<人間の頭部移植というSF映画のような話が急に現実味を帯びてきた。今年12月の手術に向けて着々と準備が進む>

世界で初めて人間の頭部移植手術を行うと宣言して物議を醸す神経外科医、セルジオ・カナベーロとその研究チームが、ラットの頭部移植手術に成功した。

患者に見立てた小さなラットの頭部と前腕部を、身体のドナーである脳死したラットの頭の上に取り付け、ひとつの体に2つの頭部がある状態にする手術だ。ウェブマガジン「MOTHERBOARD」に掲載された画像から、患者、ドナー、血液供給役の3匹のラットを使った手術の様子がよくわかる。

手術の成功は、学術誌「CNS Neuroscience and Therapeutics」で発表された。頭部移植手術の課題とされていた脳への血流不足や免疫拒絶反応を解消する、この「双頭モデル」にたどり着いた経緯が説明されている。

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セルジオ・カナベーロと中国ハルビン医科大学のシャオピン・レン博士が参加した研究チームは、手術中に血液供給役として第3のラットを使い血液を確保する仕組みを示した。シリコンチューブでドナーと生きた第3のラットをつなぎ、脳に血液を送る。

研究者らは、移植後も患者役のラットの脳に損傷はなく、痛覚反応や角膜反射があったとしている。

カナベーロとレンは頭部移植の第一人者で、2015年5月に「人類初の頭部移植手術を2017年末に行う」と宣言。これまでラットとイヌの脊髄再生の実験を科学情報誌「New Scientist」で発表するなど、研究を重ねてきた。

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サル、そして次は人間

2016年1月、カナベーロとレンはサルの頭部移植に成功したことを発表した。移植を受けたサルは術後に倫理的理由で安楽死させられるまで、神経の損傷なしに20時間生存したと、カナベーロは主張している。

今年12月に、ついに人間が頭部移植手術に臨む。患者は神経原性の筋萎縮症「ウエルドニッヒ・ホフマン病」という難病を患うロシア人コンピュータ科学者のバレリー・スピリドノフだ。


頭部移植手術を受ける予定のバレリー・スピリドノフ

この計画は科学界から大きな批判を受けている。倫理的問題に加え、カナベーロの研究結果からは手術が成功する十分な証拠がないとの指摘が多い。さらに手術が失敗した場合、スピリドノフは想像を絶する痛みを味わう可能性がある。

カナベーロが2015年に初めてこの計画を発表したとき、米国神経外科学会のハント・バーチャー会長は、「誰もこんなことを望まないだろう。死んだほうがマシ」と言った。

頭部移植手術のイメージ


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ハンナ・オズボーン