操作に対する車両の応答性である。これは、マツダの独自技術「G-ベクタリング コントロール」の効果だ。G-ベクタリング コントロールは、ステアリング操作に応じてエンジンの出力(駆動トルク)を微妙に調整することでクルマの荷重移動をアシストし、車両の応答性を向上させる技術である。

この技術は非常に自然に動作するので、意識せずに運転していると存在には気づかない。だが、注意してステアリングを切り込んでいくと、確かにクルマの回頭性や高速道路でのレーンチェンジで収まりがいいことが感じ取れる。クルマを思い通りに操れ、また運転時の疲労軽減にも役立つだろう。

あえてガソリンエンジン仕様を推すふたつの理由

新型CX-5の搭載エンジンは、先代と同じくガソリン2種(排気量2.0リットル、同2.5リットル)とディーゼル1種(同2.2リットル)の3種類がある。先代のCX-5は販売台数の75〜80%程度をディーゼルが占めていた。実際、ディーゼル仕様は高い静粛性とぶ厚い低速トルクを生かした走行性能、そして優れた燃費性能で、CX-5の大部分を占めるのが納得できる仕上がりだった。

ところが新型CX-5では、ガソリン仕様(2.5リットルモデルとの比較)の良さが際立っている印象を受けた。理由はふたつある。

ひとつ目は静粛性だ。先代CX-5のガソリン仕様は、直噴ガソリンエンジンならではのノイズが耳についたのだが、新型はスムーズさと静粛性が大幅に向上している。これに比べると、ディーゼル仕様の騒音レベルは旧型と大差ないとはいえ、一段高いものだった。

マツダのエンジニアによると、新型CX-5ではガソリン仕様とディーゼル仕様で、防音材や遮音材の差はないという。このため、エンジン単体の騒音の違いが、そのままドライバーの耳にはっきりわかる。新型ではガソリンエンジンの騒音レベルが著しく改善されたこともあり、ディーゼルとの差が明確になったのだろう。

もうひとつがエンジンの軽やかな吹け上がりである。ディーゼル仕様は低速からの力強いトルクが2.5リットルのガソリン仕様をしのぐが、回転上昇のスムーズさや滑らかさではガソリン仕様に一歩譲っていた。ガソリンエンジンのほうがスポーティで、走行性能の面でも好ましい印象を受けたのである。

燃費重視ならディーゼルは変わらず魅力的

とはいえ、燃費を重視するユーザーにとっては、ディーゼル仕様は変わらず魅力的だ。短い試乗での計測なので参考程度ではあるが、高速と一般道を半々程度に走った結果で、燃費はディーゼルの16.5km/リットルに対し、ガソリンは11.8km/リットルにとどまった(いずれも燃費計表示による)。

試乗車がディーゼルは前輪駆動仕様だったのに対して、ガソリンは4輪駆動仕様だったので横並びの比較はできないが、実用燃費ではディーゼルのほうが3割以上良かった計算になる。ただし、ディーゼル仕様とガソリン仕様の価格差は30万円程度あるので、年間の走行距離も考慮しながら比較すべきだろう。街乗りメインであれば、スムーズで静粛性が高いことを評価して、むしろ積極的にガソリンエンジンを推したいところである。