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<米フィラデルフィア小児病院の研究チームが、「子宮の仕組みを模倣した独自の人工子宮システム『バイオバッグ』の中で早産のヒツジを正常に発育させることができた」と発表した>

世界保健機関(WHO)学によると、妊娠37週未満で生まれる早産児の数は世界全体で年間およそ1,500万人。早産児は肺などの生命機能が未熟なため様々な合併症を引き起こすリスクがあり、早産によって年間100万人もの子どもが5歳未満で亡くなっている。

従来、早産児は、新生児特定集中治療室(NICU)で保育されてきたが、この施設で使用される機械式ポンプが肺や心臓に負担をかけて循環不全を引き起こしたり、免疫力が弱いために感染症にかかるなど、子どもが慢性的に健康を損なうリスクも小さくない。

人工子宮システム『バイオバッグ』

米フィラデルフィア小児病院のアラン・フレイク医師を中心とする研究チームは、2017年4月26日、英科学雑誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』において、「子宮の仕組みを模倣した独自の人工子宮システム『バイオバッグ』の中で早産のヒツジを正常に発育させることができた」と発表した。妊娠23週から24週のヒトの胎児に相当する妊娠105日から120日のヒツジ8匹を対象に実験を行ったところ、正常に呼吸し、肺や脳なども順調に発達したことが認められたという。


『バイオバッグ』は、合成羊水で満たされたポリエチレン製の透明な密閉式の袋。この"人工子宮"に入った胎児は、臍帯に通された管で外部の装置とつながり、自らの小さな心臓を使って、血液を循環させ、酸素を取り入れたり、二酸化炭素を排出したりする。

機械式ポンプを使わず、胎児の心拍だけで作動するため、心臓を傷つけることなく、スムーズに血液を循環させることができるのが特徴だ。

【参考記事】肺にまさかの「造血」機能、米研究者が発見

ヒトにも応用できる可能性がある...

また、合成羊水は、継続的に交換しながら『バイオバッグ』の内部を満たす仕組みとなっており、栄養の供給や肺をはじめとする器官の発達促進、感染症の予防などの役割を担っている。

ヒツジは、肺の発達においてヒトと似ているといわれている。つまり、『バイオバッグ』で早産のヒツジを正常に生育させることができれば、この仕組みをヒトにも応用できる可能性があるというわけだ。

研究チームでは、『バイオバッグ』のさらなる改良に取り組むとともに、とりわけ、妊娠23週から28週のヒトの早産児への応用に向けて、研究をすすめていく方針だという。

松岡由希子