トークイベントに参加した『昼顔』の西谷監督

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 イタリアで開催中の第19回ウディネ・ファーイースト映画祭に参加中の『昼顔』の西谷弘監督、『裏切りの街』の三浦大輔監督、『彼らが本気で編むときは、』の荻上直子監督がこのほどトークイベントを開催した。日本では滅多にない顔合わせだが、奇しくも2作が不倫劇で、イタリア人の愛に対する考え方に西谷監督が驚く一幕もあった。

 『昼顔』は偶然の出会い、『裏切りの街』は出会い系サイトを通じてと、きっかけこそ違えどテーマは同じ。まして昨今の日本で、不倫は「ゲス」と蔑まれ、激しいバッシングの対象となっているだけに尚更、“今なぜこのテーマで描こうと思ったのか?”と、2作に関心が集まった。

 三浦監督は「まずやりたかったのは、人が人を裏切る瞬間をリアルに描きたかった。それは普段、悪とされているが、実はいろんな感情がない交ぜになっていて、単純に悪だけではとらえられないのではないか。今までそれを描いていた作品に不満があったので、自分でリアルに、繊細に描こうと思い、不倫というテーマを選びました」と言う。西谷監督も「本作はもともと連続ドラマだったのですが、男女の恋愛観というより、女性同士の人間の業を追究していこうと思った。その部分で女性を描くと、当然、男も絡んで来ます。(物語の)一つの枷としてして不倫を扱いました。その後、日本では(不倫に対する)事情がいろいろ変わってきましたが」と苦笑いした。

 ただ、イタリアを含めて西洋では恋愛には比較的寛大で、例えばイタリアではシルヴィオ・ベルルスコーニ元首相が現職時代に度々女性スキャンダルを起こそうが、支持率は下がらず、4度も首相を務めた実績がある。西谷監督も現地の恋愛事情が気になったそうで、同映画祭プレジデントのサブリナ・バラチェッティに尋ねたところ「『イタリアで不倫というのは男女間に置いて最初から起こるものだ』という認識だと言われて、『そう来たか!』と(苦笑)。結局、日本もイタリアも“愛は奪うもの”というのは同じだと思うんです。ただ日本人の場合はそこにモラルや世間体、羞恥心が入ってくるので、(映画の展開は)じれったいなと思って見られたと思う」と語り、映画を通じた現地の人たちとの交流を楽しんでいた。

 一方、荻上監督の『彼らが本気で編むときは、』はLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)と、性を超えた愛がテーマで、日本映画で同様のテーマを描いた作品は珍しく、かつ生田斗真演じたリンコの周囲には理解者が多いことから「LGBTを題材にした大手の映画では迫害の対象となっていることを描いているものが多いが、なぜポジティブに描いたのか?」という問いがあった。荻上監督は「本作はトランスジェンダーの14歳の子供の為に、母親がおっぱいを作ってあげたという記事をヒントに描いており、実際にモデルとなったその母親にも会いました。彼女曰く、『できるだけ子供の心情を受け入れるよう努力した』と。母親である自分がポジティブな思考でいることがポイントだったと聞き、それを意識して描きました」と説明した。

 そうした作品に込められた想いが多くの共感を呼び、同作は本年度ベルリン国際映画祭でLGBT映画を対象にしたテディ賞で審査員特別賞を受賞しており、ウディネでの上映も終了と同時に会場から「ブラボー!」の声が飛ぶ賞賛を受けていた。(取材・文:中山治美)

第19回ウディネ・ファーイースト映画祭は4月29日まで開催