吉田徹北海道大学教授が「フランス大統領選挙」と題して講演。決選投票では多数派を結集したマクロン氏優位は動かない、としながらも、低投票率ならルペン氏勝利の可能性もあると予想した。6月下院選で、いずれの政党も過半数を獲得できず「政治空白」が続くという。

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2017年4月26日、フランス政治に詳しい吉田徹北海道大学教授が日本記者クラブで「フランス大統領選挙」と題して講演した。4月23日に行われた仏大統領選第1回投票の結果、中道系のマクロン前経済相と極右・国民戦線のルペン党首が5月7日の決選投票に進出することになった。吉田教授は、2大政党候補者がいずれも決選に進めない「歴史的な異例選挙」となった。今後の展開について、多数派を結集したマクロン氏優位は動かない、としながらも、低投票率ならルペン氏勝利の可能性もあると予想。いずれにしても、焦点の6月下院選でいずれの政党も過半数を獲得できず、「政治空白」現象は続くことになるという。発言要旨は次の通り。

今回の仏大統領選は、半年前には泡沫扱いだった独立系のマクロン氏と、政界主流から嫌われる極右・国民戦線のルペン氏が4月23日の第1回投票で抜け出し、5月7日の決選投票に臨む。2期目を狙ったオランド大統領が出馬できず、2大政党候補者がいずれも決選に進めない「歴史的な異例選挙」となった。

今、先進民主主義国の英国と米国で、戦後体制を否定する民意が表れ出した。フランスでも現代社会を作り上げてきたさまざまな要素が変わりつつあり、新しい要素が、頭をのぞかせているかもしれない。

マクロン氏は文化的にも経済的にもリベラルで、「新しいフランスをつくるために開拓の精神を再発見。欧州連合(EU)と協調する」をスローガンに掲げる。
ルペン氏は文化的権威主義と経済的保護主義で、「5年でフランスを立て直す。EU条約再交渉・ユーロ脱退」を掲げる。

大方の見方は多数派を結集したマクロン氏優位で、よほどの大番狂わせがない限り、同氏で決まりだろう。ただ、本来の支持者ではない有権者を集めなければならないため、投票率が極めて低ければ、不利となる。支持基盤の強固なルペン氏当選の可能性もあり得る。

焦点は6月の仏下院選だが、社会党、共和党の左右2大政党に勢いはない。国民戦線には「ガラスの天井」(女性などマイノリティに立ちはだかる壁)がある。かといって、マクロン新党は単独では勝てないだろう。その結果、新政権はよくて、コアビタシオン(所属の異なる大統領と首相の共存)。悪ければ、仏版ハングパーラメント(どの政党も議席の単独過半数を獲得できない状況)になり、いずれにしても首相が盾突いた場合、大統領は手足を縛られる。その場合、フランスの「政治空白」現象は続く。(八牧浩行)