日本市場を駆け上がる、フットウェア界の新星「KEEN」の戦略

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2003年、爪先を守るトゥ・プロテクション機能を備えた水陸両用サンダルでデビューした、米国ポートランドに本拠を構えるアウトドア・フットウェア・ブランド「KEEN(キーン)」。創業者がヨットで足を怪我した経験から、「サンダルはつま先を守ることはできないのか」という疑問を基に誕生した、「コロンブスの卵」的な発明であった。

創業者であるローリー・ファースト氏が思い描いたのは、サンダルとシューズ、陸と水、快適さと性能、ファッションと機能といった異なる概念を融合させるハイブリッド・フットウェアのコンセプト。これまでの常識を次々と覆すデザインと商品ラインナップで、瞬く間に世界中のアウトドア愛好家たちからの支持を得てきた。
 
2016年、同社のさらなる飛躍への起爆剤となるべく、海外展開を統括するインターナショナルヴァイスプレジデントとして着任したのがロブ・ラングスタッフ氏である。氏は1990年代、アディダスの日本支社を立ち上げるために、家族を連れて来日した経歴を持つ。日本、そしてアジアのスポーツマーケットを熟知するエキスパートは、今度はここキーンで、どのようなビジネス展開を指揮するのだろうか。
 
スポーツとアウトドアのフィールドで、人々の生活と、その舞台となる地球の間に介在するフットウェアの分野に挑むラングスタッフ氏に、話を伺った。

CREATE, PLAY, CAREの哲学

「私の就任と時を同じくして、新シリーズ『ユニーク』が発表されました。その名の通り、靴の既成概念を超越した、紐を編み上げて成形される見た目の斬新さ、かつてない軽さ、通気性、そして快適な履き心地で、キーンの存在を広く日本に知らしめる立役者となりました」
 
そう語るラングスタッフ氏は、日本をアジアの牽引役としてとらえているという。「日本の消費者は、デザインを見る目、スタイリングの感覚において非常に洗練されています。新しいアイデアや商品に対する日本での評価や動向は、中国をはじめとする他のアジア市場での展開を考える際の基準となり、大きな意味を持ちます」
 
4年連続で過去最高の外国人観光客数を更新した日本。グローバルに展開を広げ、ブランドを成長させるうえでは、訪日外国人観光客の反応も軽視できない参考材料になるという。「我々は、大は小を兼ねるといった戦略は取りません。市場の特性や動向に合わせた、いわゆる『Think Global, Act Local』のマーケティングで製品をお届けします」

そうした各地でのきめ細やかな市場把握が可能なのは、ほかでもない社内コミュニケーションの賜物であると言う。「私の信条として、常に敬意をもって現地のスタッフの意見をどんどん聞き、取り入れます。何よりも重要なのは、その人物に対する理解です。趣味嗜好、背景や経歴を知り、相手をよく理解したうえで、ようやく提案の真意をも理解することができるのです」
 
社内においても、このように相手を慮る氏の姿勢は、同ブランドの重要な3つのキーワード、「CREATE, PLAY, CARE」(創造すること、楽しむこと、気遣うこと)にも重なると語るラングスタッフ氏。創業デザイナーの足の怪我をきっかけに、人々を守り、快適に生活を送るためのフットウェアを生み出してきたキーンの文化は、世界的に知られる存在となった現在に至っても、製品や行動を通し、一貫して発信し続けられている。

「この素晴らしい世界で、人々が外へどんどん出て行くことを後押ししたい」と話すラングスタッフ氏。さらに熊本の大震災やカナダ・フォートマクマレーの山林火災に対する支援、野生動物の保護にも積極的に取り組んでいるのは、創業者の「givingback」(お返し)の精神を今日まで引き継いでいるからだという。

「こうした取り組みは、3つのキーワードの内のひとつ、CAREにあたります。身近な人から周りに広がる世界までを気遣うという意味です。CREATEは、製品やアイデアで解決策を創り出すこと。PLAYは、屋根のない場所すべてを楽しむことができる製品をデザインすることです」
 
キーンは単なるフットウェアブランドの枠を越え、これからもアウトドアとともに健やかに、楽しんで生きる我々の、「ハイブリッド・ライフ」のよきパートナーであり続けるに違いない。

ロブ・ラングスタッフ◎米空軍キャプテンを務めたのちMBAを取得。独アディダス本社ヴァイスプレジデント、アディダスジャパン社ヴァイスプレジデントを務めたのちキーンに参画。国際展開を推し進める。